内田有紀さんにインタビュー「今の自分になれてよかったと思えて、 また頑張れる」

映画、ドラマ、CMと幅広く活躍する女優・内田有紀さん。常に第一線にいたように感じるけれど、実は一度仕事を離れ、また再出発したという経緯があるからこその今。リスタートによってさらに輝きが増した内田さんのこれまでの道のりとは?

<内田有紀さん>
1992年女優デビュー。主な出演作は『ドクターX~外科医・大門未知子~』シリーズ、連続テレビ小説『まんぷく』、映画『踊る大捜査線』シリーズなど。


「今の自分になれてよかったと思えて、 また頑張れる。その繰り返しだと思うんです」

結婚を機に一度、仕事から離れました。二兎を追う者は一兎をも得ずという体育会系気質が私の中にあったので、家庭にきちんと入らないといけないと思っていたんです。

仕事を離れるまでの20代後半までは、譬えるなら、ずっとサイズが大きいジャケットを着せられていたという感覚。体裁はいいけれど中身がともなっていないという気がしていました。周りのみんなは似合うと言ってくれても、私としては自分の中身に対してサイズが大きいものを着ているという、どこか申し訳ないような気持ちもあって。

だけど、人々が喜び求めてくれるということは素直に嬉しいもの。その喜びもあったので、自分の違和感には蓋をして期待に応えようとしていました。

--自分の居場所はどこなのか探しながら、人々の期待に応えることに一 生懸命向き合い続けていた 10代、20代。その後一度仕事から離れ、再スタートを決めたのは30歳の時

その頃は『もう絶対に後悔するような生き方はしたくない』と意気込んでいました。不完全燃焼な気持ちが大きかった今までを払拭する、いい機会だと思ったんです。

リスタートした時、周りの方々の見る目がすごく変わったとも感じました。30代になった私を、面白がってもらえているという感覚。自分の中で抱えていたイメージみたいなものも払拭できたと感じて、もう人から求められるイメージを常に演じていなくてもいいんだと、ふと肩の力が抜けたんです。

けれど、あの頃の模索していた自分やイメージが固まっていた自分がいたからこそ、今がある。あの頃を知ってくれている人たちがいるからこそ、『変わりましたね』と言ってもらえるんですよね。そういう小さな変化に喜びを感じながら、少しずつ自分をアップデートしていきました。

そして35歳から演技コーチについてもらうようになり、そこで自分の足りていない部分にさらに気づいたんです。アップデートを試みていたからこそぶつかった第二の壁。意気込んで復帰し、進んできたものの、〝魂を動かす〞ということはどうしたらいいんだろう? と次の壁にぶつかったことで、また一段成長できたような気がします

--しかし、活躍していた場所にブランクを経て戻るということは、想像を超えるキツい場面もあったはず

同じ仕事を続けながら上書きしていくのは、とても難しい。よっぽどの変化がない限り、人は変わったと感じてはくれませんから。

でも私は一度離れたからこそ、それができた。〝初期化した〞みたいな感覚です。初期化してリスタート、これは本当におすすめします。

歳をとればとるほど、ごまかしはきかなくなるもの。自分がどう生きたいのか、何が好きなのか、他の誰のためでもなく自分の人生だ、と理解してタフになることが大事。その自己肯定を積み重ねた先に『今の自分になれてよかったなぁ』と思える日があり、また頑張ることができる。その繰り返しのような気がします。

そう話すとなんだか大仰な気がしますが、日々の些細な変化や感動でいいんです。例えば、女性はヘアメークやファッションによってずいぶんと気持ちが変わりますよね。〝誰かのため〞ではなく〝自分のため〞に着飾ってそこからパワーをもらったり、少しだけ演じるような気分で自分と日常から離れる時間を持ったりすることで、リスタートの揺れ動く日々も自信を持って進んでいけると思います。

自分を甘やかしたり、気分を上げるちょっとした術を身につけながら、諦めずに前に進めたらいいですよね。人生は何度でも跳べるんですから

「女優人生で、最もハードルが高かった役です」

内田さんが渾身の演技を見せる ドラマ『華麗なる一族』がスタート!

2021年、開局30周年を迎えるWOWOWで、山崎豊子の傑作小説が原作のドラマ「華麗なる一族」がスタート。内田さんは、主役・万俵大介の愛人である高須相子を演じます。「人の欲深さに恐ろしさを感じながらも、今まで演じたことのない役柄は女優として最高の経験に」。

WOWOWプライムにて4/18より 毎週日曜22時放送(第1話無料放送)

撮影/柏田テツヲ ヘア・メーク/高橋里帆(HappyStar) スタイリスト/竹村はま子 取材/柿本真希 ※情報は2021年5月号掲載時のものです。

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