【中学受験⑥】中高一貫校は2番目に好きな学校がいい!?」説を追う

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皆さん、こんにちは。教育ジャーナリストの鳥居りんこです。

前回は「【中学受験】スペック推しには気を付けて」というテーマでお話しましたが、今回は「中高一貫校は2番目に好きな学校がいい!?」です。


「2番目に好き」と言えば、皆さんも、どこかで「2番目に好きな人と結婚すると幸せになれる」説なるものを耳にしたことはないですか

「2番目に好きな人」と一緒にいる自分の方が、取り繕う必要がないので自然体。素の自分でいられるから、生活を共にするという意味では居心地が良いというような意味で流布されている説だと思われます。

意外とこれは、中学受験でも「当たらずとも遠からず」のように感じています。まずもって、中学受験では「1番好き♡」→「ずっと一緒♡」という想いが叶えられる率は大変低いという現実があるからです。

今現在、中学受験の第1志望校入学者は3人にひとりとも、5人にひとりとも言われている世界。つまり、恋焦がれていた熱望校に振られてしまう人の方が圧倒的に多いのです。結果として、第1志望校に思いを残したまま「あまり好きではなかった学校」に入学というケースは高確率で起こり得ます

しかし、ここが生物の素晴らしい力なのかもしれません。与えられた環境に順応しようとするんですね。子どもであれば、早い子ですと受験終了直後に切り替え完了。“置かれた場所で咲く心の準備”をスタートします

遅い子であっても、ワクワクの未来を期待しながら入学式に臨むでしょう。もし、子どもが鬱屈とした気持ちでいるならば、それは親の残念感という呪縛に囚われているからかもしれません。

中学受験は“親子の受験”と呼ばれるように、親も関わらざるを得ないので、頭の中が“憧れの第1志望校”一色になってしまう親は多いです。年を取っている分、切り替えスイッチがうまく働かないため「熱望校不合格」のダメージは強烈です。

春から初夏にかけては保護者会の季節ですので、「残念感」を漂わせながら、初めての中学保護者会に参加される母もいることでしょう。

ある母は保護者会の席上で、涙ぐみながら「本当は(こんな学校の)この席にいるはずじゃなかったのに・・・」と自己紹介したので、どよめきが起こりましたが、この母は正直なだけです。

しかし、物事はすべて塞翁が馬。この母は6年後の卒業式では満面の笑みでこう述べました。

「これは運命だったのよ!ウチはここに来る運命だったの!こここそが最高の学校だったわ!」と・・・。もちろんこれは、ぶっちぎりのご優秀度でぶっちぎりの大学切符を手にされたからこそのご発言ではあります(笑)。

このように、志望順位2番目以降の方が学力的に余裕があるので、すべてが好循環に作用することも稀ではありません(もちろん、すべて本人次第です)。

先述しましたが、中学受験では「1番好きな人」と添い遂げられる方が珍しいのですが、長年、この世界を目にしている身としましては、実は、偏差値順の志望順位にはあまり意味がないな・・・って感想を持っています。鍵はむしろ、その学び舎での息の吸いやすさなんですね。

何年か前にこういうことが起こりました。

2月5日の黄昏時に、熱望していた第1志望校の不合格結果を受け、W学園に入学手続きに現れた母子がおりました。道すがら「どうして、あんなに頑張ったウチの子を第1志望校は受け入れてくれなかったの?」という思いばかりが溢れて来て、母は気付くと涙で景色が滲んでしまうという状態だったそうです。

W学園の先生はそんな母子を温かく包むかのように迎えてくれ、「ようこそいらしてくださいました」と優しく声をかけてくれるものだから、母は気持ちがグチャグチャになってしまい、堪え切れずに泣き出してしまったそうです。

心の痛みに寄り添う教育で定評のあるW学園ですので、そのせいか、子どもは早くも制服採寸日にはW学園好きになり、今ではその母もW学園を併願した自分の目に狂いはなかったとまで言っています(笑)。もちろん学園生活は「最高に充実している!」そうです。

中学受験に目標があることは素晴らしいことですので、熱望校があるということは幸せなことです。そして、同時に努力しても叶わないこともあるという現実を学ぶことも成長です。どの学校に行こうとも、それぞれの道が拡がっていることに間違いはないです。

ただ、中学受験の肝は「学校選び」に尽きます。あなたの家庭もろともを肯定的に見てくれて、あなたのお子さんを心から「ウェルカム」だと言ってくれ、愛を感じさせてくれる学校であれば、あなたの子どもは嫌でも伸びるし、ついでにあなたもハッピーです。

さあ、各校ではオンラインも含め、学校説明会シーズンを迎えております。志望校を選ぶコツは「呼吸のしやすさ」。是非、色々な学校を見て「どこも第1志望校!行かせて悔いなし!」と言えるラインアップを組んでくださいね。

次回は5月15日に配信予定です。

鳥居りんこ・・・作家、教育・介護ジャーナリスト

003年、長男との中学受験体験を赤裸々に綴った初の著書「偏差値30からの中学受験合格記」(学研)がベストセラーとなり注目を集める。
その後シリーズ化され、悩める保護者から“中学受験のバイブル”と評され、中学受験を辛かった思い出ではなく、子どもとの絆を感じられ、子育てが楽しくなる内容に、心救われ涙する保護者が続出しました。

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