【中学受験⑳】実は親にも楽しい中高一貫校

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「実は楽しい中学受験」シリーズ、これまでのコラムで「中学受験」を行う上で、最も大切な「志望校選び」について語ってきました。今回も前回に引き続き「これも加点ポイント!」という“オマケ”を語りたいと思います。


新学期が始まる4月、お子さんの小学校で行われる「PTAの役員決め」に辟易された経験を持つママたちも沢山おられることと思います。「PTA役員は1子につき最低1回」という大原則がある小学校は多いので、どのタイミングで引き受けるのかという保護者側の駆け引きが繰り広げられやすい世界でもあります。

最終的にはくじ引きになる確率が高いですが、この「くじ引き実行」までには引き受けられないという「理由を発表する」というお時間が必要。これが「プライベートな不幸自慢大会」になりやすいのが難点ですよね・・・。

個人的な体験ですが、一番、面白かった理由が「痔なので無理です!」というもの。これには周りのママ達も「分かった。みなまで言うな!」ということで、無事にその方は免除となりました。

次に面白かった理由は「足が悪いから無理です!」というもの。周りのママ達から一斉に「普通に歩けるじゃん!?」という総ツッコミを受けたそのママが窮鼠猫嚙み状態で口にした言葉が「お・お爺ちゃんの足が悪いんです!」。こちらは同居もしていないということで、くじ引き参加が決まりました。

私個人は役員大好き!という変わり者ですので、この不幸自慢大会は大喜利みたいで、毎年、楽しく拝聴していましたが、中高一貫校に行ってまで、この「役員地獄」は付いて回るのか?を心配される人もおられるかもしれませんね。

結論を先に言えば、これは学校によって全く違います。

なんとPTAがない!という学校も存在します。「学校のことはすべて学校に任せてください」という有難いご方針なんですが、その学校のママたちが「要するに、クレームは受け付けないよ!ってことだよ(笑)」と言っていましたので、その善し悪しは人それぞれということになります。

そうかと思えば、PTA役員に人数制限がないために各クラスから10数人が立候補。6年一貫校ですから、総勢数百人単位になるという「我も我も学校!」もあります。

この場合、ひとりに仕事が集中せずに、分業制で行うので、人数が多いと一人当たりの負担は少ないと聞きます。もちろん、取りまとめ役のママは大変かもしれませんが、その学校の本部役員のママに聞いたら「好きでやってるからいいの♪」っておっしゃっていました。

どの学校も、今どきのママたちは働いている人が多いこと、さらに電子機器に強いので、自宅で可能な作業は自宅でやり、実際に学校に出かける回数は少ないという傾向はあります。

私学で役員をなさっているママたちにインタビューをすると、必ず実感することがあります。それは「いやん、アンタ、どんだけこの学校が好きなん!?」ってことですね。

私学はファンクラブの集まりですので、元々、この傾向が強いのですが、息子ラブ・娘ラブのママたちが学校のお手伝いをすることによって、ますます学校に親近感を持って、楽しくワイワイ集まるって構図をもうどのくらい見てきた事でしょう。

学校側も保護者の応援を有難く感じていますので、ママ&パパ向けのサークルを作っている学校も多いです。

例えば、コーラス部やフラワーアレンジメント部などですね。また、PTAが食堂を運営し、食材の調達から調理までを担っている学校もあります。有償・無償と形態は様々ですが、食でその学び舎の子どもたち全員を支えるという親の援護射撃。「元気がない子には声をかける」という「食堂のおばちゃん」の存在は貴重だと思います。

我が子が卒業しても、在校時に関わっていた保護者用のサークル活動に顔を出すという人も多いのが私学の特徴です。ある学校で「子どもより、私の方がこの学校が好きかも!?」と豪快に笑っていたOGママがいましたが、この気持ちは本当によく分かります。

更に、今どきということを述べるならば、大抵の学校では「親父の会」というような名称の「パパ活」があります。文化祭で焼きそばを3千食、作ったとか、各行事の警備員を買って出ているというような活動が多いですが、中には「飲みサークル活動」となって、パパの新たな居場所作りに貢献している学校もあって、楽しそうです。

親にとっては、自分の子どもが好きだから→子どもの友だちも好き→そこにいる人はみんな好き→つまり、その学び舎ごと好きという図式が成り立ち、「好きで参加」ということが本当に多いのです。

更に、子どもの立場からいえば、卒業しても、尚、ありがたいという「親の会活動」があります。

前回、就活時に「OB・OGの人材力がモノを言う私学」という話をしましたが、これに現役保護者が加わることもあります。実際に、就活を控えた大学生に「模擬面談」などをして、アドバイスを提供してもらっている学校があるのです。

現役保護者は企業で実際に就活面接に携わっているポジションの方が多いので、この活動は就活に向けた卒業生の力強い援軍になっていることでしょう。その学校の先生が「本校はゆりかごから墓場までを目指します(笑)」と言っておられたのが印象的でした。

このように私立中高一貫校には「オマケ」と呼べるメリットが少なからず用意されているんですよ~。「オマケ」なので、重要視する部分ではありませんが「入ってみたら、ファンクラブの集まりみたいで、気が付いたら自分も会員になっていて、卒業してもずっと会員は辞めない!」と思える学校に我が子を通わせることができた親は幸せだなって思っています。

次回は10月5日にお会いしましょう。

鳥居りんこ・・・作家、教育・介護ジャーナリスト

2003年、長男との中学受験体験を赤裸々に綴った初の著書「偏差値30からの中学受験合格記」(学研)がベストセラーとなり注目を集める。

その後シリーズ化され、悩める保護者から“中学受験のバイブル”と評され、中学受験を辛かった思い出ではなく、子どもとの絆を感じられ、子育てが楽しくなる内容に、心救われ涙する保護者が続出しました。

ブログ:湘南オバちゃんクラブ https://note.com/torinko

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構成/加藤景子 イラスト/村澤綾香

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