教育版も!「マインクラフト」ってどんなゲーム?子どもの“これからを生きるための力”が身につくって本当?

ここ数年、子どもたちの間で大人気を誇る「マイクラ」=マインクラフト。上達するためYouTubeでもゲーム実況を熱心に視聴するほどの没入ぶりですが、実は、教育現場でもその効果が認められるなど、ハマって悪いことばかりではない…!? 有識者にマイクラとの付き合い方を聞きました。

▶︎のんさんとさかなクンに「親の悩み」をぶつけてみた!

教えてくれたのは…

中学受験専門塾ジーニアス代表 松本亘正さん
中学受験専門塾ジーニアス代表

松本亘正さん

2004年、慶應義塾大学在学中に塾を設立。東京・神奈川に8校舎を展開し首都圏私立中中心に高い合格率を誇る。ドラマ『二月の勝者』監修。著書に『超難関中学のおもしろすぎる入試問題』(平凡社)など。小学生時代ハマったゲームは『シムシティ』と『信長の野望』。

実践女子大学人間社会学部教授 駒谷真美さん

実践女子大学人間社会学部教授

駒谷真美さん

専門はメディア情報リテラシー・メディア社会心理学・ICT教育。NHK放送文化研究所の研究委員・ベネッセ次世代教育研究所「親と子のメディア研究会」委員・目黒区学校評議員等歴任。著書『わくわくメディア探検 子どものメディアリテラシー』(同文書院)。

マイクラ好きキッズのママたちが抱く疑問&モヤモヤの声

「RPGや対戦ものと違って、何をやってるのか実はよく分かってない…」
「休みの日やコロナ休園&休校になるとずっとやってる…」
「ゲームだけじゃなくてYouTubeの視聴時間も増えた気が」
「ゲームに没入しすぎて人との会話が減りそう」

マインクラフトのイメージ写真

そもそもマインクラフトってどんなゲーム?教育版もあるって本当?

ブロックで一から世界を創造するゲーム。今や中学受験にも導入!

2009年発表以来、累計販売数は2億本に及び、世界一の売り上げを誇るゲーム。ゴールが設定されていないのが大きな特徴で、自由に空間を探索して家畜を育てたり、ブロックで建物を建設していく。主なモードは下記の2つ。

  1. クリエイティブモード
    無限に使えるブロックで物作りに没頭できる。
  2. サバイバルモード
    敵と戦い空腹を満たしながら、好きな建物を作り上げるために冒険に出て素材を集めたりする。

2016年に教育版が発表され、プログラミングだけでなく化学やコンピューターサイエンス、芸術、言語などあらゆる分野の500を超えるワールドテンプレートが存在。京都・立命館小のマインクラフトを使った英語での〝問題解決型学習〟が高く評価されたり、都内私立聖徳学園では多様な能力を測る科目として2019年度より「マインクラフト受験」が採用されるなど、教育現場での活用が拡大中。

マインクラフトのワンシーン

©2022 Mojang AB. TM Microsoft Corp.

マインクラフト内ではオンラインで仲間とコミュニケーションもとれるイメージ画像。

©2022 Mojang AB. TM Microsoft Corp.

実はこんなにある、
マイクラが伸ばす子どもの5つの力

01 一般教養&知識

学校や地域間格差も心配なプログラミング能力も

「マイクラで創造力や好奇心が育つのももちろんですが、実は身につくのが、『生きるための一般教養』。例えばサバイバルモードでは生き抜く必要があり、〝鉄を作るには石炭や鉄鉱石が必要〟とか、〝スイカは少ない水でも育つ〟など、そうした知識が遊びながら身につきます。よく、キャンプが人が生き抜くための土台を築くなどと言われますが、いわばオンラインでキャンプと近い学びが得られるゲームと言えるかもしれません。またそうして〝マイクラで見たことある〟ものが後に座学で出てきたとき、子どもにとって学びは一層深くなります」(松本)

教育版は、主に英語ではあるものの、理系・文系にまたがるあらゆる分野のワールドテンプレートで、例えば化学実験で花火が作れたり、さまざまなカリキュラムが存在。また私たち親世代には馴染みが薄く、子どもへの教え方が難しいプログラミングの習得にも有用のよう。

「プログラミング教育は、2020年に小学校で必修化、2021年中学校で必修化&充実化、今年からは高校で『情報Ⅰ』として必修化されました。2024年の大学入試では『情報』の科目も導入。Society 5.0に必要不可欠なプログラミング教育では、マイクラ教育版の役目は大きいと言えそうです」(駒谷)

 

02 空間認知能力

算数だけでなく、立体的な思考力を養成

「算数で立体図形の問題は座学だとイメージが難しく、躓きが出やすい単元。立方体をくり抜いたらどこに空洞ができるかなど難しい問題も、〝無限レゴ〟のようなマイクラをやりこんでいる子は正答率が高いんです」(松本)

「普段からゲームで遊んでいる子どもたちは、空間認知能力が向上するという研究データがあります。物体を頭の中でくるくると回転させたり、展開して操作する空間視覚化が長けているようです。マイクラでも同じようなポジティブな影響が期待できそう」(駒谷)

空間認知能力は物事や人との関係を多面的に見る力にも繋がるとされ、単に図形上の問題だけでなく寄与するものがありそう。

 

03 課題解決能力

目標を自分でゼロから設定する力も身につく

何をやっても自由で、目的は自分で決めるのがマイクラ。子どもたちはその中で楽しみながら自分なりの課題を設定し、達成するために工夫するようになるという。

「筑駒や灘といった最難関校の算数では、①でとにかく手を動かして規則性を見つけ、類推して②、③の問題を解かせるというパターンの入試問題が頻出されます。マイクラでは同じように、試行錯誤して粘り強く作業する経験ができると言われており、〝試行錯誤〟ができる子は伸びます。その試行錯誤の経験値を楽しみながら積めるのがマイクラなんです」(松本)

「化学・技術・工学・芸術教養・数学の分野を横断しながら創造的・想像的なアプローチで問題に取り組んでいく今世界で話題の『STEAM教育』は、まさにマイクラの世界そのもの。マイクラで遊ぶことは、最先端の『STEAM教育』を学ぶきっかけにもなると思います」(駒谷)

 

04 協働力

〝隠キャ〟も存在感を発揮できる

マイクラネイティブな子は、役割分担やプロジェクトマネジメントのやり方が自然と身についている場合が多いという。

「ある学校が廃校になるとき、子どもたちの手によりマイクラ上でその学校が再現され、残されました。実際に学校のサイズを測り、設計図を描き、プログラミングするなど子どもそれぞれの得意分野に合わせて役割を決めたそう。普段の学級では、誰か一人がリーダーとなって仕切り、他が従う構図になりがち。でもマイクラの中ではみんなが協力し合わないと上手くいかないため、クラスで目立たず、一歩遅れがちな子が画面の中で輝くことが多々あります。マイクラの中では子どもの学校での序列とは関係なく、どんな子も役割を見つけ自尊心を高めることにもつながると感じます」(松本)

 

05 アウトプット力

実装するためにインプット力も同時に体得

「穴を掘る際、手で掘ると非効率だから繰り返しを自動にできるようにコマンド入力をしてプログラミングを覚えたり、有名なマインクラフターのYouTubeで英語に触れたり。勉強を勉強としてやると頭に入らないけど、楽しいとすぐ覚えてしまうものです。上達するためにマインクラフトとYouTubeのゲーム実況を行き来する子がいますが、視聴したことを再現しようとするなら、YouTubeも決してマイナスにはならない。〝ゲームに遊ばれる子ではなく、遊びこなす子になる〟ことが大事です。街で見た建物を作るために注意深く観察するようになったり、現実世界への好奇心や学びとる力などのインプットの方も伸ばせるはず」(松本)

「幼児教育ではよく、『大切なことは砂場で学ぶ』と言いますが、令和では『大切なことはマイクラでも学ぶ』と言えるのではないでしょうか。マイクラで夢中になって遊ぶ体験は、文科省が重要視する〝自分に最適な学びを自力で計画・実行できる子どもを育てる〟『個別最適な学び』の足場になりえるのかも」(駒谷)

親として、どうマイクラと付き合うべき!?

時間&場所のルールを決めサバイバルモードでは特にペアレンタルコントロールを

「マイクラは優良なゲームの一つですが、他のゲームと同じようにデメリットはあります。区切りがないために陥る依存性と、動物捕獲や戦闘場面に関わる暴力性が考えられるため、ペアレンタルコントロールをおすすめします。物理的制限としてプレイする時間や場所を親子で話し合いルールを決めて。

また子どもは視覚が発達中なので、目の健康に留意することも大切です。小学校低学年頃までは、自由に建造物を作ったり空を飛んだりして遊べる〝クリエイティブモード〟がおすすめ。〝サバイバルモード〟では、冒険あり、戦闘あり、死亡することも。このモードでは、親子で積極的にお互いの気持ちを共有するコミュニケーションをさらに心掛けて。『本当に戦ったら怖いよね』という保護者の言葉かけは、子どもたちの向社会行動の促進につながったという研究もあります」(駒谷)

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撮影/西原秀岳〈TENT〉 取材・文/有馬美穂 編集/引田沙羅
*VERY2022年8月号「マイクラって、どうですか??」より。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。