イェール大学助教授・成田悠輔さんが「親の悩み」をバッサリ斬る!【非認知能力、受験進路etc.】

報道からバラエティ、YouTubeまで、新たな論客として引っぱりだこのイェール大学助教授・成田悠輔さん。今回は、VERY読者の子育てにまつわる疑問・悩みをバッサリ斬っていただきました。ときに楽観的、ときに革新的、ときに刺激的な金言をお届けします!

※掲載中の情報はVERY2022年12月号掲載時のものです。

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経済学者・データ科学者・
イェール大学助教授・半熟仮想(株)代表。

成田悠輔さん

不登校気味の麻布中学高校を経て、東京大学経済学部卒業後(最優秀卒業論文賞受賞)、マサチューセッツ工科大学で博士号を取得。専門は、データ・アルゴリズム・数学・ポエムを使ったビジネスと公共政策(特に教育)の想像とデザイン。ウェブビジネスから教育・医療政策まで幅広い社会課題解決に取り組み、ソニー、ヤフー、ZOZOなど多くの企業や自治体と共同研究・事業を行う。現在はアメリカと日本を行き来する生活を送り、本業の傍ら、報道・討論・バラエティ・お笑いなど多様なテレビ・YouTube番組でも活躍中。

Q. 東京の子育ては選択肢が
多すぎて迷います。

夫婦ともに地方出身で、東京の子育てに馴染みがありません。東京の子は勉強や習い事を含め、豊かな文化資産に触れているような気がしますが、何を選んだらいいのかわかりません。保育園もモンテッソーリ、のびのび系、お勉強系などたくさんあり、その先は小学校受験?中学受験?など、選択肢がありすぎて正解がわからず不安です。(36歳/0歳男の子)

A. はっきりした意志がないなら、
他人がやっていることに
乗っかってみる。

都会は学校もレストランも家具屋さんも多すぎて、一生かかっても探りきれないところが良さでもあり駄目さでもある。そうすると2つの道しかありません。

自分の好きなものやすべきことを理解して自分で選び抜いた道を突き進むか、よくわからないから周りや多数が良いと言うものに乗っかるか。迷うってことは強い意志はないってことなんだと思います。

なので、噂話や人がいいと言うものにとりあえず乗っかってラクしてみるのもいいんじゃないでしょうか。子育てや教育って真面目にやろうとするといくらでも考えられるし投資もできるけど、ぶっちゃけ、何が正解か誰にもわからないですよね。だから、できるだけラクな方向に進む省エネ路線もありなのかなと。ということで、僕は自分の人生や生活については思考停止して勝手にいろんな悩みを削ぎ落としています。

Q. デジタルコンテンツとの
正しいつき合い方が知りたいです。

YouTubeやゲームなど、デジタルコンテンツとの良いつき合い方がわかりません。時間や使い方をある程度、制限することが必要なのか、それとも好き放題やらせることで何かにつながるのかなとか。成田さんはどう思いますか?(32歳/5歳男の子)

A. Passiveからactiveへ。

YouTubeやTikTokなど、流れているものをひたすら浴び続けるような受動的なものはちゃんと制限した方がいいと思います。私も死んだ魚のような目で浴び続けて、気づくと5時間経ったりしてるので偉そうなことは言えないんですが(笑)。

今のSNSやデジタルコンテンツってジャンクフードみたいなもので、ポテチを食べ始めたら止まらなくなるように、観始めたら止まらないように作っているわけで、中毒から抜けられない消費者になってしまいます。食べ物や薬に関して規制が全くなく何でもありだった時代がありましたが、あれに近いような状態。すごく危険なので、ちゃんと心と頭を守ることは子どもにとっても親にとっても必要だと思います。

ただ、activeでクリエイティブな方向もあって、動画やVRコンテンツを作る側に回ったようなときは放置してもいいんじゃないでしょうか。ゲームに関しても、ゲームをやるとバカになるとか自制心がなくなるとか言われますが、そういうエビデンスがあるかというとそうでもないんです。ゲームは教育コンテンツ的な面があって、目標に向かって頭やデータを使って行動や戦略を最適化することを学んだり、他人と連携してチームプレイやコミュニケーションを学んだり、人間が社会で生きていく上で必要な能力やノウハウをミニチュアで再現しているとも言えます。

中毒者側から創造者側へと絶えず軌道修正しながらデジタルコンテンツとつき合うことが大事……なんて言うと普通すぎるでしょうか(笑)。

 

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Q. 非認知能力が大事と言われても、
結局どうしたらいいのでしょうか?

非認知能力が一番重要とか勉強ができるだけじゃ意味がないと子育て本などには書いてあります。特に秀でた能力がなさそうなら勉強くらいはできた方がいいのかなと思うのですが……。(34歳/3歳男の子・0歳女の子)

A. 非認知能力とは、テストの点数に
飽きた学者や現実逃避したい親が
飛びつく流行みたいなもの。

非認知能力、要は「試験の点数だけが人の価値じゃない。自制心、やり抜く力や社会性などが大事」という話はキャッチーなのでメディアでもよく見かけます。

ただ、500近くの非認知能力に関する研究を総合した最近の調べでは、分析が適当なものがほとんどで、非認知能力が将来の収入や幸福度にはっきりとした影響を持っているという証拠はないのだそうです。

「非認知能力は短い目で見た勉強には効かないけれど、長い目で見たときに社会で生き抜く力には重要」というストーリーがよく語られますよね。でも、そもそも長い目で見た効果を測ろうとすると、何十年も待たなければならず、待ってる間に社会は様変わりしちゃいます。その間に他の様々な要因もノイズとして入ってくるので、本当に非認知能力が効いているかを検証するのはとても難しいんです。

そもそも非認知能力って定義も曖昧だし怪しげな話も多いので、気にしすぎない方がいいと思います。

Q. 子育てにはやっぱり
父親が必要ですか?

夫が来年から単身赴任です。幼少期に父親が不在だと子どもの成長に影響するという説をネットで見ました。母親がめちゃくちゃ頑張ればどうにかなりますか? それもまたプレッシャーで不安です。(31歳/4歳女の子・1歳男の子)

A. 変えられないことは
くよくよ悩まず、
ドラマでも観ましょう。

幼少期に父親がいた方がいいのか、それとも意外にいない方がいいくらいなのか、たとえ答えがわかってもお父さんは単身赴任しちゃうんだから状況は変わらないですよね。変えられないことについてあまり心配してもしょうがないんじゃないでしょうか。

お母さんがめちゃくちゃ頑張ってもお父さんの代わりにはならないので、プレッシャーを感じずに気楽にやれることをやるだけでいいと思います。

『22世紀の民主主義選挙はアルゴリズムになり、政治家はネコになる』
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大ヒット中の初著書。「言っちゃいけないことはたいてい正しい」をモットーに、民主主義や政治の新たな解を提案する、22世紀に向けて読むと社会の見え方が変わる唯一無二の一冊。

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写真/©MENʼS NON-NO and Kiyono Hattori 取材・文/宇野安紀子 編集/フォレスト・ガンプJr.
*VERY2022年12月号「成田悠輔さん ママの悩み相談「神回答」」より。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。商品は販売終了している場合があります。