ホルモンバランスの変化やライフステージの変化があり、悩み多き30~40代の読者に、産婦人科医の高尾美穂先生が優しくアドバイス!第2回の前編は、市販薬が効かなく嘔吐してしまうほどのひどい頭痛があるという、Hさんのお悩みについてです。
教えてくれたのは
高尾美穂先生
産婦人科専門医・婦人科スポーツドクター・ ヨガ講師。産婦人科専門医として、女性の健 康をサポートしつつ、それぞれのライフステージ・ライフスタイルに合った治療を提案す る一方、スポーツドクターとして、女性のプロアスリートへのサポートも行っている。
【相談テーマ】市販薬が効かないほどの頭痛に悩んでいます
相談者:Hさん(43歳)
千葉県在住
16歳の息子を子育て中の母
派遣勤務
ひどい頭痛はホルモンの変化が原因⁉
Hさん: 3年前から市販の頭痛薬が効かない頭痛が出るようになり、あまりに痛くて嘔吐するほどになってしまいました。専門外来を受診したところ、片頭痛と診断され、今は処方薬で痛みは治るようになっています。片頭痛が起きるのが生理前後のタイミングが多いのですが、ホルモンが影響しているのでしょうか?
高尾先生:専門外来を受診したのはよい選択でしたね。片頭痛は診断が非常に難しく、一般内科では難しいので、専門外来の受診がおすすめです。
片頭痛がホルモンと関連しているかということですが、確かに生理前はエストロゲンの変化によって頭痛が起きるという報告もあります。ピルを飲めば、ホルモンのアップダウンを抑えることはできます。ただ、残念ながら片頭痛のある人はピルが服用できないのと、40歳を過ぎると血栓リスクが高まるという2つの理由から、Hさんにはピルの処方ができません。
頭痛は漢方薬の得意分野!体質に合うものを選んで
Hさん:今のところ片頭痛の薬による副作用はないのですが、脳の血管膨張を抑える薬と聞いているので、どことなく不安で。できたら服薬の回数を減らしたいのですが……。
高尾先生:ホルモンと関連した頭痛の場合、ピル以外にも治療の選択肢があるので安心してください。一つはプロゲスチン製剤(黄体ホルモン製剤)の服用です。黄体ホルモンを補充することで、生理周期での黄体ホルモンのアップダウンがなくなり体調が安定しやすくなります。生理のときに頭痛があるなら、月経困難症と考えてプロゲスチン製剤を試してみてもいいかもしれ
Hさん:副作用はないのでしょうか?
高尾先生:プロゲスチン製剤にはエストロゲンが含まれていないので、血栓症のリスクもなく安全に服用できます。唯一あるとしたら、たまに予期せずして出血してしまう可能性があることでしょうか。
Hさん:急な出血は心配です……。
高尾先生:であれば、漢方という選択肢もありますよ。実は頭痛は漢方薬の得意分野なんです。片頭痛であれば呉茱萸湯(ごしゅゆとう)という漢方がおすすめ。さらに、肩こりなどからくる慢性頭痛であれば釣藤散(ちょうとうさん)という漢方を選ぶといいですね。そのほか、葛根湯(かっこんとう)という漢方も頭痛全般に効く薬として有名ですよ。漢方薬で片頭痛の57%が、慢性の緊張性頭痛の80%が改善するというデータもあります。
Hさん:改善率がかなり高いですね。漢方だと体質改善につながりそうですし、さっそく取り入れたいです!
【高尾先生の処方箋】片頭痛薬の服用回数を減らすためにできること
1:プロゲスチン製剤を服用する
2:漢方を取り入れる
後編は「体形の変化」についてのお悩み相談です。ぜひご覧ください。
撮影/中林 香 取材・文/須賀華子 編集/倉澤真由美