自閉症の2人の子どもが生み出す作品は、ブランドとのコラボに
障がいのある子どもの介護を辛いものとして訴えるのではなく、むしろ「一緒に生きてゆく楽しさ」として伝えている女性たちを取材してきました。
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輪島満貴子さん(42歳・石川県在住) 兄妹アーティスト「KANTA&KAEDE」のアートディレクター
自閉症の2人の子どもが生み出す
作品の数々―― 頑張っている姿に
背中を押されて、私も挑戦しています
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「貫ちゃんは言葉の発達が、少し遅いんじゃないか……」そう心配する両親を安心させようと、輪島満貴子さんは、長男・貫太さんを連れて病院を受診。ところが、自閉スペクトラム症の疑いがあると医師から告げられ、その後「知的障がいを伴う自閉症」と正式に診断されました。
「知らない世界と出合ってしまったことへのショックというか、不安しかなかったです。自閉症は、先天的な脳の機能障がいと知り、脳の発達に良いと言われることは、何でもチャレンジ。とにかく必死でした」と当時を振り返る満貴子さん。公園など外では、貫太さんの行動に対して“なんで注意しないの?”と言われているかのような視線が気になり、人が少ない場所や時間帯を選んで遊ばせるように。貫太さんの妹・楓さんも自閉症と診断されると、より家族だけで過ごす時間が増えていきました。
同じ自閉スペクトラム症でも、貫太さんと楓さんは全くタイプが違いましたが、お絵描きや工作を大好きになったという点は一緒。貫太さんは、1枚の画用紙に多くのキャラクターが密集する絵を描くようになり、楓さんは可愛い洋服や、おとぎ話に出てくるお姫様の切り絵を好んで作っていました。
はじめは「好きなことをさせてあげたい」という気持ちで見守っていた満貴子さんも、日々生み出される作品を見て、何かできないかと模索し始めます。手ぬぐい、バッグ、ポーチなどを作り、SNSで発信するようになると、ある日人気ブランド「オニツカタイガー」から連絡があり、2人の作品が描かれたコラボスニーカーの発売が決定。国内外から注目されるようになり、企業からの依頼も多くなったといいます。
子どもたちの活動をサポートする一方で、実際に会いに来てもらえる場所を作りたいと思い、満貴子さんは昨年、不定期営業のパン屋をオープンしました。「私の閉ざした心を開いてくれたのは、貫太が通った幼稚園での出会いでした。皆が私たち家族のことを知って、理解してくれることで楽しく毎日を過ごせる体験をしたからこそ、社会に対しても同じだなと。社会に理解者が増えれば、もっと生きやすくなるし、子どもたちの行動も自然と広げられると思うんです」。
2人が好きだったから習ったパン、図工も家庭科も得意ではなかったけど2人のためにやってみたモノづくり、いつしか満貴子さんの原動力は、貫太さんと楓さんになっていました。「進学・就職・結婚、何ひとつイメージできず心配になることもありますが、それぞれに人生があるんだということを実感します。子育てって、わからないからこそ悩んで道を見つけていくことが楽しみなのかなと、2人に教えられました」。
「モノづくりをしてみたら、意外とできることに自分でもびっくりしました。学生時代の成績は関係ないですね(笑)。今は楽しんでいます」と満貴子さん。
<編集後記>2人の作風に影響を 与えたと感じる「個育て」
この夏、東京新聞本社で開催された「KANTA&KAEDE展」に行ってきました。貫太さんが描く笑顔のキャラクターや楓さんのカラフルな作品を見ていると、なんだかとてもハッピーな気分に。それはきっと、満貴子さんの明るいお人柄や、2人の個性を尊重した「個育て」にあるのだろうと、後日行った取材で感じました(ライター・篠原亜由美)
取材/篠原亜由美 ※情報は2022年11月号掲載時のものです。
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