【東京アートパトロール】深堀隆介 金魚愛四季

アートパトロールをするときの身近な会場のひとつが「百貨店」。その百貨店の展覧会で近頃人気を博しているコンテンツのひとつが「金魚」です。そう、あの泳ぐ金魚。

現在西武渋谷店で開催されているのが、金魚をモチーフにした作品で各地の展覧会で引っ張りだこになっている現代美術作家・深堀隆介氏の展覧会『金魚愛四季(金魚いとしき)』。

深堀氏の作品は一見、立体フィギュアを埋め込んだように見えるのが特徴なのですが、これ実際は樹脂に描かれた絵画なのです。

3_秋敷01(済)

<秋敷>

 スクリーンショット 2020-10-23 9.52.56

<春ノ桶>
夏の季語とされる「金魚」に新たなイメージを与えるインスタレーション展示より。

 

器の中に透明な樹脂を流し込み、その表面にアクリル絵具で部分的に金魚を描き重ねるという作業を何層にも繰り返すことで、絵が重なり合い、金魚がまるで生きているかのような、そんな躍動感と立体感を生み出しています。

制作風景は展覧会でVTR資料として流されているのですが、その筆使いの巧みさ、繊細さは圧巻です!

 スクリーンショット 2020-10-23 9.54.33
<金魚酒 命名 一花>
深堀氏の代表的な作風である樹脂を用いた作品。升の中を桜の花びらとともに金魚が泳ぎます。

そもそも中国に起源を持つとされる金魚が、初めて日本にもたらされたのは室町時代。「こがねうを」と呼ばれ、長崎や堺などから日本全国に広がり、やがて庶民にも伝わるところとなり、江戸の町では金魚ブームが到来したそう。

江戸から東京へ、時を経ても金魚が庶民の心を惹きつけることには変わりなく、

そのブームの根強さには驚きです。

 会場には展覧会入場者のみ入場できる深堀氏のグッズのショップも併設。ポストカードやクリアファイルといった定番ものから、作品集、衣類や小物、オリジナルグッズまで盛りたくさんで、金魚ブームを実感させられる充実ぶり。

私、実は最初は「金魚??」と思っていたのですが、深堀氏の描く金魚はノスタルジックでフォトジェニックで、謎めいていて、そしてキモかわいくて、引き込まれるのです。で、この感情を受け入れないのは素直じゃないのではと思えてきました。

不思議な金魚体験、ほっと癒されるので楽しんでみてください。

スクリーンショット 2020-10-23 9.56.47
クリアファイルA4サイズ ¥400

 

 スクリーンショット 2020-10-23 9.58.45
ステッカー ¥300
©︎Masaru YAGi

 スクリーンショット 2020-10-23 10.00.12

深堀氏は1973年愛知県生まれ。1995年愛知県立芸術大学美術学部・デザイン工芸専攻学科卒業。現在の活動の場は美術館やギャラリーでの個展にとどまらず、パフォーマンスやワークショップなど多岐に。海外での個展で高い評価も。

 

 

【DATA】
深堀隆介 金魚愛四季
111日(日)
会場:西武渋谷店A7階特設会場
入場料:一般¥800
https://www.sogo-seibu.jp/shibuya/topics/page/fukaboririusuke.html 

 

Text:安西繁美

女性誌やカタログで主にファッション、食関係、アートの企画を担当する編集・ライター。流行には程よく流されるタイプで、食いしん坊、ワインと旅行好き。家族や友人に美大出身が多いのに私は画力ゼロ。描けないけど書けるようになれたらいいなと。西武渋谷店では地下で夕方5時から限定販売される「もりやす」のローストビーフが好きです。