【LIFE STYLE】パリ近郊 花とともに暮らす⑬ 冬支度

スト-ブに薪を幾度も足した夜が明ける。
朝のひかりを入れるために窓のカ-テンを開けると白い庭が広がっていた。

初霜。

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何時もより少し冷え込んでいるような気がし、厚めのコ-トとマフラ-を着込んで犬と家を出た昨日の夜、空に星がくっきり見え月の光が辺りを照らしていた。

霜の降りる日は晴天が多い。明るい陽の中で空気を目一杯吸い込むと鼻の中がつーんと冷たい。吐く息が少し白い。

またこの季節が廻って来た。

当たり前のどうということのない冬のしるしが何だかうれしく無意識にそれを確認していた。いろんなことが起こっていても、ともかく地球は正確にぐるぐると回り続けている。

昨日とは違う何かに心が弾む。

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軽く凍りついた芝生の上をシャキシャキと音をたてながら歩いて行く。白い、ざらざらとした砂糖を吹きつけたような落ち葉や花を見ていると、まるで全てが新しく生まれ変わったような感じがする。

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そんな空気を吸い込みながら散歩をしているうちに、太陽は夜が仕掛けた魔法を溶かし、家に戻るころにはいつもの庭にすっかり戻ってしまった。

火をおこすための薪が少なくなっていることに気が付き裏庭に取りに行く。

薪スト-ブの暖かさはとても柔らかい。

焚火の周りに手をかざし、炎を感じながら暖を取る感じだ。スト-ブに火をくべる作業が冬の毎日の仕事の一つでそれが結構、時間がかかるのだが、それはそれでまた楽しい。

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薪を置いている場所の横にイチジクの黄色い葉が落ち、バサッと散らかっていた。上を見ると裸の枝に熟しきれなかったイチジクの実がぽつぽつと見える。こんなに沢山の葉がついていたのか、と思う。

想像を超えるエネルギ-で葉を伸ばし花を咲かした後、冬を迎えるにあたり木々は葉を落とし栄養を蓄え深く眠りにつく。霜が降りだすと、庭は洗礼を受けたかのように静かになっていく。

遠くで、小鳥が地面に落ちている林檎を食べているのが見える。人気が少なくなった庭で鳥たちは思い存分はしゃぎまわっている。

冬の庭には白が似合う。

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これから霜が降りる回数が増えるようになり雪も降るだろう。冬ごもりの動物のように、あれこれと夢想するにはどこか現実を離れたような冬の静かな真っ白な庭が一番だ。

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裏庭で健気に咲いている白バラやシンフォリカルポスの白い実を見ながら仕事を始める。

リ-スの土台を作りながらこれから深まる冬のことを考えた。

 

冬の楽しみは尽きない。

 

 

 

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文・西田啓子/ファーマーズフローリストInstagram@keikonishidafleuriste
フランス・パリ近郊花農園シェライユ在住。パリの花のアトリエに勤務後、自然を身近に感じる生活を求め移住。以来、ロ-カルの季節に咲く花を使いウエデイングの装飾や、農園内で花を切る事から始める花のレッスンを開催。花・自然・人との出会いを大切にする。
https://keikonishida-fleuriste.jimdo.com/