最近よく耳にする「AO入試」、どんな試験でどんな子が合格するの?

大学入試において推薦入試による合格者が増えてきている昨今、我が子の大学受験は、どうしよう?  最近よく耳にして気になる「AO入試」、親として何かできることはある?どんな準備をすればいい?そんな迷える親御さんたちのために、日本アクティブラーニング協会理事であり、これまで早慶・国公立をはじめとする難関大AO・推薦入試30,000名の指導実績を有する人財教育プロデューサーの青木唯有さんにお話をお伺いしました。

※2021年度入試からAO入試・推薦入試は「総合型選抜・学校推薦型選抜」と名称が変わりますが、本記事では便宜的に旧名称で記載しています。

AO入試とは具体的にはどんな試験なのでしょうか。

大学による違いはありますが、書類審査、面接、ディスカッションなどが特徴で、ペーパー上で学力評価する一般入試に対して、その大学で何を学びたいかなど、受験生の意欲や個性・適性が重視されます。自分が社会に出て、どういう役割を果たしたいか、そのために大学で何を学びたいか、そして大学側がその学生を欲しいと思うか。学生と大学のマッチングで、就職活動に似ています。社会と直結したグローバルな試験の形式で、教育全体にも良い試験なのです。

AOに向いている、向いていないはありますか

自分の内面や将来について深める行為そのものがAOへの準備ですので、私の個人的な感覚では、未来のために学んでいる中高生の誰しもに可能性があると思います。あえて言うなら、AOは正解のない入試ですので、正解を求めるタイプよりは、正解のないものに挑むこと、何が起こるかわからないけれど、何かを作り出していこうというタイプの方が強いと思います。コロナ禍が象徴するように、確定された未来や延長線上に安定があるという時代ではなく、色々なことが劇的に変わる時代なので、そういう時代を生き抜ける人財という意味でも時代に合った入試なのだと思います。

どんな人が合格していますか

やはり、ソフトスキル、非認知スキルの高い人。人としての想像力、好奇心、やり抜く力、そういう素養が高い人は合格しています。非認知スキルは後天的に伸ばせます。親子や家族と過ごす時間がベースですが、ワークショップなどに参加するのも良い経験になると思います。

AOは特別な実績がある方が有利なのでしょうか

AOは実績重視という話を耳にするかと思いますがそれは誤解です。スポーツなどで全国トップレベルの成績を持っていれば入れるという認識は間違いです。もちろん実績があるに越したことはないですが、それがあればいいというわけではないですし、なくてもいいのです。大切なのは、何かをするプロセスの中で、強みとなるものを見出すこと。スポーツでも音楽でも趣味でも。好きなこと、関心のあることに没頭してみて、その過程で見出したマニアな知識や力の方が実績に優るのです。

どんな準備をするといいですか?

「MY STORY」を作ることをオススメします。今、注目されているポートフォリオ教育にもつながりますが、過去を振り返って、自分の経験や出会いを通して何を感じて何を得たか、ノートに書いてみる。失敗も含めて、その経験に意味付けをして、自分とはどういう人間で、それゆえに将来、こういうことをやってみたい、というように、過去と今と未来をひとつのストーリーにして資料を作る。これはAO入試に限らず、就職活動にも役立ちます。お子さんがポートフォリオを作る時には親御さんもぜひ、協力してあげてください。過去を振り返る際には、昔の写真や日記、母子手帳なども素材になるのです。

家族と過ごした時間もAO入試の素材になるのですね

教育だけでは経験できないことが家庭にあります。家族との経験から将来につながることもたくさんあります。ある学生は家族とよく海外旅行に行っていて、空港に着いた時に、その国の文化を感じワクワクするけれど、日本の空港は味気ないと感じ、空港デザインで日本の玄関口を表現したいと考えたのです。その思いでAOに合格できました。家族と過ごす日常で自分のやりたいこと、今の社会の課題を見つけ出したという学生も多いのです。

その他に親ができることはありますか?

子供の非認知スキルを高めるために子供と対話する時間を必ず設けるようにしてください。親が子供に関心を示しているということが大切。失敗を受容してくれる親の元で育った子供は非認知スキルが高いのです。失敗をするということはそれだけ行動をしているということ。行動できるというのは安心感があるからです。失敗させたくないから効率よく結果に結びつけたいと近道させようとすると子供は失敗します。それと、オシャレをさせた方がいいですよ(笑)。オシャレって自分の魅力がどこにあって、自分らしい着こなしって何だろうと考える作業で美意識を育てるのです。自分を魅力的に見せるというのはAO入試にも繋がる部分なのです。

ポートフォリオなどの準備はいつからスタートするのがいいのでしょうか

AO入試を意識していないタイミングからそれとなく誘導して始めさせるのが理想です。受験を意識すると「受験のために」という目線になり天然のものが掘り出しにくくなるので、中3や高1くらいのまだAOを意識していない時に始める方が質の高いものになると思います。「こういうことをするとウケが良さそう」と狙って準備したものは大学側にも見透かされますから、広く浅くではなく、自分が何者かを伝えられるオンリーワンのものを深く掘り下げる作業が大切なのです。

塾選びのポイントはありますか

活動実績作りの支援を売りにした塾がたくさんあります。大物政治家などを招いて講演会をして、それを活動実績にする。その大物政治家の講演が自分の学びたいことと関係していなければ、実績にもならないし、それを活動実績に書いてしまうと上辺だけの人になってしまうのです。活動実績目的で著名な人の講演を聞くことより、誰と出会ってどんな経験をしたかが大切なのです。反対に、学生が本当に学びたいことにつながる実業家に出会わせてくれるような塾もあります。塾は実際に見学に行き、話を聞いて、しっかりしたコンセプトと哲学を持っている塾を探して欲しいです。

最後にSTORY webの読者さんに特別なアドバイスをお願いします

どこの大学に行きたいかということより、どんな人から何を学びたいかが大切です。ぜひ、興味のある大学のホームページなどから、教授や研究室を探してみてください。学びたい人を探すことで自分のやりたいことも見つかるかもしれません。そして、もしも心から学びたい気持ちが強い教授や研究室を見つけたらコンタクトを取ってみてください。恩師となる人に出会うかもしれません。

教えてくれたのは…

青木唯有さん 日本アクティブラーニング協会理事。早慶・国公立をはじめとする難関大AO・推薦における指導実績30,000名以上、「大学受験で育む親子軸」をテーマに人財教育プロデューサーとしてオリジナルの見解を発信。日本アクティブラーニング協会理事として「非認知スキル」をテーマとした東京大学との共同研究にも参画。

撮影/杉本大希(zecca) 取材/小仲志帆

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