プロ野球選手の夫が不本意な引退。そのとき妻がかけた言葉とは
会社の倒産、リストラ、心身の不調などは、いつ誰に起こっても不思議ではありません。もし、最愛のパートナーの身にそれが起きたら、あなたならどうしますか?
喜田彩子さん(36歳・東京都在住) インスタグラマー、アパレル会社経営
彼は、次の人生を自分で切り開いて
いける人。胸を張って、堂々と正面突破
してほしかったんです
いける人。胸を張って、堂々と正面突破
してほしかったんです
喜田彩子さんが、プロ野球選手の剛さんと出会ったのは、大学生の時。剛さんが広島東洋カープに移籍した年に結婚し、翌年には長女を出産しました。「野球人生に限りがあるのはわかっていました。私たちには子どもを育てる責任があるので、私も働いていたいと思いました」。
また、学生時代に読者モデルやアパレルブランドでのアルバイトの経験もあったことから、自身のブランドを持ちたいと思うように。そこで、自分の貯金を開業資金に充て、’10年に、アパレルブランド『マ・シェリ』をスタート。「仕事は面白くて夢中になりましたが、一方で、私が働いていれば、夫が次の仕事を選ぶときに、焦らず熟考して納得がいく道を探せるのではないか、気持ちの余裕という部分で支えたい、という思いもありました」。
そうして、事業が軌道にのり始めた頃、剛さんが戦力外通告に。「夫は、愚痴や弱音など口にしない人で、そんな時でも、いつもと変わらず冷静でした。諦めきれない思いは感じ、心配しつつも、気持ちを十分に量りかねていました」。
その後、剛さんは、独立リーグのコーチに就任しましたが、1年契約だったので1年後には無職に。今まで野球しかしていなかったので、何をして良いのかわからない様子で、ずっと家に引きこもっていました。「その頃、初めて夫の心の中が見えたような気がしました。思い詰めているように見え、ふと『明日の朝起きたら居なくなっていたらどうしよう』と不安に思うことも」。
そんな日々が1カ月ほど続いた頃、彩子さんはあえて『1年以内に就職しなければ離婚をする』と強い言葉をかけたのです。「もちろん、そんなつもりは全くなかったのですが、夫の気持ちに変化があればと思い……。追い詰めるかもしれないという不安もありましたが、夫にも第二の人生を自分で切り開いてほしいと、意を決して言いました」。
すると、その言葉を聞き、剛さんは本格的に就職活動を開始。触ったことのないパソコン教室に通い、何十社と採用試験に挑戦して、今の勤務先ドーム(アンダーアーマー)へ就職。現在ではマーケティング部の責任者として活躍しています。
「夫が自ら行動し、手にした第二の人生が、大好きな野球に携われる仕事で本当によかったと思います。現役時代よりも今の仕事のほうが夫に合っているんじゃないかと思うほど、とても楽しそう(笑)。私も、今しかない子どもたちとの時間を大切にしたくて、現在『マ・シェリ』はコラボを中心に形態を移行。家族との時間も持てるようになり、今がいちばん幸せです」。
「子育てが一段落したら、インスタのフォロワーさんたちと、大好きな韓国旅行に一緒に行きたいです」(喜田さん)インスタグラムID ayacokida
撮影/河内 彩 取材/秋元恵美 ※情報は2022年7月号掲載時のものです。
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