小学生が描いた絵に240万円の値が!最近よく聞く「NFTアート」って?
昨年、小学生の描いたNFTアートが240万円もの高値で売買されたというニュースを見た人もいるのではないでしょうか。アーティストの名前は〝Zombie Zoo Keeper〟、日本に住む9歳の男の子です。そんな話題のワードNFTですが、「そもそもNFTって何?」という方が大半のはず。そこで、専門家の岡嶋裕史先生に基礎知識を教えてもらいました!
こちらの記事も読まれています
▶︎草野絵美さん【話題の小学生NFTアーティストの母として決めている子育てルールは?】
『NFT』とは?何に使うの?
Q. NFTをわかりやすく教えてください!
A. NFTはNon-Fungible Token(非代替性トークン)の略ですが、NFTを知るためにはまずブロックチェーンを理解する必要があります。ルパン三世で例えると、いくらお宝を隠してもルパンに盗まれてしまうので、銭形警部がお宝を金庫に隠すのではなく風船に入れて空に浮かべるんです。すると、みんなが見ているからルパンが手を出しにくいというエピソードがあって、ブロックチェーンはそれに近いもの。仮想通貨で言えばお金の取引を銀行という中央集権組織が握るのではなく、関係者全員が相互監視し、取引内容を検証、改ざん不能な形で保存する仕組み。NFTではお金の取引ではなくデータの権利関係を記録します。
『NFTアート』が話題になったのはなぜ?
Q. NFTアートってどういうもの?
A. デジタルの絵や音源や映像などはもちろん、リアルの美術品の権利関係をNFT化している人もいます。絵などはデータが大きいため直接ブロックチェーンに書き込むのではなく、絵へのリンク(URL)をNFTに埋め込んで記録します。絵の実体はURLをクリックした先にあるという仕組みです。
Q. NFTアートは何が画期的なの?
A. デジタルデータはコピーし放題なので、オリジナルの価値が希薄になります。その点、NFTを使うと特定の条件下で唯一性を主張できるので、デジタルアートに希少性が生まれ、値段がつくことがあります。また、通常の美術品の売買は画廊を通すなどハードルが高いですが、NFTアートなら理念の上では誰でも取引できるのも魅力です。ただし、実際の取引は難しく取引所に依存しています。
Q. 詐欺に遭う可能性もあるってほんと?
A. NFTアートは唯一無二と言われますが、特定の条件下での話です。アート自体はブロックチェーン外にあるので悪意ある第三者や時には出品者が改ざんする可能性もありますし、複数のブロックチェーンで同じアートをNFT化する人もいるかもしれません。ブロックチェーンではすべてが自己責任なので売買は覚悟を持って慎重に行ってください。
Q. マーケットの規模はどのくらい?
A. NFTマーケットには世界中あらゆる場所から参加できますが、今は欧米が中心。取引額は一月あたり数十億ドル、世界最大の取引所であるOpenSeaのアクティブユーザーは数十万人規模。更なる市場の拡大も予測されています。
私たちはどう使う?今後の可能性は?
Q. 初心者におすすめのプラットフォームは?
A. 世界最大の取引所であるOpenSeaが比較的使いやすいでしょう。NFTの売買は仮想通貨のイーサリアムが主流で手数料(ガス代)が高いのがネックですが、ポリゴンという仮想通貨を使用すればこれをゼロに近くできます。
Q. アートの売買には何が必要?
A. 販売するアートとメールアドレスが必要で、パスワードも考えます。ポリゴンなら出品にお金はかかりませんが、買う場合は仮想通貨を持つ必要があるので、取引所に口座を開設、仮想通貨を購入するためにクレジットカードが必要です。
Q. 転売されると制作者にもお金が入る?
A. 通常のアート作品は転売されても制作者にお金は入りませんが、NFTアートは二次流通された際のロイヤリティを制作者が自由に決められることがあります。取引所によっては上限を設けている場合もありますが、だいたい10%が相場です。
Q. 売買する上で気をつけることは?
A. 失ってもいい金額で始める、これに尽きます。売るだけならリスクは比較的小さいですが、購入する場合は今の市場で真贋を判定することは困難です。たとえば、Aさんの作品だと思ったらBさんの作品だった、1つしかないと思っていたのに実は別の場所でも売っていたということはありえます。投機や投資ではなく、作家を知っていて応援するために買うなど、小額で始めるといいと思います。
Q. NFTの今後の可能性は?
A. 可能性があるのは事実です。画廊での売買はハードルが高かったり、自分の好きな作家の作品を気軽に買うことができなかったのが、NFTを介することで道がついてきたのは素晴らしいこと。知識があればアーティストも気軽に出品できるし、それこそお子さんが自分の作品に値がついて売れればモチベーションになると思います。法整備を含めて、今後どう運営していくかが鍵だと思います。
岡嶋裕史さん
1972年生まれ。中央大学国際情報学部教授。専門は情報セキュリティ、ネットワーク。『メタバースとは何か』(光文社新書)など著書多数。ブロックチェーン関連のメディア出演も多い。
『メタバースとは何か』光文社新書 902円
世界的企業のFacebookが社名を「メタ(Meta)」に変更したことで一般的に知られるようになったメタバース。メタバースは私たちの生活をどう変える? ビジネスチャンスとは? GAFAM各社の動向や日本企業の取り組みを紹介しながらその可能性を探る一冊。
合わせて読みたい
▶︎毎日いろいろあるけれど、私たち「ポジティブ肌でいこう!」Vol.1
▶︎【子どもにオススメのお絵描き道具5選】描くだけで“飾りたいアート作品”になる!
取材・文/宇野安紀子 編集/フォレスト・ガンプJr.
*VERY2022年6月号「最近よく聞くNFTって何ですか?」より。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。商品は販売終了している場合があります。