【性教育ワーク連載vol19】「こころの性」ってなに?性別に違和感をもっていたらどうすればいい?

親子の15分性教育ワーク。前回は「からだの性」について扱いました。今回は「こころの性」についてがーマです。

「こころの性」についてのワークは、「親子で」というよりも、親自身がアップデートすることがメインです。

子どもが「こころの性」について悩みを持っている時に、どう手助けできるのかを考えてみましょう。

また、何気ない日常の会話や、テレビなどで、「こころの性」を理解していない差別的な発言はよくあります。もしかしたら、自分自身や子どもが、悪気なく差別的なことを口にしていることもあるかもしれません。

まずは、【親向け】のワークで「こころの性」についてより詳しく知り【親子で】のワークで日常生活での具体的な話題について考えます【もっと知りたい】のところで、より詳しい内容にふれているのでそちらもご参考ください。

それではワークをはじめましょう!

今回の15分ワークのお題

【親向け】
①「こころの性」はどんなもの?
②「自分の性別への違和感」っていつ気付くの?
③子どもから、性別の違和感について相談されたら?
④子どもを見ていて、「こころの性」が違うのかな?と思ったら

【親子で】
⑤宿泊行事のお風呂に入りたくなかったら、どうしたらいい?

【もっと知りたい】
⑥トイレ、着替えはどうしたらいい?
⑦参考書籍、サイト、相談先

【親向け】①「こころの性」はどんなもの?

「こころの性」は自分の思う性のことで、性自認ともいいます。生まれた時に割り振られた「からだの性」と同じ場合もあるし、違う場合もあります。自分自身のなかで「こころの性」が揺らいだり、新しく気付いたりすることもありますが、まわりの人の説得や行動などで、その人の「こころの性」を変えることはできません。

「からだの性」と「こころの性」が同じである時は「シスジェンダー」、違う場合は「トランスジェンダー」と呼ぶことがあります。また、「こころの性」が女性でも男性でも無い場合には「ノンバイナリー」「Xジェンダー」など色々な呼び名があります。

このように、すべての人が色々なかたちの「こころの性」をもっていて、自分が好きな呼び方を使うことができます。

【親向け】②「自分の性別への違和感」っていつ気付くの?

「からだの性」と「こころの性」が一致していない場合、親が買ってきた洋服やおもちゃ、ランドセルの色、制服などをきっかけに、それらが自分のものではない、自分とは違う性別の子が持っているものこそ自分に合っている、と幼児期のころから自分が与えられるものや持ち物への違和感を覚えたり、からだの特徴(おちんちんがある/ない、など)で自分のからだへの違和感を持つことがあります。

性別に違和感をもつ時期はひとりひとり違いますが、幼児のころからすでに違和感があったと答えているトランスジェンダーの人は多く、思春期以降は、からだの発達(生理がはじまる、胸が大きくなる、筋肉がつくなど)について悩むことも多いです。

【親向け】③子どもから、性別の違和感について相談されたら?

まずは「伝えてくれてありがとう」と言い、その後ゆっくりと話を聞いていきましょう。また、「こころの性」と「好きになる性」はまた別の話なので混同しないようにしてください。

そして、家庭や学校など、生活の場で具体的に困っていることがないか、どうしたら解決できるか、一緒に相談してみてください

子どもから話を聞いた後に、家族の他の人(パートナーや、子どものきょうだいなど)に、その子が性別の違和感を持っていることを話したくなるかもしれませんが、いくら家族であっても、誰にそのことを伝えたいかは本人が決めることです。もし、家族に相談したいと思った場合は、まずはその子自身に誰に話していいのかを確認してください。

【親向け】④子どもを見ていて、「こころの性」が違うのかな?と思ったら

子ども自身から性別については何も言われないけれど、服や遊びの好みなどを見ていて、もしかしたら「こころの性」が違うのかな、と思うことがあるかもしれません。

このような場合は、子どもに聞きたくなるかもしれませんが、見守るだけにしましょう。服や遊びの好みがまわりの同じ性別の子と違うことは、性別の違和感からくるものかもしれませんし、性別の違和感はないけれど、単に服や遊びの好みがまわりの同じ性別の子と違うだけかもしれません。

それは本人以外には絶対にわからないし、本人もはっきりわかっていないこともあります。色々と気になるかもしれませんが、まずは見守り、本人が好きなものを選べるようにサポートできるといいですね

【親子で一緒に】⑤宿泊行事のお風呂に入りたくなかったら、どうしたらいい?

秋は小学校高学年になると、宿泊行事がある学校が多いですね。それに絡めて一緒に考えてみましょう。

「そろそろ5年生は林間学校(修学旅行でもなんでも、その名称で)だね。林間学校ってみんなで一緒にお風呂に入るじゃない? もし、『みんなと一緒にお風呂に入りたくない!』って思ったらどうしたらいいんだろうね?」と、まずは質問するところからスタート。

「いや、自分はみんなで入りたいけど」と言われたら、「自分はそうじゃなくても、生理中だったり、からだのことで悩んでたり、ただ単にお風呂嫌いだったり、いろいろな理由で入りたくない子はいるから、もし、自分がそうだったらどうするか考えてみて」とすすめましょう。

「仕方ないからがまんして入る」「林間学校に行かないかも」など、返答があるかもしれません。

「自分のからだのことでがまんはしなくて大丈夫。自分のからだは自分がどうしたいか決めていいから、『入りません』言っちゃっていいよ」

「林間学校自体を欠席するのもアリだけど、林間学校には行きたいけれどお風呂だけがどうしてもイヤなら、休むのはちょっともったいないかもね。お風呂はみんなと一緒じゃなくても、時間をずらして入ったり、個室のシャワーを使ったりすることもできると思うんだよね。先生に聞いてみたらいいかも。まぁ、2日ぐらいはお風呂に入らなくても大丈夫だし。」

「先生に聞いてみるときに、たぶん、理由をきかれるけれど、理由は言いたくなければ言わなくて大丈夫。それでも聞いてくるなら、『理由は言いたくありません。自分のからだのことは自分で決めるものなので』と頑張って言って、あとは親にバトンタッチでいいよ。」

ここは重要なところです。子どもたちは先生や大人に理由をきかれたら、答えないといけないと思っていることが多いですが、からだのことをきめるのは子ども自身ですし、理由を話すかどうかを決めるのも子ども自身。私たちが授業をしている学校では授業の際に先生たちに、理由をしつこく聞かないでほしいとお願いしていますが、一般的には理由を求められることも多いでしょう。そんな場合は親にバトンタッチして、親から改めて「理由を言う必要はない」ことを説明したほうがいいと思います。

また、理由をしつこく聞いてはいけないのは、子どもたち同士でも一緒です。勝手に理由を決めつけるのもNGです。

「もし、みんなと一緒にお風呂に入らない子がいたら、しつこく理由を聞き出そうとしたり、勝手に『生理だ』とか『男(女)風呂いやなんでしょ』とか決めつけたりしないでね。」と伝えてください。

「こころの性」と「からだの性」が違うことでお風呂に入りたくない子もいますし、からだの発達が気になっている子もいますし、なんとなくみんなでお風呂に入りたくないという子もいます。

そのような場合は、宿泊行事に参加する前に、子ども、保護者、学校で話しあって解決策を一緒に考えられるといいですね。繰り返しとなりますが、その際に、子どもがお風呂に入りたくない理由を、話したくなければ話さなくて問題ありませんので、どうするか(後で入るのか、入らないのか、など)ということだけを話し合いましょう

【もっと知りたい】⑥トイレ、着替えはどうしたらいい?

その1:女子用トイレ、男子用トイレを使いたくない
職員用のトイレの女性用、男性用の使いたい方や、設置されていれば「誰でもトイレ」を使えるかもしれません。安心して使える場所を学校と相談してみてください。

その2:体育の着替えができない
保健室や空いている教室を使うことができないか相談してみましょう。水泳の時は「上半身を出したくない」「露出が多いのがいやだ」ということがあるので、その場合はラッシュガードを着ることで解決するかもしれません。

⑦参考サイト、相談先

親が、性別に違和感をかかえている子どものことを相談することも、困っている本人が相談することもできます。詳しい情報提供もあるので、親子で共有しておくと便利です。

・よりそいホットライン
自分の性別への違和感のこと以外にも、同性を好きになることについても相談ができます。
電話番号 0120-279-338
(岩手、宮城、福島県は0120-279-226)

・チャットでの相談
https://form.comarigoto.jp/sexual_minority

・ハートをつなごう学校
http://heartschool.jp/
LGBTQ+当事者の人、周りでささえている人のメッセージがのっています。

おつかれさまでした!

次回は、「女らしさ、男らしさ」について考えてみましょう。

〈次回へ続く〉

イラスト/ばばめぐみ ※イラストは書籍「10歳からのカラダ・性・ココロのいろいろブック 変わるカラダのいろいろ編」(ほるぷ出版)から抜粋

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アクロストン

妻(みさと)・夫(たかお)であり、12歳、10歳の子を育てる親でもある、医師2人による性教育コンテンツ制作ユニット。
公立小の保健の授業や楽しく性について学べるワークショップを日本各地で開催。
家庭ではじめられる性教育のヒントや性に関する社会問題についてなどを発信している。

著書:「10歳からのカラダ・性・ココロのいろいろブック 変わるカラダのいろいろ編」 (ほるぷ出版)、「3~9歳ではじめるアクロストン式 『赤ちゃんってどうやってできるの?』」、「いま、子どもに伝えたい性のQ&A 、思春期の性と恋愛 子どもたちの頭の中がこんなことになってるなんて!」(ともに主婦の友社)
監修:シールでぺたぺた「おうちせいきょういくえほん」(主婦の友社)

インスタグラム
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ホームページ
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