人気作家インタビュー!更年期って、漫画なら理解しやすいんです
これって更年期? カラダの変化のワケを手っ取り早く知るのに"更年期漫画がわかりやすい!
更年期は女性にとってまだまだ話題にはづらいデリケート問題。一方で、知識を持つことで穏やかに乗り越えられることも知られるようになってきました。
『更年期』という言葉が気になったら、何から対策を始めたらいい?
そんな更年期ビギナーにおすすめしたいのが、コミックエッセイでの情報収取。マンガなので分かりやすいけれど、専門書のように重すぎない。体験談をベースにしたストーリーは「あるある!」があふれていて、更年期初期の不安を受け止めてくれるはず!
女性のお悩みをテーマにしたコミックエッセイは数多く出版されていますが、更年期を感じたらぜひ一番に読んでもらいたいのが、安斎かなえ先生の「女の曲がりカド プレ更年期がやって来た! !」(竹書房 刊 各電子コミックサービスで配信中)です。
安斎先生ご本人が、アラフォーで更年期になった体験を描いたコミックエッセイで、原因不明の不調をなんとかしようと生活習慣の改善や、サプリ、運動などのさまざまな対策に挑み、“まだ女として終わりたくない!”と奮闘する姿が描かれています。
実はこの作品が単行本で発売されたのは、2016年! 今も多くの女性の共感を呼ぶこの作品の魅力は?
そこで、作者である安斎かなえ先生にインタビュー! 体験コミックエッセイの魅力と更年期の当時のお話、その後の反響などの裏話を、このコミックの編集担当である竹書房・佐藤友宏さんとともにお話を伺いました。
安斎かなえ先生
元看護師の経験を生かした
さまざまな体験コミックが大人気!
サロペットにツルピカお肌で
とても50代には見えない!
竹書房 佐藤友宏さん
作品内に「担当」として登場する
ベテランコミック編集者さん。
穏やかながら、口には出さない
ツッコミがいい味出してる!
まさか40代前半で更年期とは思わず……
その時感じていた鬱々した気分を描き始めました
――コミックエッセイそのものはすでに人気のあるジャンルだったと思いますが、それでも作品の連載が始まった2014年。当時は、女性のヘルスケアについて、今ほど口に出せない時代だったと思います。「更年期」をテーマにされたきっかけは何だったんですか?
安斎先生:当時、すでに更年期の症状に悩んでいたのですが原因が分からずで、周りには「こんなに辛くて、この先どうやって生きていけばいいのか」なんて、暗い話ばかりしていたんです。でも、40代になったばかりだったので、更年期はまだまだ先の話だと思っていました。当然、同じような経験をしている人も、共感してくれる人もおらず……。普段のキャラクターもあってか「この人は何をいっているんだろう」って反応でしたけど(笑)。
担当の佐藤さんから「雑誌の中で連載を作りたいから、何か描いてほしい」と言われていて(笑)、当時の鬱々とした症状を描こうと思って始めたんです。
「女の曲がりカド プレ更年期がやって来た! !」(竹書房 刊)より
――マンガって、ある程度お話の流れがあって描かれているものだと思っていました! 作品そのものが、更年期の治療を始めるまでの、いわば実況中継ということですよね。
安斎先生:見切り発車もいいところで(笑)。プロットも掲載する期間の予定もないまま始まったものだから、副題にある「プレ更年期」という言葉も知らなかったんです。
でも、仕事になったからにはいつか作品としての“落としどころ”を見つけなくてはいけない。当時は、まさか自分が更年期だなんて思ってもいないからいろんな本を買い漁って読んでいたんですが、たまたま「プレ更年期」という言葉を雑誌で見かけて。そこに書かれていることが自分に当てはまっていて「これだ!」と思いました。
不調の原因がわからないから、この先のことがただただ不安だったのですが、症状に“名前”が付くことで安心したところもあったんですよね。その後、紆余曲折があっていい婦人科の先生に出会えたおかげで今があるという感じなんです。
同じように悩んでいる30代40代の方のお役に立てたらと思って描いていました。
マンガだと男性でも更年期が理解しやすいのかも!
――かわいらしい絵で笑いどころが満載ながらも、具体的な症状やその対策の様子がふんだんに盛り込まれているので、更年期という大プロジェクトの“見取り図”を見たような気がします!
佐藤さん:そこがコミックエッセイのいいところだと思います。重いテーマをレディース漫画のようなリアルな絵で描くとやはり重くなりやすいんですが、絵の雰囲気やギャグの要素もあるので気軽に読めるのが魅力ですよね。
ただ、僕から連載のお願いはしていたものの、更年期を扱いたいといわれたときは正直困りました。更年期は僕にはわかりませんでしたし、看板作家である先生とは長い付き合いになりますが、「終わりが見えない作品作り」は、初めてのケースで……。先生には男性目線があればいいという感じで聞いていましたのでお任せしていましたが、どう収めるのかわからず、冷や冷やしていました(笑)。
安斎先生:私がネガティブなことばかり描くから、佐藤さんから打ち合わせで電話がかかってくるたびに「安斎さんこの話、明るくなりますか??」って、心配されましたよね(笑)。
でも、男性の担当さんだったから描きやすかったというのもあります。症状にお個人差もありますから、女性編集さんが担当だったらどうしても「“普通”の更年期の説明」になってもっと早く連載が終わってしまったと思います。
でも、男性も知っておくほうがいいですよね。女性に更年期があることは昔から知られているのに、男性の理解はまだまだ進んでいないと感じます。うちの夫もよくわからないまま「大丈夫! 任せろ!」と言うわりに、私の体調に引きずられていっしょに体調を崩してしまうタイプで……。私がこのままではいけない! と思えたのでそういう意味では助かりましたが(笑)。
「女の曲がりカド プレ更年期がやって来た! !」(竹書房 刊)より
――作品中でも「知らない側」のご主人の存在感が光っていました。ご主人や佐藤さん男性陣の無知からくる少々デリカシーのないところは、パートナーのいる読者が一度は体験するだろう場面かもしれませんね。むしろ更年期を理解してもらうのに、気軽に読めるコミックエッセイをパートナーに読んでもらうのはいい方法かもしれませんね。
佐藤さん:僕も、先生から更年期の本をお借りして読んでみたんですが、読めば読むほど分からなくてポカンとしてしまって(笑)。でも、出版当初は女性しか読まない作品だと思ったら、男性読者からも「奥さんが更年期で悩んでいた理由が分かった」という感想のハガキをいただくことが何度もあって、こういう使い方もある作品なんだって思いました。
この作品もそうですが、人には言いにくいテーマの本でもデジタル書籍化されているものは手に取っていただきやすくなったと思います。
――「更年期」と書名に付くと、書店で買うのが恥ずかしいと感じることも。更年期初期は夫には知られたくないという気持ちもまだあるので、手持ちのガジェットで見ることができるのでありがたいです。
更年期は女の終わり? 説明ではなく女心を描きました
――当時すでにHRT(ホルモン補充療法)を受けられていたことにも驚きました。いまでこそ、治療法のひとつとして受け入れられていますが、連載がはじまったころは日本ではそれほど普及していなかったのではないでしょうか。
安斎先生:今はホルモン補充療法も普及し始めているんですね! 当時はあまり知られていなかった印象でした。私が以前看護師だったこともあって、治療法についてもわりと受け入れやすかったのもあると思います。
――HRTは「ホルモン補充」という言葉の強さもあって、体への影響に不安に感じる部分もありましたが、描いていただけたことで治療の過程が想像できて、これならチャレンジしてみたいと思いました。あえて専門的な解説記事を入れず体験したことだけで綴られている点も、読んでいて受け入れやすい部分がありました。
安斎先生:そういってもらえて嬉しいです! 実は、専門家の話は入れたくなかったんです。編集長に産婦人科の先生を入れるといわれたとき、青スジを立てて怒ったくらい。全然わかってな―い!って(笑)
佐藤さん:女性のそういった感想は勉強になります……。僕も、よくある他のコミックエッセイのように産婦人科の先生などのコメントも入れた方がいいと思っていたんですが。
安斎先生:私が辛かった時は孤独感に苛まれていたので、読んだ人が「私だけじゃない」と思ってもらえるような作品にしたいと思っていました。仲間がいると思うだけで心が楽になるじゃないですか。私のTwitterに「私も同じでした」というコメントをいくつもいただいたときは、お役に立てたのかなと思って嬉しかったです。
「女の曲がりカド プレ更年期がやって来た! !」(竹書房 刊)より
――ストーリーの途中でエストロゲンが~、閉経が~と難しい話をされると、途端に更年期を突き付けられるような気がしますよね。女性にとっては避けられないけど、「更年期はまだ先」だと思いたい(笑)。
安斎先生:よくわかります。女の悲哀といいますか……スポットライトの当たるステージにミニスカートを脱いで去る話は、多くの方に共感してもらえたのかなと思います。「更年期=女の舞台を降りなくてはいけない時期」と思いこんでいて、引退するアイドルのイメ―ジで描いたんです。
昔と違って、今はどんな服装でも似合っていれば何歳でも着ていいと思うんです。周りの目を気にして、自分から舞台を降りるのは本当にもったいないという気持ちもあって。40代だから、更年期だからといって、もう隠したり恥ずかしがる時代じゃなくなったと思っているんですよ。私はさすがに、ミニスカ―トは引退したんですが(笑)
――でも、先生、今日のサロペットの装いも素敵です!
安斎先生:ありがとうございます! もう50代ですが、サロペットはおばあちゃんになっても着てもかわいいかなって思ってるんですよ。
マンガで描く自分の体験が誰かの役に立つなら嬉しい!
――そして、50代になって、更年期治療としてホルモン治療薬を終えられたアフターストーリーも希望が持てました。
安斎先生:私が更年期の初期症状で悩んでいたときは、「ホルモン治療薬を飲むなんて!」といわれていた時代でしたが、私が治療を始めたことを知ると友人たちも試してみると言ってくれるようになりました。こういう方法を取ってもいいんだというのが、じわじわと周りに広がったのが本当に嬉しかったんです。
もちろん、体質的に合うあわないはあると思います。それは、ホルモンでの治療法だけでなく、病院だってお医者さんだって同じ。更年期は病気ではないとホルモン治療薬は出さない方針の先生もいらっしゃいますし、逆に欧米では、ホルモン治療薬を閉経後も長く飲まれている方も多いそうですよ。
自分でする対策だってそうですが、死ぬまで元気にいられる方法の選択肢が広がればと思っています。夫のいびきで家庭内別居を考えたり、高価な漢方薬が効かなくなったり、サプリが逆に効きすぎて妙にムラムラしたり……といろいろですが(笑)、大変なときだからこそ私の体験が少しでも役に立って笑ってもらえたらマンガ家冥利につきます!
安斎かなえさん
看護師時代に夜勤中に見かけた雑誌の漫画賞に応募し、入選。22歳で4コマ漫画家としてデビュ――。しばらく看護師との兼業を続けるが25歳で看護師を辞め、現在に至る。趣味は洋裁とレザ――クラフト。現在、月刊漫画誌『本当にあった愉快な話』(竹書房刊)で『あの世の社会科見学』を連載中。
イラスト・マンガ/安斎かなえ 取材/角田ひかる