齋藤 薫さんが語る、理想のフェイスラインを持つ女優とは

いつの時代にも、人々を魅了する人気のフェイスラインのトレンドがあります。令和の今、気になるのは“顎は鋭角なのに、頰はまろやかな”ハイブリッドなフェイスライン。女優の倉科カナさんがまさにこの顔型なのです。齋藤 薫さんの考えるフェイスライン論を伺いました。

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昭和・平成・令和には、私たちを虜にするフェイスラインがある!

「一瓜実に二丸顔」これは“顔型の理想”を語った江戸時代の諺で、瓜実(うりざね)とは今で言うところの面長な卵型、浮世絵美人画はほぼこの瓜実顔である。一方で平安時代には「下ぶくれ」が美しいとされた訳で、まさに時とともに美しい顔型も移りゆくもの。「下ぶくれ」は今や悩みの種なのだから。そしてこうした変遷に大きく影響したのは言うまでもなく装い。洋服が和服に取って変わった時、美人の基準も大きく変わった。

骨格に立体感が、目鼻立ちに華やかさが求められ、昭和に活躍した美人女優は皆そのタイプ。多くがオーバーリップにつけまつ毛をつけ、メークでもハリウッド女優を意識した。でもやがて昭和の後期、“アイドル全盛期”を迎えると、可愛さ甘さの鍵として顎の小ささがマストとなり、理想の顔型は小泉今日子さんに代表される「逆三角形」へ。

実はこの傾向、現在までずっと続いており、逆三角形の顎は美しい顔の絶対条件となっていく。その後、平成という時代を不世出のカリスマとして駆け抜けていった安室奈美恵さんの顎も小さく逆三角形ながら、“小顔”至上主義とも言える新しい美の概念を生み出している。言うまでもなくこれは、顔型を初めて全身のプロポーションの1つと考えるようになった証。どんな顔型が一番スタイルが良く見えるか?までを教えてくれたのだ。

そして令和……気になるのは“顎は鋭角なのに、頰はまろやかな”ハイブリッドなフェイスライン。倉科カナさんのコケティッシュな印象も実はこの顔型から来るものだった。この上なくキュートだけれど、マルチタスクに印象を変えるから、どこかミステリアス。もちろん演技力あってのものだが、ピュアな聖女から悪女まで、両極の役柄をこなせるのは、愛らしい顔に潜む魅惑の奥行きを物語る。重要なのは、これだけ笑顔の似合う顔型はなく、だからこそ逆に笑わない時には魔性のニュアンスが宿ること。古今東西コケティッシュな女優の多くは、この顔型なのだ。

ちなみにこのハイブリッドな顔型は、年齢を重ねても老けて見えない。それどころか個性の煌めきが増していく。シュッとした顎も、ふっくらした頰も、どちらも若さの象徴だから。そこもまたちょっと神秘的な注目すべき顔型、目指せるならば目指してみたい。

「顔型ばかりは変えらない」は昔の話。骨格は変えられなくても、フェイスラインは変えられる。そもそも顔印象は顔の下半分で決まるから、リフトされた逆三角形の顎は、時代を超えて“美しさと若さの鍵”であり続けるはずだが、それすら今や美容医療の定番プログラム。シュッとした顎はスレッド(糸)やハイフで叶えられるし、家庭用美容機器もリフトの決め手、RF機能がめざましく進化を遂げた。今年大豊作と言えるエイジングケアクリームの上向きVリフト効果や“塗るヒアルロン酸注射”のふくらませる効果も、なりたいフェイスラインを叶えるレベルへとパワーアップしている。顔型は自分でデザインできるのだ。

だからこそ、顔型も従来の丸顔、卵型といった単純な分類はもうあまり意味がない上に、フェイスラインはその人その人の個性を饒舌に語るもの。自分の輪郭のどこに魅力の発露があるのか、よく見極めて、人を魅了する美しいラインを見せつけて欲しい。今回の提案に従って、新しい視点でフェイスラインを見つめ直した時、自分も知らない自分の美しさに気がつくことになるはずだから。

文/齋藤薫 美容ジャーナリスト、エッセイスト。美容やコスメ、時代を切り取った女性の人生観を綴ったエッセイが支持を得ている。化粧品開発やコンサルタントなど幅広く活躍中。

《倉科カナさん Profile》 女優。’87年熊本県出身。「SMAティーンズオーディション2005」グランプリ。 ’09年NHK連続テレビ小説「ウェルかめ」でヒロインに抜擢され、以降、映画やドラマなどで活躍中。

《倉科カナさん衣装クレジット》 ニット¥37,400、スカート¥31,900(ともにソブ/フィルム)ピアス¥7,920(ファシアータ/フォーティーン ショールーム)

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