【K-POP推し活入門】K-POPや韓国ドラマにハマると必ず辿り着く古家正亨(ふるや・まさゆき)さんとは?


BTSなど数多くのK-POPアイドルのショーケースやイベント、韓国ドラマの俳優が来日する際のイベントなどで、必ずと言っていいほどMCを務めることで知られている古家正亨さん。スターからもファンからも厚い信頼のある存在として圧倒的な支持を得ている古家さんが今日の肩書きになるまでを綴った初のエッセイが出版されると聞きつけ、出版記念イベントに潜入。古家さんってどんな人?を探るべく、お話を伺って来ました。

今日はステージの主役として登場


この日タワーレコード渋谷店で開催されたイベントには、整理券を求めて朝から列をつくり多くのファンが集結。普段はMCとして、スターよりも目立たないダークトーンの衣装でステージの端に立つため落ち着かないと切り出した古家さん。今日は主役ということで、奥様が選んだという素敵なジャケットで登場しイベントがスタートしました。

ラジオに憧れた少年時代から韓国に出会うまで


北海道北見市出身で、ラジオが大好きで将来DJになることを夢見る少年だった古家さん。果たしていつ、韓国と古家さんが関連してくるのか?それは大学卒業後に留学したカナダで、韓国人のクラスメイトにもらった1枚のCDから人生が変わっていきます。意外な展開に私も驚きましたが、この1枚から韓国の音楽の魅力にハマっていく古家さんの怒涛の立ち回り術が始まっていきます。

「ラジオのDJになりたい」「韓国の音楽を紹介したい」二つの思いを貫いた即動力


カナダで韓国への興味が増し、今度は韓国へ留学を決断。韓国の音楽を自分でラジオで紹介したいという思いが強まるも、帰国後は札幌でワイド番組のDJに。DJのお仕事も紆余曲折あり、チャンスがあれば韓国の音楽を紹介しようと努力を続けて来た古家さん。ときには利益を顧みない行動に出たり、ご縁や出会いを大事にし、タイミングやチャンスを見極め即行動してきたことが徐々に古家さんの評判や信頼へとつながっていきます。そうした一つ一つをこなしてきたことがやがて、現在のMC古家さんという存在になっていったのだそう。

サプライズで韓国のガールズグループBilllieがお祝いに駆け付ける場面も


この日、韓国のガールズグループBilllieがサプライズでお祝いに駆け付けました。突然の人気グループの登場に会場も騒然。歓喜に包まれ、嬉しいサプライズに喜ぶ古家さん。こうした場面からもお人柄がうかがえるよう。MCをする現場では緊張するスターを安心させ、いかに本来の魅力を発揮できるようにお手伝いするかに尽力している古家さん。その数々の技は著書の中でも詳しく触れていますが、見ている側にはそれと気づかせない配慮が満載で、スターやファンから厚い信頼と支持を得ている理由を改めて実感しました。

Mart独占・単独インタビュー 古家さんにお話を伺いました!


「なりたい職業ランキング第一位:古家さん」とSNSでバズる程、憧れの対象にもなっている古家さんに、日頃から気になっていたことを色々お聞きしてきました。

―――ベテランの古家さんでも現場では緊張されることもあったりするのですか?

皆さんが抱くような人前で感じる緊張感はもうないですね。僕の緊張感というのはスターの皆さんが持ってる不安や緊張をいかに現場で感じ取れるかということ。そこをすかさずキャッチできるように緊張感を持って対応しています。

―――現場に入られる前には徹底的なリサーチをすると著書にもありましたが、必ず準備するものとかありますか?

事前に調べることって実は果てしなくあるのですが、そういうときに一番ありがたいのがファン皆さんのSNSなんです。そのタイミングでファンの皆さんがどういうことを知りたいのか、聞きたいのかSNSにヒントがたくさんあって、どういうことをリサーチすればいいのかを考えるとき、とても参考にさせてもらっています。

――― 日々新しいK-POPや韓国ドラマが生まれていますが、古家さんはいつどのように知識をつけていらっしゃるんですか?

音楽は韓国の「Melon(メロン)」という配信サイトに韓国在住時から登録していて、その新曲はひたすら聞いています。でも、家では聞かないと決めているんですよ。

―――それはなぜですか?

K-POPばかりを聞いていると、自分の感性にも仕事にもよくないと思うんです。なので、家ではリラックスタイムも兼ねて自分の好きな曲をジャンルにとらわれず聞いています。最近は日本の80年代~90年代の曲や、同じ時期の洋楽を聞いています。実は最近の楽曲ってその頃のサウンドの要素が多いんですよ。今こういう風に使っているんだ!って紐解いていくのが楽しいですね。

―――ドラマについてはいかがでしょうか?

正直に言うと、コロナ前まではお仕事のリサーチでしか韓国ドラマを見てこなかったんです。それがコロナ禍になり、奥さんと韓国ドラマを見る機会があって「あれ、面白いな!」って見るようになったんです。年を取ったせいなのか、30代の頃に見ていた頃と感覚が変わったんでしょうね。描き方が面白いなってどんどんハマって。だから今は仕事に関係なく見ています。新幹線移動の間はずっと見てますね。いい時代ですよね。

―――ご覧になった作品や、聞いた曲などを普段からネタ帳などに記録してらっしゃったりしてますか?

ネタ帳は無いですね。でも自分のための手帳はあります。スケジュールだけではなくイベントをやった後に後悔したこと失敗したことを記録しています。あとで見返すというよりは、一度書くという作業をすることで覚えておくんです。次に活かせるように。

―――古家さんはリスナーさんなどからよく「スターの香り」を聞かれることが多いと思うのですが、現場ではどんなことを意識的に吸収なさっているんでしょうか?

意外と記憶力がいいので覚えていることも多いのですが、現場では常にアンテナを張っています。ステージでしゃべっている人はもちろんですが、その間の他のメンバーの様子などもしっかりと見ていて、それが次の話の展開につながることが多いんです。なので、あらゆるアンテナを張って集中して見ているからこそ記憶に残っているんでしょうね。

―――最後になりましたが、古家さんがお仕事をなさるうえで大事にしていることって何でしょうか?

聞こえない声とか見えないものに対して耳を傾けることですかね。MCをしていると、本当の話し上手は聞き上手であると、色々な場面で学んできましたが、人の話を聞きだすこと(しゃべってもらうこと)って本当に難しいことなんです。言葉を積極的に話さない人に対しても、放送ならではの間の空く恐怖におびえず、丁寧に耳を傾けて、その人から出てくる思いがけない言葉を拾い聞いてあげることは大事にしようと常に心がけています。

インタビューをしている私の話にも丁寧に耳を傾けて下さった古家さん。いつも拝見しているステージでのMC術には、スターとファンをつなぐパイプ役として、古家さんの徹底した現場準備にかける努力や心がけがあるのだなと思いました。

学生や子どもたちにも読んでほしい1冊

『K-POPバックステージパス』古家正亨著 イースト・プレス刊 定価(本体1500円+税)

『K-POPバックステージパス』古家正亨著 イースト・プレス刊 定価(本体1500円+税)

古家さんの軌跡を読めば、韓国エンタメの日本での発展の歴史もわかるのですが、そこには両国間の国際的な問題にも触れざるを得ないこともしばしば。著書の中で、将来は、日韓におけるプロデューサーでありたいと述べている古家さん。「K-POPファンの皆さんが推しの国をもっと知りたいと、歴史的な両国の問題や、近しいようで違う文化の理解にも興味を持っていってもらえるよう貢献していきたい」と語る古家さんの思いには、この特殊なMCの仕事の奥深さを気づかされることが多々ありました。進路を考えている学生さんにも是非読んでほしいという古家さん。実際、長年1つの興味を貫きとおしたことが、今のお仕事へ自然とカタチになっていった過程には学ぶことが多く、そんな「興味への行動力の大切さ」は、子どもたちにも読ませたい1冊です。今後もあらゆる現場でご活躍する古家さんの様子を拝見するのが楽しみですね。

取材協力/株式会社イースト・プレス、タワーレコード渋谷店
取材・撮影・文/加藤文惠