神山まりあエッセイ⑩「ディーンの虫嫌い大作戦克服大作戦」
VERYモデル神山まりあさんによるエッセイ「笑うママには福来る。」。2019年2月号からスタートした連載がウェブでも読めるようになりました!
ディーンは虫が大嫌いです。
小さな蜘蛛さんを見つけただけで、悲鳴をあげ、私に報告してきます。
ティッシュで優しく外に誘導していると
「マミー、be careful オーケー?」
と蜘蛛を自分の方に落とさないように再度注意してくるレベル。
さあ、どうしたものか。
私も虫は苦手。
男の子ママは虫に強くなると聞いたことがあるけども、
ちょっと、本当に、無理かもしれない。
いつかこの子がカブトムシを欲しいと言ったらどうしよう。
セミを捕まえに行こうと言ったらどうしよう。
そんなことばかりを考えていました。
しかし、
私よりも虫が苦手な息子。
これは母親の責任として、生き物の命を尊ぶ心を教えるべきなのか。
正直嫌だけど、ビビリ息子にさせないためには、
少しずつ虫に慣れさせていかなければ!
まずは公園で見つけた蟻さんからリハビリ開始。
ディーンは興味はあるものの、決して触ろうとしない。
ほら、見て。小さくていっぱい足があって、真っ黒でかわいいね〜
自分の蟻の詳細説明に鳥肌が立つ。
「かわいい?」
うん、かわいいよ。よく見てごらん。
いいぞいいぞ、虫に興味が湧いてきている。
ミーンミンミン ミーンミンミン
沢山のセミも鳴いている。
ほら、聞いて? セミさんが一生懸命鳴いている。
夏が来たよーって教えてくれてるんだよー!
かわいいねー(鳥肌)
「シェミ? かわいい?」
うん、かわいいよ。探してごらん?
蟻と同じ方法でセミにも興味を湧かせる作戦。
お! 運良く目の前に大きなセミがとまっている。
ディーン見てごらん、とセミを指差す。
「マミー! シェミ(セミ)だ!!!!」
セミだねーかわいいねー。棒読みの母。
「かわいいの? 好き?」
うん、かわいいよ。マミー、セミさんだーい好き。
「ハグするの?」
……ん?
「スキーってハグする?」
……セミにハグ?
おいそれは絶対に無理です勘弁してください。
好きの気持ちを表現して、相手をぎゅーって抱きしめようと教育してきた私。
今初めてその教育法を後悔している。
母はセミにお顔をスリスリできません。
不思議そうに私を見つめる息子。
なぜ好きなのに抱きしめないのか、
矛盾を感じているのだろう。
まさか、この私の行動が息子を虫嫌いにさせている
のではないだろうか。
今こそ、母の底力を、見せる時!!!!!
時は2019年7月某日。
梅雨は明けたけれども少し肌寒かったあの日。
母は覚悟を決めました。
「マミー、シェミかわいい?」
かわいいよ、ホーーーーーーラ。
私は目の前にとまっているセミの横すれすれに顔を当てて、
木をギュッとハグしました。
さすがにシェミさんをギュッとできなかった。
「ウヒャヒャヒャッッッヒャヒャヒャ!!!!!!!!!」
お腹を抱えて笑っている息子。
「マミー!!! シェミぎゅーだって!! ギャハハ!!!」
……私は試されている。
お腹を抱えて笑っている息子を横目に、私がなんだか一つ大人になったような感覚。
それ以来、セミを見つけるたびに
「マミー、シェミ、ぎゅーして」
と半笑いで言ってくる息子。
この小さなジャイアンが虫嫌いを克服するのは、
ママのび太をからかった後の話のようです。
【PROFILE】かみやま・まりあ 1987年2月17日生まれ。2011年ミス・ユニバース ジャパングランプリ。2015年結婚、2016年男児出産。インスタグラム@mariakamiyamaも大人気。2018年9月に初めての書籍『神山まりあのガハハ育児語録』(光文社)を刊行。
撮影/イマキイレカオリ ヘア・メーク/TOMIE〈nude.〉 イラスト/natsu yamaguchi 編集/湯本紘子
※VERY2019年11月号「神山まりあの笑うママには福来る。」より。
※掲載の内容は発売当時のものです。