脳科学者が教える、子どもの脳を鍛える5つのおうち遊び
ーー園や学校に行けず、家にこもりっきりの今。おうち生活ですぐ実践できる「子どもの脳を鍛える遊び方」を、10万部超のベストセラー『「賢い子」に育てる究極のコツ』(文響社)の著者であり、8歳の男の子パパでもある脳科学者・瀧靖之先生にインタビュー。未就学児〜小学校低学年くらいまでのお子さんにオススメの遊び方を、教えてもらいました。
家事の合間に5分でもOK!
“親と一緒に遊ぶ”が子どもの脳を育む
実は家の中でできる、子どもの脳を育む遊びはたくさんあります。ポイントは、ただ「〇〇で遊びなさい」と一方的にいうのではなく、「親がそれを楽しんでやっている姿を見せる」こと。
子どもは基本的に模倣=真似をして、色々なことを習得します。
脳には模倣に特化した”ミラーニューロン”という機能があります。社会性に関わる脳の領域で、目の前の他者の動作や行動、さらに表情まで脳に映し出し、自分が実際にやっているかのように脳内で体験し、実際に自分が模倣することで新しいことを学んでいくのです。
課題を課すよりも、お絵かきでも読書でも、親子で一緒に楽しむことで、ミラーニューロンの働きを活性化させ、子どもの脳の発達がいっそう促せます。
また、親子でコミュニケーションをとりながら楽しむことは、親子の愛着形成につながります。幼児期の愛着形成は、その後の精神安定に非常に大切だといわれています。
なにも、無理して始終べったり一緒に遊ぶ必要はありません。家事やリモートワークの合間の10分でも、5分でも、十分に効果はあります!ママ・パパもゆったりした気持ちで、ひととき子どもと楽しく遊んでみましょう。
脳を鍛えるおうち遊び ①
“身近な生きもの”の図鑑を親子で開こう
ーー子どもを賢く育てるには図鑑がいちばん、という瀧先生。特に、今の時期は「親しみのある生きもの」を見るのがおすすめだそう。
私は「賢い子は好奇心が強い子」だと考えています。脳には、自らを変化・成長させていく力があり、これを「可塑性」といいますが、好奇心が強く、探究心が強いほど、この力を高めることができるからです。
子どもたちの好奇心を伸ばしてあげるのに、最も有効なアイテムが図鑑です。いろいろな情報が子どもの好奇心を刺激し、絵や写真があることで、言葉を司る領域だけでなく、空間を認知する領域など複数の脳の領域を同時に活性化できるからです。
特に、今の時期なら、動物館や水族館で目にできる動物や魚、野山で見つかる草花といった図鑑がおすすめです。
そして、今の状況が落ち着いて、外出できるようになったとき、ぜひそれを見せてあげてください。「図鑑(バーチャル)で見ていたものを実際(リアル)に目にする」という体験は、脳にとって大きな刺激になります。子どもの好奇心を押し広げ、知識を定着させるでしょう。
「いつか見にいこうね」なんて話しながら、親子で図鑑をのんびり眺めましょう。
脳を鍛えるおうち遊び②
お絵かきはママ・パパからお題を出してみて!
お絵かきは、手先を細かく使うことで、脳の運動に関わる領域・運動野の発達にプラスの影響を与え、創造性の機能も高めることができる遊びです。好きなものをひたすら描く、想像した自分の世界を描く、何かを見て描く…どれも脳の働きに大変効果的です。
もし、自由に描くことが難しかったり、飽きてきたりしたら、親がお題を出すのもひとつの手。与えられたテーマを元に想像を膨らませたり、自分なりに工夫したりすることは、より高度な脳のトレーニングになります。
あくまで、子どもの感性の赴くままにやらせてあげる、完璧を求めないことが大切なので、「こうしなさい」などの口出しは控えて。描いた絵に対しては、ポジティブな評価をしてあげましょう!
脳を鍛えるおうち遊び③
絵本は“昔ばなし”が◎。隣で親子別の本を読んでもOK
言語野、視覚野、聴覚野など脳のいろいろな部分を刺激できる読み聞かせや読書。今は、読書習慣をつけるのに、いい機会だと思います。読む本は、子どもが興味を持つものなら何でもよいですが、私のオススメは親子でいわゆる「昔ばなし」を読むこと。ストーリーが明快で、「悪いことをすると自分に返ってくる」「努力したら報われる」といった勧善懲悪や因果応報といった世の中の道理を、子どもが自然と学ぶことができます。登場人物の気持ちに寄り添うことで、非認知能力のひとつである共感性も養われます。
小さいお子さんなら、読み聞かせがいいですが、もし一人で本を読める年齢なら、それぞれ好きな本を隣で並んで読むのもOK。子どもには「模倣する」という能力があります。親が読者を楽しむ姿を見せることで、子供は読書に対して興味を持ち、自然と読書習慣が身についていくでしょう。
脳を鍛えるおうち遊び④
週末にオススメ。“一緒に料理”も立派な脳トレに!
ーーおこもり生活の今、子どもと一緒にご飯やおやつを作るママも増えています。瀧先生によると、それもまた脳を鍛えるグッドタイミングだそう!
段取りを考え、手順を踏んで、先を見越しながら、手を動かす。マルチタスクな料理は、脳の成長にとても有効です。
切る・こねる・混ぜるなどの動作は、手先の器用さである巧緻性の向上にもつながりますし、料理を通して親子のコミュニケーションが活性します。餃子でも、ピザでも、お菓子でも、好きなメニューや、自分もちゃんと役割を担えるメニューを選んで、子どもの達成感を満たしてあげる。これは、性別関係なく、脳の発達にすごくいいですね!
脳を鍛えるおうち遊び⑤
すごろく、オセロでコミュニケーション力がUP!
ーーおうち遊び用にと求める家庭も増えている、親子で囲むボードゲームで遊ぶのも、子どもの脳を育てるチャンス!
ボードゲームは、互いにコミュニケーションを取りながらでないと成立しないため、親子の愛着形成につながります。また、勝ち負けがあることで、子どもは「ママ・パパに勝ちたい!」 と、一生懸命、作戦を考えますよね。意欲満々で取り組む熱中体験は、集中力を養うのにすごくいい機会になります。やる気を生み出す神経物質が放出され、脳の神経細胞間のネットワークが育ち、脳のいろいろな部分の発達に有用と考えられます。
サイコロを振ってゴールを目指す「すごろく」などは、小さいうちから楽しめるゲームですね。季節の行事やお買いものなど、子どもが興味を持ちやすいテーマで選ぶと、ゲームに没頭しながら色々なことが自然と学べて、好奇心を伸ばしてやることもできそう。
→子どもが大好きなyoutubeなど“動画コンテンツ”で脳を鍛える遊び方は、次回に続きます!
取材・文/北山えいみ
瀧靖之先生プロフィール
東北大学加齢医学研究所教授。医師。これまでに約16万人の脳画像を読影・解析したデータベースを作成し、脳の発達や加齢のメカニズムを明らかにする研究者として活躍。最新の脳研究と自らの子育て経験をもとに“科学的な子育て法”を提案している。著書『賢い子に育てる究極のコツ』(文響社)は10万部を突破するベストセラーに。テレビ東京「主治医が見つかる診療所」、NHK「NHKスペシャル」「あさイチ」、TBS「駆け込みドクター!」などメディア出演も多数。