脳科学者に聞いた「私たちが、他人をバッシングしてしまう」理由
私たちの日常をザワザワさせる〝うらやましい〟気持ち。リアルな世界だけにとどまらず、ネットの世界でも私たちの心を乱す〝うらやましい〟気持ちについて、その正体や付き合い方を話題の脳科学者、中野信子さんに教えていただきました。
世の中で起きているあの炎上やバッシングも〝うらやましい〟が原因!?
禍の渦中である今は制限が多く、我慢していることも多いからこそ「自分は我慢しているのにあの人はいい思いをしている」という〝うらやましい〟感情が増幅されているのも事実。世の中の炎上案件について中野さんの意見を伺いました。
「世の中のために我慢するいい人」だからそうじゃない人が許せない
世の中のルールを大切にする人ほど勝手なことをする人が許せなくなる
人は「自分を大事にする」という行動と、「みんな(世の中)を大事にする」という行動の2通りのパターンを同時に抱えています。会社のために働いたり、家族のために自分の時間を使ったり、自分たちがちょっとずつ我慢することによって、みんな(世の中)がうまく回っているわけなのですが、その中に一人だけ我慢していない人がいたら、どうでしょう。この人に対して腹が立つ度合いは、自分の我慢の度合いに比例します。つまり、「一人だけ我慢していない人」を見た時に、許せない気持ちが強くなりやすい人は、いつも我慢して自分よりみんな(世の中)を優先している「みんなのために頑張るいい人」ともいえます。「みんなのために頑張るいい人」が、許せないと思った人をバッシングしてしまうという悲しい現象が起こってしまうことがあるのです。
お話をお聞きしたのは…
中野信子さん
脳科学者、医学博士、認知科学者。脳や心理学をテーマに人間社会に生じる事象を科学の視点からわかりやすく解説した著書やコメントが多くの支持を集める。嫉妬する感情について取り上げているヤマザキマリ氏との共著『生贄探し 暴走する脳』(講談社+α新書)をはじめ、著書多数。
イラスト/島 タイガー 取材/加藤みれい 再構成/Bravoworks.Inc