【中学受験㉖】校則を見てみましょう

「実は楽しい中学受験」シリーズ、様々な角度から中学受験を綴っております。今回は中学受験のその先にある中高一貫校の“校則”について綴ってみることにします。


 “ブラック校則”というものが一時期、メディアを賑わせておりました。
これは、今の世の中の常識と照らし合わせると、明らかに厳しすぎであったり、理不尽だと感じる校則・生徒心得、あるいは学校独自のルールの総称として世に広まったものです。

「ブラック校則」という言葉で、取り上げられた校則の代表例には「ツーブロック禁止」「下着の色は白」「靴下の長さは、ひざからくるぶしの3分の1以下の長さ」などがあります。

 これらは学校外の世界から見ると、ともすれば“時代遅れ”に感じられがちですが、その校則が出来たときには「必要」であったからルール化されたのでしょう。
今でも、これら“ブラック校則”を義務化している学校も少なくはないのが現状です。その理由は、単純に見直しの機会がないケース、またはその地域や社会の批判を避けるために存続しているケース、そして「伝統の名のもとに」存在するという3通りのケースがあるように思います。

 私学は百年越えの学校も多いので、当然、その時代時代でアップデートしているのですが、校則のことだけを見ると「生徒の安心安全な教育環境を守る」ということを第1に考えて、ルール化されていることが多いです。

 特に今は電車網が発達しているため、様々な地域から通学が可能。電車を乗り継いで通学してくる生徒も稀ではありません。乗り換えが繁華街駅を経由するということも多いので、学校側というよりも、むしろ保護者の要望を受け入れる形で「帰宅時は文具店と本屋以外は寄り道禁止」というようなルールを定めている学校も沢山あります。

 先日も、校則が厳しいとされる学校の生徒さんに「制服でスタバ」という咎で反省文処分がくだされたという話を聞いたばかりですが、これを妥当と考えるのか、理不尽と考えるのかはご家庭によっても180度変わってくる話になります。

 一方で「生徒の自主性に任せる」という学校も少なくはありません。
こちらは、結果的に高偏差値校が多いのですが、髪の毛を金色に近い形で染め上げた生徒に対して「その色でいることがあなたらしくいられるということなんでしょう?それならば、問題ないですね」と言い切った先生がおられる学校ですとか、学校保護者ではない人の「お宅の生徒で髪を染めている子がいる!」との連絡に「それは、何色の髪色でしょうか?本校には茶だけではなく、赤や緑や青などもおりますもので・・・」と答えたとされる学校も存在しています。

 このように、学校も十人十色ばりに十校十色なのでございますね。

 ただ、私学は経営がかかっていることも事実なので、時代の空気には敏感ですし、意外と柔軟です。
一律に「伝統だからこうだ!」としている学校の方が少ないと感じます。

 ある学校には伝統として「体育祭」ではなく「球技大会」なるものがあったのですが、生徒たちは教師主導の行事ではなく、生徒主導の行事にしたいと考え、時間をかけて、この学校が「当然としていたルール」を変えることに成功しました。

 生徒たちは生徒会を通して、生徒総会に何度も議案をはかり、学校側に「なぜ、そうしたいのか」を理論立てて伝えていったと聞いています。先生方もきちんと聞く耳を持って、議論の末、この伝統行事の運営を生徒主体に変えたそうです。

 このように、生徒側から見て「これはこう変えたい」ということがあれば、自らの責任のもと、賛同者を集め、段階を踏み、粘り強く交渉を続けていくという生徒自身の「自治」を大事にしている学校もあるのです。

 中高一貫校は「中学受験」を経なければ、事実上、通えない学校ですので、裏を返せば「学校を選ぶ」ことが許される受験であります。
 つまりは、ご家庭の方針と我が子の性質に合った学校を最初から選べる自由と権利を持ち合わせているのですね。

 一昔前は保護者の方が入学後に「いまどき携帯禁止なんてあり得ません!」と「禁止」を明文化していた学校にクレームを入れるという騒ぎがそこここで繰り広げられていたものですが(今現在はほとんどの学校で携帯所持が認められております。その所持のルールは学校ごとに違います)学校からすると「そこは了承の上、入ったんじゃないんですか?」ということになるので、下手をすると「モンペ認定」。そこまでいかずとも、先生方を困惑させることになりかねません。
 
 特に私立中高一貫校にお入りになる際は、その学校が創立以来、大切にしている理念と教育方針に共鳴できるかが本当に大事になります。

 中学受験を経て、中高一貫校に行くということは、その学校の「ファンクラブの一員」になるということが見えてくるので、こういう面からもチェックしてみて下さいね。

鳥居りんこ・・・作家、教育・介護ジャーナリスト

2003年、長男との中学受験体験を赤裸々に綴った初の著書「偏差値30からの中学受験合格記」(学研)がベストセラーとなり注目を集める。

その後シリーズ化され、悩める保護者から“中学受験のバイブル”と評され、中学受験を辛かった思い出ではなく、子どもとの絆を感じられ、子育てが楽しくなる内容に、心救われ涙する保護者が続出しました。

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構成/加藤景子 イラスト/村澤綾香

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