【加治屋百合子さん/ヒューストン・バレエ プリンシパル】世界的に活躍するバレリーナに特別インタビュー!

アメリカのヒューストン・バレエでプリンシパルを務めている加治屋百合子さん726日に東京で上演される舞台出演を機に、一時帰国された加治屋さんのスペシャルインタビューが実現。今回の舞台について、また世界的に活躍されている加治屋さんが考えるウェルビーイングについてお聞きしました。

 

――『堀内元 BALLET F

――『堀内元 BALLET FUTURE 2022』は最高峰のバレエとシャズの融合を楽しめる舞台だとか。〝バレエとジャズ〟という組合せが素人には意外に感じられるのですが、今回の舞台の見所を教えてください。
「公演のディレクターの堀内元さんはアメリカのニューヨーク・シティ・バレエで日本人初のプリンシパルになった、日本におけるアメリカンバレエのパイオニア的存在です。私は20年以上アメリカを拠点にしており、現在はヒューストン・バレエでプリンシパルをさせていただいています。私たち二人のバックボーンであるアメリカのバレエはブロードウェイから多くの影響を受けているので、エンターテインメント性が高いと思います。ですから、身近にあるジャズをバレエに取り入れるということを自然に受け入れることができました。バレリーナはクラシカル音楽だけでしか踊らないわけではなく、ダンサーですからジャズを聞いたら踊りたくなります。そんな気持ちを舞台にした!という感じです。
見所はジャズの生演奏で踊ることです! 私はこれまでにもバレエをジャズで踊ったことがありますが、生演奏で踊るのは今回の日本公演が初めてだと思います。生演奏の臨場感をぜひ味わっていただきたいです。また、クラシックとジャズでは音の取り方が違うので、普段の私のダンスとは違う面も見ていただけると思います」

――以前「30代からバレエ人生

――以前「30代からバレエ人生が始まる」とおっしゃっていました。30歳でヒューストン・バレエ・シアターのプリンシパルになられましたが、どんな20代、30代でしたか? また、どんな40代を迎えたいですか?
20代は若さと元気で突っ走っていました! バレエだけでなく人生も()。すごく体に負担がかかることをしているので、30代は体と対話することが多くなりました。でも、舞台経験と人生経験が増えたことで踊っているときに余裕が出るようになったんです。それまではパワーで乗り切っていたのですが、どこでどういうふうに気持ちを伝えるかということが大切になってきて…踊ることについての考え方がまったく変わりました。
振り返ってみると20代はがむしゃらでしたが、若さゆえの良さがあります。30代は心に余裕ができて踊ることの考え方が変わりました。これからは、さらに舞台と人生の経験を積むことで踊りに深みが出せるようにしたいと思います。バレエダンサーは同じ演目を何回も踊ることが多いのですが、踊るごとに演目の解釈やパートナーへの配慮なども変わり、また違う感じ方があるのだろうなと自分のことながら楽しみにしています!
そして、後輩の育成にも力を入れていきたいです。私はバレエダンサーの使命は踊ることだけでなく、自分が得たことを次世代に繋げることも大切だと思っています。私が子供だった頃、現役のダンサーからの一言は、先生から何度も注意された時より心に響いたんです。それに現役の私はポーズを実際に見せることができます。ポーズを見せると小さなバレリーナは『わぁ!』と喜んでくれて…先生からの影響は大きいので、多くの子供たちに新鮮な気持ちの高ぶりを与えたいです。昔から教えることは大好きで、帰国したこの夏もいろいろなところで教える機会を設けています。可能な限り教えていきたいです!」

――今回の公演で個人的に楽しみにていることは?
「コロナ禍でアメリカも日本も1年以上、公演がキャンセルになることが多々ありましたよね。今回、舞台に立つために帰国したわけですが、わかっていたことですけれど自分がどれだけバレエが好きかを再確認することができました。劇場で大好きなバレエを踊って、お客様と特別な瞬間を共有できることを心から楽しみにしています!」

――舞台を観にこられるみなさんにひと言お願いいたします。
「読者の方の中にはバレエを観たことがない方もいらっしゃると思います。観たことがない方には『何を観たらいいの?』『ストーリーがわからなそう』とよく言われますが、芸術は皆さんそれぞれの想像力で解釈してもいいんです。今回の舞台にはストーリーがないのですが、アーティストも各々の解釈で踊っています。皆さんもご自分ならではの新しい発見や楽しみをもって観ていただけたら嬉しいです!」

――CLASSY.で提唱してい

――CLASSY.で提唱している「ウェルビーイング」なライフスタイルは、加治屋さんが生活しているアメリカではより浸透しているのではないかと。ご自身で心がけていることを教えてください。
「プロとして20年踊っていますが、仕事以外のことでもハッピーじゃないと舞台に影響が出るんです。舞台では性格も出ると言われているほどなので、自分がハッピーでなければお客様をハッピーにできるわけがありません。なので、常にハッピーでいることをモットーにしています!
このように考えるようになったのは、コーチの言葉がきっかけです。私達ダンサーは踊りの細かいことに集中して、ここがダメあれがダメと自分を追いつめてしまうことがよくあるんです。そんな時にコーチに『It’s just ballet! 人生ハッピーじゃくてどうするの?』と言われたことがあって…。若い頃はスタジオに缶詰になって練習することが自分のハッピーでしたが、年齢や経験を重ねて、バレエに加えて私が感じる愛があることでハッピーになれると感じられるようになりました。コロナ禍を経てパートナーや親友、同僚など人と人との関係を大切にし、自分の周りを愛で包むことでバレエも人生もよりハッピーになることをつくづく感じました。コロナや世界情勢などいつ何が起こるかわからないですから、ハッピーに生きていないともったいない!と思って日々を過ごしています」

――世界的なプリンシパルとして

――世界的なプリンシパルとしてとてもストイックな生活をされているのでは?と想像しますが、健康や美しさを保つために実践されていることは?
「最近、走ることに目覚めました! バレエ団の中にジムがあるんですが、5キロくらいマシンで走ります。5分歩いて5分走って、を繰り返す感じです。ずっと走るとバレエにはよくない筋肉がついてしまいますから。この話をすると皆さん驚かれるんですが()、バレエと違う筋肉を使うことがリフレッシュになるんです。痛めた股関節の調子も良くなるので、走ることにハマっています()
食生活でいうと30代になって食事の傾向が変わりました。20代は脂っこいものが大好きだったんです。豚の角煮の脂身だけを食べたりしていました()。今はさすがに脂っこい物は避けるようになりましたね。最近のお気に入りはお豆腐です。湯葉も大好きで、ヘルシーだからと食べたいだけ食べています。あとはカリフラワーご飯をよく食べます。カリフラワーを細かく刻み、プチプチした触感の麦ともち米をミックスして炊くんです。とても美味しいので、お勧めです!」

――ストレスやプレッシャーを感じた時の発散法は?
「私の発散法は踊ることと食べることです! ストレスで食べられずに痩せたことはなく、いつも食べています()。私のギルティプレジャーはアイスクリームを食べること! 特に公演中は体が求めるのでハーゲンダッツをよく食べます。いまは日本にしかないクリスピーサンドがお気に入りです。リハーサル中はもう少し脂肪分の低いものにしますが…朝起きてアイスクリームを食べることもあるんです。ナイショにして下さいね()!」

加治屋百合子 Yuriko Kajiya
ヒューストン・バレエ プリンシパル

愛知県出身。10歳の時に上海舞踏学校に留学。ローザンヌ国際バレエコンクールでローザンヌ賞を受賞し、カナダ国立バレエ学校に入学。’01年アメリカン・バレエ・シアターに入団、’07年ソリストに昇格。’14年ヒューストン・バレエに移籍。同年プリンシパルに昇格。’21年芸術選奨文部科学大臣賞受賞。今秋、ヒューストン・バレエ初来日公演にて『白鳥の湖』主演予定。

GEN HORIUCHI BALLET FUTURE 2022
ニューヨーク・シティ・バレエ創始者ジョージ・バランシンより直接薫陶を受けた最後のプリンシパル、現米国セントルイス・バレエ芸術監督の堀内元がバレエ×ジャズの饗宴を開催。ヒューストン・バレエ プリンシパルの加治屋百合子、注目を集めるジャズ・ピアニストの桑原あいトリオをゲストに迎え最高峰のバレエ、ジャズ、そしてその二つが融合する一夜を実現。7月26日(火)メルパルクホール東京

【衣装協力】ディオール(クリスチャン ディオール ☎0120-02-1947)
撮影/木村 敦 取材/よしだなお 構成/中畑有理(CLASSY.編集室)