子どもの本心を聞き出せないでいるシングルマザーです【尾木ママ連載vol.12】
第12回は中高生のお子様を持つシングルマザーの方のお悩みについて伺いました。
A.Nさん(49歳)
高校2年、中学2年の男子二人を持つシングルマザーです。兄は世間一般に言うと優等生タイプ。今まで反抗期らしいこともなく育っています。でもそれは母親がしっかりしていないから甘えられなかったんじゃないかと思っています。父親がいなくて、弟の父親代わりをして、時に私の夫になり友達になり、いつも家族を支えてきて自分の感情を出せずにいるのではと不安です。来年には二人揃って受験です。母子家庭という理由で本当に自分が希望している進路、学校が、彼らの本音なのか心配です。大学は奨学金を借りる予定ですがそれも無理させているのではないかと。そして二人とも、いい人ができたら再婚してもいいよと言ってくれていますが、本心はどう思っているのか聞けないでいます。
尾木ママ’sAnswer
「再婚してもいいよ」と言ってくれるなんて、親思いの素敵なお子さんですね。お母さんはとても心配性なのかしら?お子さんがどんな反応をしても心配してしまうタイプなのかもしれませんね。シングルマザーであることで、十分に目をかけ手をかけてあげられていないのではないか、そのことで、子どもに窮屈な思いをさせてしまっているのではないかと、お母さん自身がどこか自信を持てなくなって、自分を責めてしまっているようです。でも、子どものことになんでも関わっていくのが必ずしも良いわけではありません。もし過干渉になるならば、むしろ子どもの自立は疎外されてしまいます。ひとり親という環境で育った子どもは、自分の置かれている状況をよく理解していて、客観的に捉えることができる自立心が強い場合が多いものです。
長男が弟の父親や夫の代わりをするなどして家族を支えることに懸命で、自分の感情を出せずにいるのではと心配されていますが、長男は父親代わりというよりも、兄弟関係における兄としての役割を果たしているのであって、要するに、長男として自己コントロールがしっかりできているということなのです。一般的に第一子はそういう傾向にあります。ですから、我慢させているととらえるよりも、長男の責任感の強さを頼もしいものと肯定的に受け止めてもいいのではないでしょうか。
一般的にではありますが、ひとり親家庭で育つ子はしっかりしていて実年齢より2歳くらい上に見られるという共通した特徴があります。それは、自分がしっかりしなくてはという気持ちが強くなるためか、責任感や自立心が育ち、物事を広い視野で捉えたり、深く考えたりする力も身についていくからでしょう。そして、もう一つの特徴として、人に親切で優しい子が多いように思います。
私が教師をしていた頃のことを思い返してみても、ひとり親家庭の生徒は、例えば教室の掃除が終わり、皆が帰った後にゴミ箱にゴミが残っていることに気づき、「ぼくが捨ててきます!」というようなことが自然とできる子や、スーパーに買い物に行った時に家の醤油が切れそうなことに気づいてストックを買ってきたり、母親の帰宅までにお米を研いだりととても気が回り、生活力が逞しい子など、クラスの中でも一目置かれ頼りにされるような、精神的な自立や生活面での自立がしっかりできている子が多かった印象がありますね。
進路のことも心配されていますが、きっとお母さんが思うよりも、自分の生きる道に関しても深く考えていると思いますよ。ですから、そこは本人の希望と違うのではと思い悩まずに、お子さんが決めた道を信頼して応援してあげてください。
日本ではひとり親世帯の子どもの大学進学率は全世帯の半分程度という厚生労働省の調査結果も出ています。奨学金と言っても、給付型でなければ利息付きで払わなくてはなりません。2020年4月に新給付型奨学金制度(大学無償化制度)がスタートし、対象となる学生の枠が拡大されるなど改善も進んでいますが、諸外国と比べると奨学金の制度はまだまだ整っていないのが現実です。しかし、子どもは国の宝です。ひとり親世帯の大学進学率の問題だけでなく、給付型の奨学金を充実させるなど、大学生を応援するためのより良い体制を整えることは日本の課題でしょう。
再婚に関してもお子さんの気持ちを憂慮されていますね。低年齢の子どもであれば離婚や再婚には特に十分なケアが必要になりますが、長男は高校2年生で17歳。18歳で成人になるので、精神的にはもうほぼ大人と考えてもいい年齢ですし、中学2年の次男も思春期で子どもの側面もありながら、大人へ一歩ずつ近づいている年齢ですから、“家族を築く”ということを、自分自身の立場や役割も含めて、十分に考えることができる年齢です。ぜひ、お子さんたちとお互いの思いや考えを話しあってみてください。
今はステップファミリーなどの新しい家族の形もたくさんあります。もし母親が再婚したとしても、必ずしも子どもたちは「新しいお父さん」として迎えなくてもいいかもしれません。ただ「新しい家族」を一緒につくっていくというスタンスでもいいと思うのです。離婚や再婚を選択したとしても、子どもに肩身の狭い思いをさせていると思い悩むのではなく、何よりも大事なことは、家族をひとつのチームとして、お互いをリスペクトし、支え合っていく家族関係を子どもと一緒に築いていくことではないでしょうか。
取材/小仲志帆
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