軽く見られているかも?敬語としては不正確な「言葉遣い」5つ

職場ではよく使われている表現でも、実はビジネス敬語としては通用しなかったり、敬語の原理と矛盾していたりする例があります。

これから5つの間違い例をご紹介しますので、うっかり使っていないか、チェックしてみましょう!

 

(1)「お先です」

正解:「お先に失礼いたします」

挨拶を短くして言うのは、相手を軽んじているように受け止められかねません。「あけましておめでとうございます」を「あけおめ」と省略するのは、失礼で、目上の人には送れませんよね?

「お先です」も省略形ですから、「お先に失礼いたします」と正式に言うほうが良いでしょう。「お世話になっております」を「お世話様です」とするのも避けましょう。

なお、「お先でーす」のように文末を伸ばしたり、「お疲れっす」(「お疲れ様です」のくだけた形)のように言ったりする例が見られますが、軽薄に聞こえます。大人の言葉遣いとしては不適切です。

(2)「こちらの日付でよろしかったでしょうか?」

正解:「こちらの日付でよろしいでしょうか?」

この内容で良いかどうかは、今この時点で判断するものです。

「~た」は基本的には過去を意味する助動詞であり、「よろしかった」という表現に違和感を持つ人は多いでしょう。

(3)「お会計の方、1万円になります」

正解:お会計は1万円でございます。

「信号が赤から青になる」というように、変化した結果を表すのが、「(~に)なる」という動詞です。

もし、「2点の金額をあわせまして1万円になります」「クーポンの割引を適用しまして、2千円になります」と言うのであれば、筋が通っているのですが、単に金額を知らせるときに毎回「~になります」と言うのは不自然な表現です。

「こちらが書類になります」「次はお手続きの説明になります」なども、おかしな言い方です。

また、他と比較するわけではないのに、やたらに「~の方」と付けるのも耳障りな表現ですので、気を付けたいですね。

(4)「お名前を頂戴できますか?」

正解:お名前をお聞かせいただけますか?

「お名前を頂戴できますか?」の敬語をもとに戻すと、「お名前をもらえますか?」となり、意味が通らなくなります(その人に名前を付けてもらうとか、その人と同じ名前を名乗らせてもらうとかなら、こういうこともあり得るかもしれませんが……)。

「お名前をお聞きしてもよろしいですか」「お名前をうかがえますか」「お名前をお聞かせくださいませ」
「お名前をご記入ください」などが正確な言い回しです。

(5)「レシートのお返しです」

正解:レシートのお渡しです。

レシートや領収書の場合、客から預かったものを返すわけではありませんね。そのタイミングで新しく発行して渡すわけですから、「領収書のお渡しです」と言えば良いのです。

お釣りとレシートを合わせて渡すケースが多いため、このような言い方が生まれたのだと考えられますが、合わせて渡す場合にも、「〇〇円のお返しと、レシートのお渡しです」と言うのが正式な言い方です。

 

自分はきちんと敬語を使っているつもりなのに、相手に不快感に抱かせてしまっていたら、もったいないことです。

無意識に言ってしまっているフレーズがないか、自己点検してみましょう。

 

文/吉田裕子 
国語講師。塾やカルチャースクールなどで講師を務める他、『テストの花道 ニューベンゼミ』(NHK Eテレ)に国語の専門家として出演するなど、メディアでも活躍中。東京大学教養学部卒。

画像/PIXTA(ピクスタ)(tomos、hanack、Kazpon、Graphs) 参考書籍/吉田裕子『大人の常識として身に付けておきたい 語彙力上達BOOK』(総合法令出版)