【働くMartミセス】専業主婦歴10年の経験が活かされたこととは?

仕事と子育てを両立しているMart世代の女性にフィーチャーする「働くMartミセス」。今回お話を聞かせてくださったのは、子育てをしながらアパレル店舗で働く寺尾沙織さんです。

3人の子どもを必死になって育ててきた約10年を経て、パートでの仕事をスタート。さらにこの秋からはアパレルのショップにも立つようになるなど、生活が一変。そんな今の気持ちを聞きました

【プロフィール】

寺尾沙織さん アパレルブランド「Q♡」の本社と ショップにてパート勤務。
週に2日アパレル本社の倉庫で在庫の検品・発送業務をする傍ら、さらに3日店舗に立ち販売業務も行う。日常の楽しみは趣味のカラオケと、ママ友とのランチ。夫と長女(小 3)、次女(小1)、長男(年中)の 5人家族。

育児に孤軍奮闘した10年 そこで成長した自分に 仕事を通じて持てた誇り

自分の好きなジャンルで働くという充実感で自分の価値を見出した

「店舗でお客様と話をしながら、自分が提案したコーデを気に入ってもらえるときがうれしいですね。自分がお店で働いている価値を実感できるんです」

10 月から週に2、3回「Q♡と いうアパレルの店舗で働いている寺尾さん。
「前の年の 10 月から同社の本社でパート事務として働いていて、会社の雰囲気を知っていたこともあり、アパレル未経験ながらチャレンジできました」

店舗での仕事はお客さんへの声のかけ方やタイミングなど、今は覚えることがたくさん。
「お客様にいつ声をかけるのがいいのか、提案するセットコーデは何がいいかなど毎回悩み、接客の難しさを実感しています。でも好きな仕事なので、悩む気持ちをバネに『頑張ろう!』と前向きに楽しめています」

今は仕事を覚えるために、週末を含め週2、3日店頭でのシフトを入れ、さらに続けている本社での仕事も掛け持ちしているため、それを合わせると仕事は週に4、5日と忙しい。
「仕事の日数は多くなりましたが、子どもが病気になったときや、夏休み・冬休みは休めるなどママに優しい職場で、働きやすいのと、さらに私自身忙しいほうが性に合っていることもあり、今は毎日にハリがあります」

そんななか、働くことで手にしたのは〝、母親ではない自分〞と自信。
「仕事中は母親から一人の女性に戻れるのがいいですね。自分で稼ぐことで自信もつきました

育児でボロボロの自分の転機は 3 人目の出産

大学卒業後は地元・愛媛の銀行に勤務した。
「当時は資格取得のために常に勉強をしなくてはならず、ノルマ達成のために身を削る日々でした」

学生時代から付き合っていた夫は就職して東京へ。その後も遠距離恋愛を続け 25 歳で結婚し、自身も東京に移り、すぐに妊娠。以来専業主婦として3人の子どもを育ててきた。
「ここに来るまでの 10 年間はまっ たく余裕がなく、ボロボロでした」

近くに頼れる親戚がおらず、夫は仕事で帰宅が遅いなかでの「ほぼワンオペ育児」。まさに孤軍奮闘の日々。
「子どもたちは体が弱く、毎週のように病院に通っていました。何とか孤独から脱したくて、頑張って児童館に行ったり、コミュニティサイトでママ友をつくるなど努力していましたね」

そんな寺尾さんにとっての転機は、娘が幼稚園に入り、信頼し合えてお互いの子どもを預けることもできる頼もしいママ友ができたこと。そして大きかったのは3人目の長男が生まれたことだった。

3人目を妊娠したことには自分でも驚きだったが、喜びを実感すると同時に不安が広がった。
「それまでも、2人の娘の母親がちゃんと務まっているのかずっと不安だったんです。うまく回らないイライラのなか、ひどく怒鳴ったりして自分に嫌悪感を抱えることの繰り返しで……。そんな私が 3人も育てられるのかと正直不安でした」

しかし、生んでからは、初めての男の子を育てる楽しさに夢中に。
「3人目にして初めて余裕のある 育児ができました」
上の2人のときは、泣いても周囲に迷惑がかかることばかりが気になって泣きやませることに必死だったが、3人目はスーパーでひっくり返っても、笑顔で対応できるほどの余裕が出た。
「3人目を生んでよかったと心から思えています」

長男の幸せ効果は夫まで変えた。
「それまであまり育児に関わってこなかった夫ですが、何故かスイッチが入ったようで(笑)。帰宅後に子どもの相手をしたり、食器洗いや洗濯をしてくれたりと、イクメンに成長しました(笑)」

働いて実感できた 専業主婦の 10 年で 成長していた自分

そんな寺尾さんの次の転機は、昨年 10 月から仕事を始めたこと。
「自由に使えるお金が欲しかったんです。夫のお金を使うのは気が引けて……。申し訳ない気持ちから高い服は買えないとか、美容院もたまにしか行けないというのが嫌でした」

息子が幼稚園に入り、夏休みが終わったころ「そろそろいいかな」と思い、ネットで見つけたのが今の職場。
「週2日、1日4時間からOKで、かつ職場が自宅の近くという条件に惹かれました」
仕事内容は洋服の検品や店舗への出荷など。1年後、市内のショッピングモールに出店が決まると会社から「店舗に出ないか?」と声をかけられた。
「息子の手が離れ、もう少し働きたいと思っていたまさに〝グッドタイミング〞でうれしかったです」
こうして本社と店舗業務のダブ ルワークが始まった。

そんな寺尾さんは仕事を通じて、自分自身の変化に驚きを感じたそう。
「仕事で多少ミスしても引きずらなかったり、家事がうまく回らなくても、笑顔で切り抜けられるんです。生真面目にすべてを受け止めて苦しんでいた銀行員時代とは、物ごとの受け止め方が変わったと実感します」

育児で思うようにならない日々を過ごし、ママ友との交流からさまざまな考え方を学ぶなか、力の抜きどころを学ぶとともに、気持ちの切り替えができるようになっていたそう。
「専業主婦として頑張ってきたおかげで、今の仕事との両立生活も楽しめているのだと思います」

働くことを通じて、改めて専業主婦として奮闘した 10 年間の成長も実感できているという。
「目指したいのは子どもたちが自慢できるママなんです。仕事を始めて職場からの刺激や、金銭的な余裕からオシャレを楽しむ余裕もできました。『〇〇ちゃんのママきれいだね』と子どもの友達に言われるような、素敵なママを目指したいですね」
寺尾さんの輝くママとしての第 2幕は始まったばかりだ。

【寺尾さんの仕事の日のスケジュール】

6:00 起床・お弁当づくり
6:30 朝食
8:30 息子を幼稚園へ
9:15    出社
15:00 退社
15:30 帰宅
16:00 娘たちを習い事へ
17:00 息子のお迎え
17:30 帰宅・夕食準備
18:00 次女のお迎え
18:30 次女 & 長男と入浴・2 人に夕食
19:00 長女のお迎え
19:30 長女と夕食・家事
21:00 子ども就寝
23:00 就寝

忙しいときこそケーキづくりで 気分をチェンジ


寺尾さんの趣味の一つがお菓子づくり。以前料理教室で教えてもらったシフォンケーキが得意のレパートリー。「オーブンに入れるまではすごく簡単なんです。でも成功したかどうかは、数時間置いたあとでないとわからないので毎回ドキドキです」。フワフワに仕上がったケーキはみんなに喜ばれるため、プレゼントや差し入れにも重宝している。「うまくできたときは、ママ友にあげたり、職場に差し入れに持っていくこともあります」。そんな趣味のケーキづくりが最近では別の形で一役買っている。「『自分自身に余裕がなくなっているな』と感じるときにあえてつくるようにしているんです。ケーキをつくっていると気分も変わって、気持ちが切り替わるのがよくて。何より、子どもたちが喜んで食べてくれる顔を見ると、それまでのイライラした気持ちなんて吹っ飛びますね」

ネイルやボディクリーム 人に見られることを意識するように


アパレルの店舗で働くようになり、人に見られることを意識するようになったという寺尾さん。店舗に立つ前の日の晩はボディクリームを塗ることが日課に。愛用しているのは夫からプレゼントされた「ロクシタン」のもの。「動くとほのかに香るのがちょうどよくて」。さらに、働くようになりしばらくやめていたネイルサロン通いも復活。「手元は自分の目に入るので、きれいになっているとすごく気分が上がるんです。仕事をして自分のお金を手にしたからこそ、できているという部分もあります」。最近では、朝お店に出る格好で長男を幼稚園に送ると、ママ友から「いつもオシャレだね」と声をかけられることも。「人から褒められるとうれしくて。これからもオシャレをもっともっと頑張っていきたいです」

 

夜のうちの洗濯&コーデ 圧力鍋も時短の決め手に


3人の子どもを育てながら週に4、 5日もパートとなると、どれだけ毎日の生活は忙しくなっただろうと思うが、寺尾さんは「生活自体は以前とそれほど変化はない」という。「外で活動するのが好きなので、専業主婦のときから毎日予定をパンパンに入れていたんです(笑)。頭の中でパズルゲームのように予定を組み立てながら生活するくらいが私には心地よくて」。今でも少しでも時間があるときには、子どもと公園に行ったり、娘の習い事の様子を見に行ったりするなど、家でゆっくり家事をする時間はあまりないという。「それでも働くようになりとくに朝は時間がなくなったので、夜のうちに翌日のコーデを決めておいたり、それまで朝にしていた洗濯を夜のうちに済ませるなどしています。料理は圧力鍋を多用し、スピード調理をするようになりました」。よくつくるのは、おでんや野菜の煮込み、魚の煮ものなど。「子どもが魚の梅煮が好きで、圧力鍋だとしっかり味が染みて、限られた時間でもこれまで手間暇かけていた料理が時短で準備できています

撮影/平林直己(BIEI) 取材・文/須賀華子  構成/富田夏子

Mart2020年2月号 働くMartミセス より