宋美玄先生“妊娠糖尿病”って?治療中のライターが聞く

最近増えているという「妊娠糖尿病」。今なんと妊婦の8人に1人が該当するといわれています。妊娠糖尿病になるとどうなる? どんな検査や治療をするの? 自身も経験者でもあるという産婦人科医の宋美玄先生にお話を伺いました。また現在進行形で妊娠糖尿病治療中のライター体験記も一緒にご紹介。

 

妊娠糖尿病とは何ですか? 最近増えているって本当?

「妊娠糖尿病は、妊娠中に初めて発見・発症した糖尿病に至らない糖代謝異常のこと。妊娠中は、胎盤から出るホルモンの働きなどで血糖を下げるインスリンが効きにくい状態になります。そして血糖値が一定の基準を超えてしまうと『妊娠糖尿病』に。最近他国並みに診断基準が厳しくなり、約8人に1人が該当するといわれています」

 

妊娠糖尿病になりやすい人は?

「家族に糖尿病患者がいる、肥満、体重増加が著しい、35歳以上の妊娠、強度の尿糖陽性、巨大児や過剰発育児の分娩経験、以前または現在妊娠高血圧症候群・羊水過多症である場合は特になりやすいといえます。また特に妊娠後半は高血糖になる場合があります」

 

母体や赤ちゃんへどんな影響がある?

「血糖値が高い状態が続くと、赤ちゃんが大きくなりすぎたり、羊水が増えすぎたりして、早産や難産のリスクが増します。お腹の中の赤ちゃんも低酸素の状態になったり、生まれてからも新生児低血糖や呼吸窮迫症候群などになることもあるため、診断されると血糖値をコントロールする必要があります」

 

妊娠糖尿病が疑われる場合、どんな検査をする?

「空腹時血糖値が100を超えた場合、ブドウ糖負荷試験を行います。これは糖分の入った検査用ジュースを飲んで血糖値を測定するもの。この検査で妊娠糖尿病の診断が下ると、自宅で自己血糖測定を行いながら、食事療法や運動療法、薬物療法で血糖値をコントロールしていきます」

 

血糖測定器で自分で血糖を測るそうですが、痛いですか…?

「妊娠糖尿病と診断されたら自己血糖測定します。1回1回がすごく痛いわけではないですが、1日に4回も7回もすると指先が硬くなってきて辛いことは確かです」

 

妊娠8カ月時に妊娠糖尿病と診断された私(ライター)は、朝起きたて・朝食後・昼食後・夕食後の4回血糖値を測定中。ペンのような器具に使い捨ての針をセットして指先に打ち、少しだけにじんだ血を測定器で測ります。私は指の皮が薄いそうで、10段階ある針の穿刺深のうち一番浅い1で済んでいるためなのか、痛みはそこまでではありません。例えるならレーザー脱毛の時の弾かれたような感覚。そして血糖値は毎回メモします。現在妊娠9カ月、後期は特に高血糖になりやすいらしく食事に気をつけても基準値を突破し続け、インスリンを打つことに…。

 

血糖コントロールが不良の場合はインスリンといわれました。どれくらいの値の人がインスリン注射を受けることになりますか?

「目標値は食前100、食後2時間120です。食事だけでコントロールできない場合はインスリンになります。インスリン注射は当たりどころによっては痛いこともありますが、基本的にあまり痛くはありません」

これがインスリン注射のセット。針は東京の町工場で2012年に改良開発された世界で一番極細のものだそうで(蚊の針を目指したらしい)、おかげでちょっとチクッとするかな?くらいで、個人的には痛いところまではいきません。看護師さんも「痛くないよ!」とおっしゃっていました。ただ、血糖測定の針は見えないようになっているのに対し、インスリン注射は針が見えているのが最初は怖くて、打つ時は思い切りが必要でした。これを私(ライター)の場合は、昼ごはん前と夕飯前に太ももに打っています。お腹に打つのが一般的らしいのですが、妊婦で抵抗があるだろうからと太ももに。

 

そもそも、妊娠糖尿病を防ぐ方法はありますか?

「体質、遺伝的要因が大きいですが、もちろん炭水化物のドカ食いや食事の摂りすぎはやめてください」

 

妊娠糖尿病になってしまったら、どんなことに気をつければいいですか?

「炭水化物をいっぺんに摂りすぎない、食べる時は野菜から、自分の血糖値のデータを蓄積し、血糖値の上がりやすい食べ物を把握し気をつける、など。また妊娠糖尿病になった人はそうでない人に比べ7.4倍糖尿病になりやすいといわれます。10年後には30%が、20〜30年後には半数が糖尿病に移行したという報告も。産後に再診断するほか、定期的に検査を続けてください」

 

内科にこの時期通うのが怖いのですが…糖尿病は新型コロナ重症化のリスクといわれますが、妊娠糖尿病もリスクがありますか?

「程度によりますが、妊娠中に初めて糖尿病と診断されたような方なら、末梢血管障害などはおそらくまだないので、コロナウイルス感染症の重症化はそこまで心配しなくていいと思います。赤ちゃんのため、ちゃんと内科にも通ってくださいね」

回答・監修 宋美玄先生

産婦人科医、医学博士。丸の内の森レディースクリニック医院長。カリスマ産婦人科医としてメディアで発信するほか、セックスや性教育に関する著書も多数。

取材・文/有馬美穂