【3分でわかる!】退職もそう遠くない40代からの〝お金のこと〟~⑤「相続問題!」

コロナ禍をきっかけに、子育てしつつもキャリアを重ねてきた40代が、ハッと気づいた、「もう退職までそう遠くない」という現実。この、ふと気づいた不安から企画はスタートしました。

老後の資金、投資、親問題、教育費……悩める40代の「お金」の話を、主だったものを集め、すべて3分以内読み切りでお届けします!


第5回: お金の相続問題が気にかかります。

−−− 親の介護ものしかかり始める40代。そろそろ……

◯ 答えるのは…… 税理士 福田真弓さん

https://www.mayumi-tax.com/

専門は相続と財産の管理承継。お金や家族に振り回されない豊かな暮らしの実現を提案。共著に『身近な人が亡くなった後の手続のすべて』(自由国民社刊)。

『身近な人が亡くなった後の手続のすべて』(自由国民社刊)
まず親の財産状況を知ること。そして親が元気なうちに2つの手続きを済ませること

40代に差しかかると、親が年金生活に移行したり、病気を患ったり、認知症の気配があったりと、急に親に関する心配事が増えるものです。

その際にまず気にかかるのが 「介護費用」ですが、基本的には親自身にかかる費用は、親が自分のお金で賄うというのが大原則

大きな病気にかかってしまった場合でも「高額療養費制度」というものがあり、収入や年金に応じて自己負担額の限度を超えた分は保険から支払われるので、介護費用=子供に関わってくる費用だとシビアに捉えなくてもいいと思います

ただ、介護は相続に大きく影響するのです。親が元気なうちに知っておくべきこと、やっておくべきことを具体的な事例をもとにお話ししたいと思います。

「最近、一人で年金生活をする母親が急激に老いてきた。認知症の症状はまだ始まっていないけれど、物忘れが頻繁にある。介護、預金、土地、財産、相続問題……などいろいろと心配」

よく相談されるのが、このケース。

相続のことを考えた時、とにかく最も大切なのは、親の年金や財産を知っておくということ(受給前は「ねんきん定期便」で確認できます)。

親の財産は介護や生活面、相続に関わってくるので切り出しにくいことですが、例えば 「今、女性の半分以上は90歳まで生きるらしいよ。万が一、介護が必要になった時、どうしようか?」という会話から入るといいかもしれません。

「そうなれば同居してほしい」と返ってきた場合、同居して介護を引き受けた子供に土地を譲りたいという話が出る可能性もあります。そして、その後、きょうだい間で土地や財産の取り分で争いに発展するケースも。

こうした財産相続をめぐる事態を防ぐために重要になってくるのが、親に「遺言書」を書いてもらうこと。相続において遺言の存在は非常に重要で、遺言書があるとないとでは大違いなのです

そのほか、親が生前にできることは、非課税枠を利用した 「生前贈与」、相続税に関しても同様に 「基礎控除」という非課税枠があります。また 「小規模宅地等の特例」や 「寄与分」、「遺留分」に関しては、相続が現実味を帯びてきたら知っておくべきです。

<生前贈与> 相続が起こる前の生前に財産を贈与すること。年間110万円以内の暦年贈与や、最大1,500万円まで非課税になる孫への教育資金の一括贈与などでは贈与税がかかりません。
<相続税の基礎控除> 相続税の非課税枠のこと。遺産全体のうち、3,000万円+(600万円×法定相続人の数)が非課税に。両親と子供2人の家庭で父が死亡した場合の基礎控除額は4,800万円。
<小規模宅地等の特例> 亡くなった人の自宅の土地を要件を満たす親族が相続した場合、土地評価額が8割引きになる特例。相続税は現金一括払いが原則なので、土地を売らずにすむようこの特例がある。
<寄与分> 親の療養看護などをして、親の財産の維持増加に貢献した相続人の取り分を他の相続人より増やす制度。よほどの貢献をした場合に限られるので、認められるケースは少ない。
<遺留分> 親は遺言を書けば、財産を誰にでも自由な割合で残せるが、配偶者や子供には遺留分という最低限の遺産の取り分の権利があります。遺留分に配慮すると将来、争いが起きにくい。

親が認知症になり、銀行が認知症と判断すれば口座が凍結されます。

いったん凍結されると、口座からお金が引き出せなくなるので、その場合には、成年後見人選任の申し立てを家庭裁判所にしなくてはならなくなり、以後はたとえ親自身の介護費用に充てるお金だとしても、自由に管理や運用ができなくなってしまいます

そうなる前に、つまり親の判断能力があるうちに、任意後見制度や銀行で代理人出金システムの手続きを通じて、親の意思で財産などの管理をする任意後見人を決めておくと、親が認知症になった後の財産管理に困ることがなくなります。

ここまでが今、40代が考えておくべきこと。相続に関しては複雑な部分がたくさんあります。その先はやはり専門家に相談するのが間違いない方法といえるでしょう。

取材/北野法子、小仲志帆 イラスト/Grace Lee

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