女性のがん死亡数1位「大腸がん」、 予防する方法ってあるの??

女性のがんといえば「乳がん」の関心が高まっていますが、女性のがん死亡数の1位は実は「大腸がん」。

命を守るために大切な情報の【後編】をお伝えします。
>>【前編】はこちら

今回も東京医科歯科大学医学部附属病院 消化器化学療法外科/臨床試験管理センター准教授・石黒めぐみ先生に、意外と知らない大腸がんの現状や検査方法、さらには予防法があるのか……などをお伺いしました。


大腸がんって「予防」できるの?

~ リスクを高めるものを把握して、バランスよい食事を ~

【前編】では、大腸がんは早期発見が何よりも大事で、早期発見のためには「検診」しかないというお話を伺いました。

では、そもそも大腸がんになるのを予防する方法はあるのでしょうか?

残念ながら、がんを未然に防ぐことはできません。“バランスよく食べて、適度に運動する”といった健康的な生活をすることが一番です。しかし、2015年10月にWHOが『加工肉ががんを引き起こす可能性について』という警告を出して話題になりました」(石黒先生)

Ⓒ石黒先生

Ⓒ石黒先生

「しかし、WHO警告のすぐ後に、国立がん研究センターから、日本人が摂取する範囲のレベルであれば、大きな影響はないというアナウンスが出されました。過剰な心配はご無用です」(石黒先生)

日本人が摂取するレベルにおいては、大きな心配はないとのことですが、【前編】で大腸がんは先進国や高脂肪食の国で多いという情報をお伝えしました。食事には留意する必要がありそうです。

Ⓒ石黒先生

「たんぱく質を摂るには、お肉を食べることも必要。上記のように赤身の肉(牛・豚・羊)、加工肉(ベーコン・ソーセージなど)は大腸がんのリスクを増やすといわれていますので、気になる方は鶏肉もしくは魚がいいですね。そのほか“食物繊維”に関してはリスクを下げると言われ研究されていますが、リスクを下げるために必要な摂取量などの詳細はわかっていません。“果物”は糖分が多いので、摂りすぎると今度はほかの病気が心配です。そういった意味ではバランスよくいただくことが一番です」。(石黒先生)

~ 『〇〇ってどうなの?』というママたちの疑問を石黒先生が解決! ~

40代になると、何気ないママたちの会話の中にもたびたび登場する病気の話。大腸がんに関連したママたちの疑問4つに、石黒先生が答えてくださいました。

Q.1 産婦人科などと違って、消化器内科は男性の医師が多そう。恥ずかしいから女性の医師がいいんですけど、実際あまりいらっしゃらないですか?

A. 男性の医師の方が多いのは事実ですが、女性の医師が稀ということはないです。お尻を見せるのは抵抗があるかもしれませんが、こちらはぜんぜん気にしていないですよ(笑)。「この日の検査担当医は女医です」とホームページに載せている病院もありますので、確認してみるとよいでしょう。もし、掲載がなければ電話で問い合わせても大丈夫ですよ。

Q.2 「痔だと思っていたらがんだった」という話を聞いたことがあります。痔とがんの出血は似ているんですか?

A. 大腸は身長くらい(約1.7m)の長さがあるのですが、がんのできる場所によって、症状の出にくさや、どんな症状が出るかが変わってきます。

基本的に痔の出血というのは出口のすぐそば(肛門)から出ますので「赤い血」です。そのため同じように出口に近く、赤い血が出る直腸がんとは紛らわしいときもあります。

痔の出血でも便潜血検査にひっかかりますが、「痔だから」と安心して何年も精密検査を受けないのはNG。自己判断せず、精密検査の必要性について、まずは医師に相談しましょう。

Q.3 乳がんは検診と検診の間で急に大きくなることもあると聞きますが、大腸がんは急激に大きくなることはないのでしょうか?

A. 基本的にがんというのは、年単位で大きくなっていくものなので、すごく早期だったものが1年後に手がつけられなくなってしまうというようなことは、まずありません。そのため、毎年検診を受けることが本当に大切です。現在の大腸がん検診(便潜血検査)の受診率は全国で39.1%。この10年でずいぶん受診率は上がりましたが、この先も皆さんに受けていただけることを願っています。

Q.4 精密検査を受けるときは、どんな病院に行った方がよいですか?

A. 以下のようなところをおすすめします。大腸癌研究会のホームページに研究会に参加している医療機関の一覧がのっていますので、そちらを参考にしていただくのもよいと思います。
Ⓒ石黒先生


<石黒先生からSTORY世代に伝えたいこと>

最後に石黒先生から、STORY世代の私たちにメッセージをいただきました。

「検診にひっかかった後、皆さんが100%精密検査を受けてくれるかといえば、残念ながらそうではありません。日常の忙しさや『お尻からの検査は嫌だな』『恥ずかしい』といった気持ちなど理由は様々だと思いますが、検診を受けたことを無駄にしないためにも、便潜血検査で陽性と判定されたら、必ず精密検査を受けてほしいと思います」(石黒先生)

乳がんはピンクリボンですが、大腸がんはブルーリボンが目印。

「認定NPO法人 キャンサーネットジャパン」はがん医療に関する情報を発信し、毎年3月にはブルーリボンキャンペーンのイベントも行っています。(2020年3月はコロナウイルス感染拡大のため中止)
https://www.cancernet.jp/brc/

例年、内視鏡や手術に使う機器なども展示されていて、実際に触ることもできるため、このようなイベントで情報収集するのもよいかもしれません。

自分のために、家族のために、健康第一で過ごしたいですね!

○ お聞きしたのは…

石黒めぐみ先生
石黒めぐみ先生
東京医科歯科大学医学部附属病院 消化器化学療法外科/臨床試験管理センター准教授。平成10年東京医科歯科大学医学部卒業。同大第二外科入局後、同大大学院腫瘍外科学特任助教、同大学院応用腫瘍学講座准教授などを経て現職。大腸癌研究会「大腸癌治療ガイドライン」作成委員。平成30年10月より独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)出向中。抗がん剤の新薬審査に携わる。著書に『「大腸がん」と言われたら』(保健同人社)、『大腸がんを生きるガイド』(日経BP社)など。

取材/篠原亜由美

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