あなたがあなたを「乳がん」から守るために覚えておきたいこと【40代からがんを考える】

乳がんのセルフチェックが推奨される理由は、卵巣や子宮と違い、乳房は自分の目で見て触れられるから

現在、乳がんの罹患率は9人に1人と言われていますが(※’17年国立がん研究センターのデータに基づく)、たとえそのひとりになっても、早期発見が叶えば命を落とす30%には入らずにすむかもしれないのです。

見て触って自分でチェックできる唯一のがんだから…自分で自分を「乳がん」からまもるために、何ができるのか。聖路加国際病院副院長 山内英子さんにお話を伺いました。

○ 山内英子さん(聖路加国際病院副院長、 ブレストセンター長、乳腺外科部長)

フロリダ各大学の研究所等で行った乳がんの研究や臨床経験を活かして、帰国後は日本の乳がん患者さんとともに歩む。患者さんに対するコミットメントから身に着ける物はすべてピンク!


ブレスト・アウェアネス…自分の乳房を「意識する」。 家族に罹患歴があれば遺伝子検査も有効です

日本では現在、年間9万人以上が乳がんに罹ると言われ、罹患率は女性のがんでトップ。年代別で見ると40 ~50 代がいちばん多くなっています。

乳がんの発症には遺伝要因と環境要因が絡んでいて、環境要因は早い初経や遅い閉経、出産回数、初産年齢など女性ホルモン(エストロゲン)のバランスに関わるさまざまなことが指摘されていますが、食生活の欧米化も注意すべき点です。なぜなら欧米の罹患年齢を見ると60~70代が最多。つまり今後は病気も欧米化していくことが考えられるので、40代から先はずっと気をつけていく必要があります。

<検診は 40 歳から2年に一度のマンモグラフィが基本>

平成28年に厚生労働省が「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」を一部改正し、視触診は推奨しないとしたことで、現在は「40歳から2年に一度のマンモグラフィ検査」を基本としています。

そう聞くと「エコー(超音波)検査は?」「デンスブレスト(高濃度乳房)の人は乳がんになりやすいと聞いたけどこれで大丈夫?」「がん家系だから心配」など疑問や不安を感じる方がいらっしゃるかもしれません。

アジア人に多いと言われるデンスブレストですが、乳がんの発症に関するリスクについては結論が出ていません。ただしマンモグラフィでははっきり診断できないことがあるため、エコー検査と併用がよいとも言われています

「がん家系」については、乳がん患者さん10人のうち約2人は家族歴があると言われているように注意が必要です。特に若い年齢で乳がんになられた方が親族にいる場合は、40歳を待たずに検診に行かれたほうがよいでしょう

数年前、アンジェリーナ・ジョリーさんが遺伝的リスクのために予防的に乳房切除したというニュースが話題になりましたが、今は医学の進歩によって発症リスクを高める遺伝子が具体的にわかってきていますので、家族歴がある方は遺伝子検査も有効な方法です。

ただひとつ忘れてはいけないのは、検診はメリットとともに、被曝や過度な精神的ストレスなどのデメリットも伴うこと。頻繁に受ければよいというわけではありませんので、基本の検診をベースに、自身のリスクを考えて正しく受けてください

<セルフチェックは月に一度、 同じ時期に同じ方法で>

検診と検診の間に急に大きくなるしこりもあるため、ブレスト・アウェアネスが大事です。

ご自分の乳房を意識してセルフチェックを「毎月、月経後に同じ方法で行う」こと。月経前と後では胸の状態が全く違いますので、必ず胸が張っていない月経後に確認してください。

気まぐれも頻回もダメ。下のチェック項目や方法を参考に胸の様子を把握し、もしも「先月と違う」ということがあればすぐに病院に来てください。乳がんは、唯一自分で見て触って発見できる可能性があるがん。あなたを守るのはあなた自身です

撮影/西あかり 取材・文/篠原亜由美  ※情報は2020年10月号掲載時のものです。

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