共学派ママが気になる「都立中御三家」本当のところ

2005年の都立中高一貫校誕生とその後の躍進により、中学受験のシーンは徐々に変化してきています。首都圏では名門中高=男女別学が多いところ、新たに台頭してきた難関都立中高一貫校はいずれも「共学」。共学で学ばせたい、いわゆる“詰め込み”ではない受験勉強をさせたい…などさまざまな理由で都立中高一貫校を志望するケースが増えているようです。また、これまで少なかった私立・都立併願希望もじわりと増加。実際、“都立”の今はどうなっているのか、お話を聞きました。

 

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〈話を聞いたのは〉
「塾・進学塾のena」
久保杉崇史さん

「都立も私立も」というスローガンのもと、2020年度入試では都立中総定員1,600名に対し822名の合格者を輩出する、〝都立に強い〟塾。私立併願者に対しても、オプション授業を用意し対応する。東京23区内だけでも132校展開。

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Combined junior and senior high school

都立中高一貫校が台頭してきた理由とは?

 

2005年、東京に公立の中高一貫校が設置されて以降、現在までに11校の都立中高一貫校が誕生しました。当時の石原都政により都立校改革の効果が現れはじめ、人気が復活。白鷗が、初の卒業生で東京大学に5名輩出するなど、リーマンショック以降の不景気もあり、「無料」の公立一貫校の人気に火がついたと言えるでしょう。

 

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都立中高一貫校を目指すメリットは?

 

私立中高一貫であれば800万円ほどかかるところ、公立であれば無料(実際は諸経費などで360万円ほど)という経済的なメリットがまずあります。また私立と同様ですが中高一貫なので、6年間通してカリキュラムを組めるため、単元もブツ切りにならず学べます。入試問題は、いわゆる詰め込みになりがちなインプット型の傾向にある私立の問題と比べ、公立はアウトプット型といわれる思考力型。教育改革の内容に沿っており、思考力、情報処理力などを伸ばすための勉強を受験対策としてできます。これは高校・大学入試でも問われる力で、もし中学で受験に落ちても次に生かせると捉えられています。

 

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教育内容の特色は?

 

教育理念は「リーダーの育成」。英数を中心に少人数・習熟度別授業を行ったり、土曜に予備講座や補習が組まれることも。また都立はどこもグローバル教育に力を入れており、とても恵まれた教育カリキュラム。高校で留学させる学校も多く、地域密着のキャリアデザイン教育を行うなど、学校ごとに特色があります。学校ごとの公募制での教員採用があるため、やる気がある先生が集まってくる印象です。

 

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「都立中御三家」って?

 

小石川・武蔵・両国と言われています。今は小石川が大学実績もトップを走っており、開成などを蹴って入学するケースも。都立はどこもグローバル教育に力を入れていたり、放課後の補習も盛んで、先生から「塾に行かなくてもいい」と言われていると聞きます。御三家以外も軒並み難関校です。

 

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受験日や受験倍率は?

 

受験日は2月3日、1校しか受けられません。最初の頃は記念受験を含めた都立専願も多かったのですが、難関校の位置づけが定着してからは、塾などで対策した子のみが受けるようになり、倍率も比較的落ち着いてきました。しかし相変わらず5〜7倍が常で、特に、高校の募集停止などで受けられる学校が減っている東京の女子は高倍率の傾向です。

 

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都立を受ける子と親の傾向は?

 

個人的に私立と比べ、肩の力の抜けた保護者が多いように感じます。私立の名門・伝統校は男女別学が多いですが、都立はすべて共学なのでそれをよしとする方も。私立に対し、詰め込み教育のイメージを持っている保護者が選んでいるとも思います。都立向きの子は、一概には言えないですが、自分できちんと物を考えて話せる大人っぽい子が多い印象です。

 

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小学校からの報告書はどの程度合否に影響する?

 

東京では報告書=「あゆみ」ですが、小5・小6の記録が記載されます。都立の場合配点は報告書が約20%で、適性検査が約80%。よくできる・できる・もう少しという3段階評価を、学校ごとに配点しています。これらの観点別評価を、科目ごとに3、2、1と点数化して報告書を作成。ある学校の場合「3」が25点、「2」が20点、「1」が5点という配点です。「1」をたくさん取るような子だと、都立受験は厳しいかもしれません。クラブ活動や出席日数は点数化されません。高校では内申点が3割になるところ、中学では約2割で割合が小さく、真面目に学校生活を送り、勉強もしているなら報告書についてはそこまで心配いらないでしょう。

 

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入試問題、私立中学との違いは? 併願は可能?

 

「入学試験」とは呼ばず、「適性検査」と称されます。指導要領内で、身の回りの事象や社会問題を題材に、自分で考え、文章や図などで表現する問題が中心。科目横断型で、総合的な学力と問題解決能力が求められます。都立では共同問題と独自問題を組み合わせて出題され、学校により配点の比率が違います。作文もあり、型にはまらない内容で都立専用に対策をしていないとなかなか難しいと言えます。一方、大学入試改革の影響で、私立の問題がだんだん都立に寄ってきている傾向に。今後、併願しやすくなるのではないでしょうか。

 

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イラスト/塩川いづみ 取材・文/有馬美穂 編集/羽城麻子
VERY NAVY 5月号『“都立中御三家”という言葉も生まれた共学派が気になる「都立中高一貫校」という選択肢』から 
詳しくは2020年4/7発売VERY NAVY 5月号に掲載しています。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。