子離れしにくい時代、「寮生活」のメリットデメリット
NAVY世代が気になる「思春期問題」。子どもの自立を願う一方で、ついつい世話を焼いてしまうママも多いのでは。そんななか改めて注目されているのが寮生活。自立面でのメリットも多い一方で、「大学で親元を離れるならこんなに思い悩まないかも」という声も。その実態を取材しました。
花まる学習会 高濱正伸先生インタビュー
思春期のママ過干渉問題。
私は寮生活をおすすめします
数年前から寮生活を送る小・中学校の価値は上がっています。その魅力のひとつは〝親元を離れることができる〟こと。11〜18歳の思春期は子ども自身が尊敬できる親以外の第三者=〝外の師匠〟の存在が必要。しかし今は母子が密着しがち。とくに母親が思春期の息子に口出しし、かまいすぎて離れられない状態が問題になっています。その点、寮生活は親元を離れ、自分自身で考えて身の回りのことをしたり、時には先輩に頼ったりしながら生活をします。また、都心から離れ自然の中で過ごすと心が安定するのは間違いありません。ただ離れている分、帰ってきた時に子どもから学校の様子をヒアリングすることは大事です。寮を選択肢の一つに入れるにしろ、学校選びは親の教育方針ありき。寮生活を選ぶ際はぜひ通っている人のリアルな話を聞いて下さい。
寮生活、本当のところ。
通わせてみた家族の体験談⬇︎
中学1年からラ・サール学園
Tさん 男の子のママ
場所:鹿児島県 寮生活:中学1〜3年は共同部屋(8人)、高校1〜3年は個室 寮費:¥73,000/月(中学校) 寮生:生徒数の約3/4
最後まで寮生活を迷っていた私に「ママ、心配しないで」。私よりも先に息子が親離れしました
合格してすぐ子どもは寮生活を希望していましたが、私は息子を手放したくなくて迷いました。もともと夫は寮生活に賛成。通っていた塾からも集団生活をした方が今後の長い人生のためになると言われ、思い切って行かせることに。事前に家でシーツのつけ方を練習させました。しばらく私は寂しくて泣く日々。息子に電話で「ママ、心配しないで、楽しくやってるから」と言われてまた泣きました。ファミリースピリットを大切にする学校なので、息子にもその気持ちが育ち、義母や妹の誕生日にはお祝いの手紙が送られてきたり、電話で「通わせてくれてありがとう」と感謝の言葉を伝えてくれるようになりました。スマホ禁止なので普段はよくも悪くも勉強と部活のみ。自主的に勉強するようになり、広々としたグラウンドでのびのびと体を動かし、規則正しい生活を送れるのは通わせてよかったと思います。気になるのは日々の変化に気づけないこと。サイズアウトしている靴をずっと履いてたときには動揺しました。恋愛経験がなさそうで今後大丈夫かなと思ったりもします。伝統校なので先輩ママのネットワークがあり、情報共有できるのも助かっています。私が寂しいのはまだ克服できませんが、次に会えるのを楽しみにしながら成長と共に少しずつ子離れ中です。
[ メリット ]
余計な雑音なく勉強と部活に打ち込める
[ デメリット ]
子どもの日々の変化に気づけない
小学校3年から南アルプス子どもの村
小学校・中学校
Sさん 女の子のママ
場所:山梨県 寮生活:週末帰宅、小学1〜6年 男女別(〜8人)、中学1〜3年 共同部屋(〜5人) 学費:約¥1,290,000/年(教材費、食費、施設拡充費含む) 寮生:生徒数の約1/2(年次による)
小3からの寮生活。最初は「ママも寂しい」とは言わないよう注意しました
受験して私立小学校に入学したものの、宿題の多さについていけなかったり娘の性格と合わず転校を考えた矢先に見つけた学校でした。子どもの良さを伸ばして自立してほしいという我が家の教育方針から上の子はインターナショナルスクールに。教育方針と近いこの学校の理念に共感し、娘を通わせたいと思いましたが、寮に懸念がありました。相談したところ寮生活も勉強の一つと言われ、トライしようと3年生から転入。最初は毎日のように「寂しい」と電話が。ママも寂しいよと言わないようにとのアドバイスがあったので「そうだね」と繰り返しました。すると半年すぎると電話は用件のみに。生活のリズムもでき友達との時間が楽しくなったようです。子どもを一個人として扱い、信頼し自主性に任せる学校なので、週末ごとに帰宅するたびに安心し生活できているのは感じますし、縦割り教育なので生徒がきょうだいのように育ち、年齢関係なく友達がいます。また感心するほど身の回りのことは自分でやるように。ただあまり話さない性格もあり、学校や寮の様子がよくわかりません。勉強のでき具合が気になり、帰宅すると夫婦で勉強を教えていたら親子関係が険悪になったこともありましたが、普段は離れているのでガミガミ言うこともなく、親子共にストレスフリーです。
[ メリット ]
子ども自身で解決する力が身につく
[ デメリット ]
本人が語らないので学校の様子がわからない
中学1年からT学園(仮名)
Aさん 男の子のママ
中高一貫の男子校 寮生活:2〜14人部屋 寮費:約¥70,000〜¥80,000寮生:年次による
念願の寮生活も「僕、塾に通いたい」との言葉で自主退学を決意
シングルマザーで正社員として働いていたので、小学生までは実家の近くに住み母に助けてもらっていました。中学校を考えるにあたり、母子家庭で息子とべったりは年齢的にも不自然だと思ったのと父性が必要と感じたこと、留守番の時間が長くなるのもあり寮のある学校を第一志望に選択。自立心や協調性を身につけてほしいという思いもありました。頻度は自由で、月に2、3回は帰宅。帰るたびに家事能力も上がり、大人びた発言にたくましさを感じました。学校に行ったときにベッドで友達と寝転がりながら遊んでいるのを見て、一人っ子にとってはいい環境だと感じました。ですが、コロナの影響で休校になった際、試しに模試を受けさせてみたら想像以上に基礎ができていないことが発覚。息子が「周りに流されて勉強ができない、塾に行きたい」と言ったのもあり、学校をやめることを決意。1年間離れて生活したことで母子にいい距離感ができたこと、一人で家事や身の回りのことができるようになったこともこの決断をした理由でした。もともと協調性がある方でしたが、寮生活を通じてますます強化され、公立中学校への転校後もあっという間になじんで楽しく学校も塾も通っています。独り立ちまであと少し、最後の母子時間と思って、過ごしています。
[ メリット ]
協調性、自立の精神が身につく
[ デメリット ]
周囲に流され学習習慣が身につかなかった
1993年「メシが食える大人に育てる」という理念のもと、年中〜小学生対象の学習塾「花まる学習会」を設立。思考力、作文・読書、野外体験を重視しながら、親向けの講演会も行う(現在はオンラインでも実施)。『伸び続ける子が育つお母さんの習慣』『算数脳パズルなぞぺ〜』シリーズなど、著書多数。
イラスト/STOMACHACHE. 取材・文/立花あゆ 編集/羽城麻子
VERY NAVY 12月号『思春期に親と離れることがプラスになることも子離れしにくい時代、寮生活という選択』から
詳しくは2020年11/7発売VERY NAVY 12月号に掲載しています。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。