【LIFESTYLE】料理家 こてらみやの「ベランダと暮らす」⑧

今回は、書きそびれていた「腊肉(ラーロウ)」 についてのお話です。

 ラーロウ とは、冬の冷たく乾燥した時季に、四川や広州など中国各地で作られる干し肉のこと。塩のみで味付けして燻製にしたものや、醤油とスパイスで漬け込んから、燻製にはせずにカチカチになるまで干したものなど、その製法は地域や家ごとに違いがあるようです。

 我が家のラーロウ は、下味に漬けてベランダで干すだけの簡単バージョン。
常温での長期保存を目的としないので、干すのも10日ほどと短く、燻製にもしません。

美味しく仕上げるには、とにかく冷たく乾燥した風に当てること。

 では、ラーロウの作り方について簡単にご紹介しますね。

まず、豚バラ肉のブロックを味が染み込みやすいように4〜5cm幅に切り、肉500gに対して、醤油大さじ5、紹興酒大さじ2、砂糖小さじ1、潰したにんにくとしょうがを1/2かけずつ、八角、シナモン各1かけ、花椒小さじ1/2、赤唐辛子1本、長ネギの青い部分10cmと共にポリ袋に入れて口を閉じ、冷蔵庫で3日間ほど漬け込みます。漬け込んでいる間は肉に味が入りやすいように毎日、上下をひっくり返したり、モミモミしてくださいね。

 いろいろなスパイスを用意するのが億劫であれば、中国のミックススパイス「五香粉(ウーシャンフェン)」を使ってもいいと思います。また、中国テイストが多少薄れますが、にんにくとしょうが、赤唐辛子だけでも美味しいですよ。

 

 早速、干していきましょう。

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肉の表面についたスパイスや水分を厚手のペーパータオルで拭き取り、ベランダ干しの開始です。醤油が染みて肉の水分が抜けているから、すでに数日干したように見えますね。

 

鳥や虫が気になる人は干し網などを使うといいと思いますが、わたしはいつもバーベキュー用の串に刺してから、棕梠縄に串の両端をひっかけて干しています。カラスに狙われるかも…と思うのですが、なぜか一度も食べられたことはありません(笑)。

干している間は、とにかく雨に当てないこと。そして、気温が上がりすぎる日は、ラップで包んだりせずにむきだしのまま冷蔵庫に入れて乾燥させましょう。

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干す日数は1週間〜10日ほどです。表面がかっちりとしてきて、ぎゅっと押すと中に少し柔らかさが残るくらいがいいでしょう。本格的なラーロウは、常温で保存できるように長期間燻製にかけたり、カチカチになるまで干したりするようですが、わたしは気軽に使えるように、10日間干しました。

 どれどれ…と切ってみると、

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余分な水分が抜けているので、サクサクと包丁が入ります。赤みが濃くて美味しそう。

 

 さて、お待ちかねのラーロウの食べ方です。

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4mmほどの厚みに切ったラーロウをこんがりと焼き、白髪ネギとパクチー、お好みで豆板醤を添えていただきます。腸詰と同じですね。

 豚肉の旨味とスパイスの香りが絶妙! ビールが進みます。
こんなに簡単でおいしいと、手間のかかる腸詰を作らなくなっちゃうかも…(笑)。

 続いては、ごはんものです。

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手でバリバリに割った干し椎茸と薄切りにしたラーロウをお鍋に入れ、お米1合に対して大さじ1のお醤油とお酒、普段通りの水加減にして30分ほど浸水させてから炊き上げます。食べるときにしょうがの千切りをたっぷり加えて混ぜると香りが良くて美味しいですよ。

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このごはんには、青菜の炒め物がよく合いますので、ぜひご一緒に!

ラーロウは、下味がついていて旨味が濃厚。切りやすくて保存が効くので重宝します。干し上がったラーロウはラップでぴったりと包んで冷蔵庫で保存しすれば、1ヶ月ほど持ちますよ。

風が冷たいうちにもう1回ぐらい仕込んで、酸っぱくなった白菜のお漬物と春雨を入れた土鍋煮込みを作りたいと思います。みなさまも寒さが残る今のうちにぜひ!

【PROFILE】

こてらみや
料理家。毎日食べたくなるような、素材の持ち味を生かしたシンプルな料理を得意とする。休日の楽しみは、ベランダで収穫した果物やハーブを使ってびん詰めを仕込むこと。著書に「魔法のびん詰め」(三笠書房)など。instagramアカウントは @osarumonkey

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