【東京アートパトロール】OKETA COLLECTION: 4G
長年、ファッションビジネスに携わってきた桶田俊二・聖子夫妻が2000年代から始めたプライベートコレクションが「OKETA COLLECTION」。
骨董の収集から始まり、2010年に草間彌生の作品との出会いをきっかけに現代美術へのコレクションへと舵を切り、今や時代を反映させたユニークなコレクションとして広く知られています。
私がコレクションを初めて目にしたのは、2019年にスパイラルガーデンで開かれた初の一般公開となる展示会でした。
草間彌生・村上隆・奈良美智といった現代美術のスターの作品からヴァージル・アブローがルイ・ヴィトンのメンズのアーティスティック・ディレクターに就任する直前に東京で行われた個展で発表された作品までの気になる現代美術全部みたいなコレクションは衝撃で会期中何度も足を運びました。
その桶田コレクションの同所での3回目の展示が今回の「OKETA COLLECTION:4G」です。
タイトルにある「4G」とは4ジェネレーションのこと。
90年代、80年代、70年代、60年代生まれの4つのジェネレーションの作家の作品が展示されています。
加藤泉、五木田智央など60年代生まれの世界的に活躍するアーティストから、井田幸昌など90年代生まれの話題の若手までがずらり。
桶田夫妻がコロナ禍で海外に出かけることもできず、新しいライフスタイルを過ごす中で、自然に国内のアーティストの作品に目が向くようになったとのこと。今回の展示では、その時期に出会った作品を主に構成。
つまり、ここ2〜3年で制作された新作が中心です。
展覧会で桶田聖子さんにお話しをさせていただいたく機会があったのですが、夫妻はコレクションのために気になるアーティストの個展をいち早く見に行き「いいなと思う作品に出会って、欲しいなって思ったら即、赤ポッチンつけちゃうの。赤ポッチンとは私の心の中の売約済みシール」とおっしゃっていました。
コレクションを購入するときは、ファーストインプレッションを大事にしているという夫妻ならではのスピード感です。
本物の大人買い、大パトロン。
会場はアクセスのいい表参道のスパイラルビル1Fのスパイラルガーデンで入場無料、予約不要というのも素晴らしすぎです。さらに、展示会場と隣接するスパイラルカフェとの間には壁などがないので、作品が眺めながらランチやカフェを楽しむこともできます。
さまざまな世代のアーティストの新しい目、今を斬りとった作品が隙間なく並べられているので頭が混乱してしまう部分もありますが、みなぎるパワーを感じに、何度でも訪れてみてください。
なんだか気持ちがアクティブになり前向きになれる、そんな展示です。
会場奥のコーナー。展示の一部はこの会場の空間に合わせて作家がインスタレーションをして作られたものだそう。
加藤泉《Untitled》2019 年、加藤泉 《Untitled》2007 年、加藤泉《Untitled》2019 年、加藤泉《Untitled》2019 年、加 藤泉《Untitled》2019 年photo: Daisaku OOZU
右から KYNE《Untitled》2021 年、 TIDE《NIGHT》2020 年、アドリアナ・オリバー《Family》2020 年、花井祐介《WE WILL FLY AGAIN》2020 年、花井祐介《Untitled》2021 年、山口歴《REVISUALIZE NO. 29》2020 年、山口歴《MÖBIUS NO. 6》2020 年、山口歴《REVISUALIZE NO. 38》2021 年、井田幸昌《Jean-Michel Basquiat no.4》2019 年
photo: Daisaku OOZU
スパイラルカフェからの贅沢な眺め。
右からロッカクアヤコ《Untitled》 2019 年、松山智一《River to the Bank》2020 年、五木田智央《Save the Last Dance for You》2021 年、加藤泉《Untitled》2019 年、加藤泉《Untitled》2007 年、加藤泉 《Untitled》2019 年、ロッカクアヤコ《Untitled》2020 年
photo: Daisaku OOZU
右からジャデ・ファドジュティミ《I can’t erase my dreams》2021 年、平子雄一《Yggdrasill 01》2020 年、平子雄一《Gift 08》2021 年、ロッカクアヤコ《Untitled》2019 年、松山智一《River to the Bank》 2020 年、五木田智央《Save the Last Dance for You》2021 年
photo: Daisaku OOZU
桶田俊二・聖子夫妻。
プレビューの際は、ステラマッカートニーと奈良美智がコラボしたウェアをお召しになってらっしゃいました。
photo: Daisaku OOZU
【DATA】
「OKETA COLLECTION:4G」展
会場:スパイラルガーデン
東京都港区南青山5-6-23 スパイラル1F
会期:〜4月25日(日)※休館日なし
開館時間:11:00-20:00
入場料:無料
TEXT: 安西繁美
女性誌やカタログで主にファッション、食関係、アートの企画を担当する編集・ライター。流行には程よく流されるタイプで、食いしん坊、ワインと旅行好き。東京日本橋出身、よって下町気質。家族や友人に美大出身が多いのに私は画力ゼロ。描けないけど書けるようになれたらいいなと。3月は学生の卒展があちこちで開かれているので、そのパトロールにも出没。どれも開催期間が短いので、こちらでは紹介することが難しいのですが、プロとは違う熱量を感じられて涙モノなのでおすすめです。