私たちっていったい何歳まで妊娠できるの? 知っておきたい「高齢出産のリスクや備え方」

女性の社会進出や晩婚化が進み、年々出産年齢も上がるなか、近頃は新型コロナウイルスの影響で、妊娠を延期しようと考えている方もいらっしゃるようです。確かに、著名人が40代で出産したというニュースを目にすることも多いので、“1年妊娠のタイミング遅らせたって、まだ大丈夫だよね?”という気持ちになるのも理解できます。

でも…実際、妊娠って何歳までできるのでしょうか? 気になる「STORY世代の妊娠・出産のリスクや備え方」について、東京・日本橋にあるフィーカレディースクリニック 産婦人科医の窪 麻由美先生にお話を伺ってきました。


一般的に35歳以上の出産は「高齢出産」と言われるため、35歳を一つの区切りとして認識している方も多いのではないかと思います。 とはいえ、昨今40歳前後で妊娠・出産する方も多く「あれ、もしかして医学の進歩とともに、高齢出産の定義も変わってきた?」なんて思ったり……。 確かに医学は進歩していますが、35歳を過ぎると妊娠率は大きく低下し、様々なリスクが高まっていくことに、今も変わりはありません。妊娠率低下の理由、リスクの内容など詳しくお伝えしていきます。

卵子の数は、生まれた瞬間からどんどん減っていく

年齢が上がると妊娠しにくくなる原因の1つは、卵子の数の減少です。
卵子の元になる卵巣中の卵母細胞は、母親のお腹の中にいる胎児のときが約700万個と最も多く、出生時には約200万個となり、その後思春期には約30万個、37歳ごろを過ぎると急速に減少し45歳で約5000個程度、そして約1,000個以下になると閉経します。

――卵子の数がどんどん減っていくことに、驚きました。

窪先生 卵子は排卵で毎月1個ずつ減っていくのではなく、1ヶ月1000個くらいの割合でなくなっていきます。

――でも、45歳で5000個程度はあるんですね。

窪先生 5000個といっても、5000人妊娠できるわけではないですよ。それに卵子は卵巣で新しいものが作られているわけではないので、女性が45歳であれば卵子も45歳。20代の卵子とは、やはり質が異なります。

40歳を超えると、自然妊娠かどうかに関わらず「妊娠」はかなり難しい

ART妊娠率・生産率・流産率 2017(日本産科婦人科学会 ARTデータブック2017年版より)

日本産科婦人科学会が毎年全国で集計している生殖補助医療(ART、不妊治療のこと)の成績(2017年)によると、20代後半〜30代前半で生殖補助医療を受けた女性の妊娠率はおよそ40〜45%であるのに対し、40歳で25~30%程度、その後45歳までに10%以下へと急激に低下します。40歳を超えると、自然妊娠だけでなく生殖補助医療を利用しても妊娠はかなり難しい状態となります。

――生理があるうちは妊娠できるのかな…と思っていました。

窪先生 もちろん生理があるうちは可能性がゼロではありませんが、ずっと20代と同じように妊娠できるわけでもありません。

こちらは、妊娠のご相談に来られた方へお見せしているものですが、例えば「子ども1人ぜったい欲しい」と思って自然妊娠を希望する場合、32歳までには真剣に考えてほしいんです。

――このような表は初めて見ました。でも「子ども1人・自然妊娠・できればほしい」なら37歳からでも遅くないんですね。

窪先生 ただ、妊娠できた場合でも、若いときの妊娠に比べて様々なリスクが高まります。経産婦であっても35歳以降は、妊娠中から出産まで細心の注意を払ってほしいなと思います。リスクについては次で詳しくお話します。

流産や難産など、高齢出産は様々なリスクが上昇

高齢出産を考える場合には、妊娠後のリスクについてもしっかり把握しておく必要があります。

リスク1 流産の確率が上がる
流産は全妊娠の15%くらいに起こると言われていて、妊娠初期の流産の多くは受精卵の染色体異常によるもの。年齢が上がると、卵子に染色体異常が起こりやすく、妊娠が成立しても流産する確率が高くなると考えられています。

リスク2 「妊娠高血圧症候群」や「妊娠糖尿病」を発症しやすい
「妊娠高血圧症候群」とは何らかの原因で妊娠20週から産後12週までに高血圧になることで、発症頻度は40歳以上で約8%、35歳未満の妊婦のほぼ2倍になります。
また「妊娠糖尿病」は妊娠中に初めて見つかった糖の代謝異常で、35歳以上では20~24歳の8倍、30~34歳の2倍と、年齢が上がると発症頻度が高くなることが分かっています。

リスク3 ダウン症など先天異常のリスクが上がる
ダウン症候群に関しては、母親の年齢が25歳の場合1,351人に1人の割合で見られるのに対して、40歳では112人に1人と高い割合を示す、という調査結果があります。
これは、卵子の老化に伴い、受精卵に染色体異常が発生する確率が高まることに関係があると考えられています。

リスク4 難産になる恐れがある
高齢出産の場合は、子宮頸部が軟らかくなるまでに通常より時間がかかる場合があり、産道が広がりにくい、陣痛が弱すぎる、ということも起こりやすく、難産になりやすいとされています。

リスクを減らすためにできる2つのこと

リスクをゼロにすることはできませんが、注意をすれば減らせるリスクもあります。

① 葉酸を摂取する

妊娠初期に脳・脊椎・脊髄におこる先天異常のひとつ「神経管閉鎖障害」は、予防が期待できます。神経管の閉鎖が完成するのは妊娠6週のため、妊娠する1か月以上前から葉酸を摂取するのが効果的です。

――私は20代で出産したのですが、葉酸を摂取したほうがいいなんて知らなかったです。随分前のことなので、記憶がかなりあやふやですが(笑)

窪先生 枝豆、ほうれん草、焼きのり、大豆など葉酸が多く含まれている食品は積極的に摂って下さい。ただ、野菜などに含まれる天然の葉酸は体内で分解されてから吸収されるので、吸収率は50%とも言われています。食事で十分な葉酸を取り入れようとすると管理多くの食材を食べなければいけないため、手軽に葉酸がとれるサプリメントも活用して下さい。

② 妊娠前は標準体重をキープする

体重が増えすぎると、高齢出産のリスクであげた「妊娠高血圧症候群」や「妊娠糖尿病」に加えて、微弱陣痛のリスクが高まります。また、妊娠前からの栄養が大事ということが昨今言われていますが、お母さんの体調を整えるために痩せすぎもよくありません。妊娠する前は、体格指数(BMI)は18.5以上25以下にキープしましょう。

――痩せすぎもよくないのですね。

窪先生 痩せているお母さんからは、将来成人病になる可能性が高い赤ちゃんが生まれてくると研究では言われています。理由はお母さんが痩せているので、お腹の中で赤ちゃんが飢餓状態になっていること。そうすると何でも吸収しようとする体で生まれてきます。

――痩せているお母さんからは、スリムな子どもが生まれてくると思っていました!

窪先生 では、太っているお母さんからは痩せている子どもが生まれてくるか…といえばそうはならないのですが、糖尿病のお母さんからは低血糖の子どもが生まれてきてしまうんですよ。これはお腹の中にいるときは高血糖の状態なのに、生まれて急にそれがなくなるので低血糖になってしまうんです。様々な影響があるので、標準体重でいるよう心掛けてください。

 


STORY世代でも元気な赤ちゃんを産んでいる方はたくさんいます。ただし今も35歳以上は「高齢出産」のくくりに変わりはなく、妊娠や出産にリスクが伴うのもまた事実です。事実をしっかり把握したうえで、これからのライフデザインを描いてみてください。

お聞きしたのは…
窪 麻由美先生

Fika Ladies‘ Clinic フィーカレディースクリニック(東京都中央区日本橋)副院長。順天堂大学医学部附属浦安病院非常勤助教。東京女子医科大学卒業後、順天堂大学医学部附属順天堂医院、順天堂大学医学部附属静岡病院などを経て、2009年に順天堂大学大学院医学研究科を卒業、博士号を取得。医学博士、日本産科婦人科学会専門医、日本抗加齢医学会専門医、日本医師会認定健康スポーツ医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター、日本障がい者スポーツ協会公認障がい者スポーツ医、女性のヘルスケアアドバイザー

取材/篠原亜由美

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