【レシピ】いつもの料理を10分で ⑩酢豚
しっかりと時間をかけて作る日もあるけれど、それでは毎日がまわらない……。
とはいえ、時短料理は溢れているけれど、
ただただ短い時間で料理ができればいいと思っているわけではない……。
「なぜ」このやり方なら、10分で作れるのか?
「どこ」さえおさえていれば、味の要が守れるのか?
理由を知っていれば、レシピを見続けなくてもサッと作れるようになる。
料理研究家の上田淳子さんに、(ほぼ)10分で作るための、省いていい部分・守るべき部分、そして”発想の転換方法”を教えていただきました。
もちろん、時間をかけて作るレシピは素晴らしいけれど、
日々の小さな幸せには、こういったレシピも必要だなと感じるのです。
この作り方は、”本物じゃない”と思われる方もいるかもしれません。
ですが、名前のついた料理の”想像する絵”にこだわりすぎなくてもいいのではないでしょうか?
定番料理を作る際の、
こういう方法にしてもありなのでは? という
振り幅の広さを紹介していきます。
Vol.10
酢豚
酢豚といえば、カリカリっと揚げられた豚肉に甘酢餡がとろりと絡まっていて。そして、玉ねぎ、にんじん、ピーマン、場合によってはれんこんや椎茸などの野菜たちも……。彩り豊かで、ごはんが進む。おうち中華の定番メニューのひとつです。
何種も野菜を入れるとなると、それぞれの野菜の「ベスト火入れ時間」が違ったり。
豚肉も下味をつけて、揚げ油で揚げたりと…。
ていねいに作ろうとすると思いのほか面倒な料理でもあります。
さて、酢豚を10分で作ろうとする場合。省略ポイントは?
力の入れどころ・抜きどころをわかっていれば、自ずと”時短料理”になるんです。
時短レシピを見て真似て作る”時短料理”よりも、
時短の理由を考えて、作る”時短料理”を。
では、考えていきましょう。
ほぼ10分で作れるのには、理由がある…!
省きどころ・抑えどころ
POINT①卵を使った衣はやめる! 揚げ油の必要もなし!
豚肉をカリッと仕上げるためには、下味をつけて、溶き卵に絡めて、そして片栗粉をまぶして、揚げ油で揚げる。という工程がオーソドックス。ですが、わざわざ卵を使った衣にしなくても、しっかりと片栗粉だけをつけて、少し多めに油をひいたフライパンで揚げ焼きすればOK。
重要なのは、豚肉を入れたら、転がさない! 触らない!
じっくりと片栗粉がカリッと焼けるまで待つ。触るのは、豚肉を返すときだけ。
触ってしまうと、豚肉から片栗粉が剥がれてしまい、カリッと感が薄れてしまいます。
POINT②野菜をアレコレ入れるのはやめる。単品でOK!
ひと皿に、あらゆる具材が入っているとご馳走感は出ますが、それぞれの具材のベスト火入れを考えて作ろうとすると手間が増えてしまいます。
いっそ、酢豚は、豚肉と具材一種だけでいいのでは?(むしろ豚肉だけでもいいかもしれません)
豚肉を炒める前に、フライパンに湯を沸かし、玉ねぎを30秒ほど茹でる。
ざるにあけて湯を切ったら、そのまま盛り付け皿へ。
調理道具を何種も使う必要がなくなります。
どうしても野菜の種類の少なさが気になるようであれば、
サラダを添えたり、サッと青菜を茹でたものを添えたり。
皿数を増やせばいいのです。ひと皿にアレコレ入れ込むよりも楽ですからね。
POINT③食感を楽しむためにも、餡は絡めるよりも、かける、気持ちで。
茹でた玉ねぎ、揚げ焼きした豚肉。甘酢餡を作り、再びフライパンに戻して、炒め絡める必要はありません!
盛り付け皿に、
*30秒ほどサッと茹でて、湯切りした玉ねぎを敷き、
*カリカリに揚げ焼きした豚肉をのせ、
*そして甘酢餡をとろりとかければOK。
食べるときに各々絡めればOK。
炒め絡めると、せっかくカリッとしていた豚肉もべちゃついたり、玉ねぎの程よいシャキシャキ感もなくなりかねません。
食感を楽しむためにも、炒め絡めずに、かけるだけで。
■黒酢酢豚
【材料】2〜3人分
- 豚肩ロース厚切り…2枚(200g)
- 塩…小さじ1/5
- 胡椒…適量
- 片栗粉…大さじ1と1/2
- サラダ油…大さじ2
- 玉ねぎ…1個(200g)
- A
醤油…大さじ1
黒酢…大さじ4
砂糖…大さじ2と1/2~3
おろし生姜…大さじ1/2 - 水…大さじ5
- 片栗粉…大さじ1/2
【作り方】
1.Aを混ぜ合わせておく。玉ねぎは、くし形に切りさらに半分にして、ほぐす(写真参照)。 フライパンに湯を沸かし、塩を入れて(パスタを茹でる程度の濃度に。分量外)、タマネギを入れる。30秒ほど茹でてざるにあけ、湯を切る。
2. 豚肉は一口大に切り、塩・胡椒をし、片栗粉を表面にしっかりまぶして、手で押さえる。
3.フライパンにサラダ油を強めの中火で熱し、豚肉を並べる。2〜3分、表面に肉汁が浮き上がってくるまで触らずに待ち、返す。1〜2分程、カリッとなるように揚げ焼きする。盛り付け皿に1のタマネギとともに肉を盛る。
4.2の余分な油をペーパーで取り除き、A(片栗粉が底にたまっているのでしっかりと混ぜる)を入れて中火にかける。絶えずかき混ぜながら煮立てて、とろりとなるまで加熱し、3にかける。
【バックナンバー】
【PROFILE】
上田淳子:料理研究家。スイスやフランスのレストランで修業を積み、現在の道へ。食育の活動も行う。著書多数。近著に『ごちそうしたい、ほめられたい 実は簡単! ハレの日ごはん』(NHK出版)、『上田淳子のチキンスープ − 鶏肉=具材、スープ。簡単、本格的。』(グラフィック社)など。
撮影/大森忠明 文・構成/松本朋子