小児科医師が答える「子どものおねしょの悩み・便秘の悩み」

なかなか出口が見えないおねしょやもしかしてうちの子便秘?…など、ママの悩みは尽きません。いろんな情報がある今だからこそ、ママが知っておきたい、おねしょと便秘の原因と対策について、小児科の先生に正しい知識を教えていただきました。

※掲載中の情報はVERY2021年5月号掲載時のものです。

 

おねしょの悩み。

Q1: 6歳にしてまだ夜は特大オムツをして、防水シーツをしいて寝ています。夜に起こしてトイレに行かせたら成功した日もあったけれど、夜中子どもを起こす私がつらくて…! オムツのコストもばかにならず、本人も気にしていて、サッカー合宿にもおねしょがこわくて行きたがりません。(6歳男の子ママ)

A: 夜尿症の治療の効果は高く、1年後の治癒率は治療をしなかった人に比べると2倍ということもわかっています。もうすぐ学校という子は治療を始めてもいいかもしれませんね。また、子どもの成長のために睡眠は大切なので夜中にトイレに起こすのはおすすめしません。膀胱を成長させて大きくし、濃いおしっこを少量作れるようになるためにもよい睡眠は大切。合宿などイベントの時だけなら夜中に起こしても大丈夫です。

 

Q2: オムツはぜったいはかないのに、週1、2ペースでおねしょをするので、洗濯がとにかく大変でした。いまだにお寿司やお刺身などしょうゆをたくさん使う日は、たくさんお茶や水を飲むからか、おねしょをすることも。完全におねしょが治る日はくるのでしょうか?(7歳男の子ママ)

A: 小児科では、まず生活習慣を整えることをすすめています。決まった時間に寝て、起きて、食事をする規則正しい生活に加え、食事内容も大切。塩分が多いと水が飲みたくなるので味付けに気をつけ、夕食は汁物を控えましょう。夕方以降の水分は夕食を含め200cc以内におさえることを心がけ、食事は寝る3時間前までに終えるのが理想。もちろん水を飲むことは大切なのでそれ以外はたっぷりと。一般的には薬を飲む治療は小学生からなので、小さいお子さんにはまずこの方法を試してみて。

 

Q3: 4月生まれで、しっかりしていて、外では何でもできる! といつもほめられる娘。でも実は夜はオムツをはいているのだけが、悩みです。いつも外で優等生で頑張っている分ストレスがあったり、そういうことと関係しているのでしょうか? (5歳女の子ママ)

A: ストレスとおねしょは関係ありません。おねしょの主な原因は体の未発達です。オムツをはいてくれるなら、急ぐことはありません。気をつけたいのはお母さんが自分を責めたり子どもを責めたりしないことです。優等生タイプのお子さんならきっと本人も気にしているでしょう。できないことを指摘するよりも、できた時にほめてあげて。本人も自信がもてるようになります。悩んでいる時はぜひ気軽に小児科に相談してください。

 

おねしょはママや
子どものせいじゃない!
ひとりで悩まず気軽に相談を

5歳を過ぎて月に1回以上のおねしょが3カ月続く場合は夜尿症と診断されます。だいたいの子が小学生になる頃くらいまでにおねしょを卒業していきますが、小学1、2年でおねしょがある子は約10%。おねしょは膀胱がまだ小さかったり、濃いおしっこを少量作るホルモンが十分に作れていないなど、体の未発達から起こります。おねしょは治療できるということを知らない人も多いですが、小児科では生活指導や副作用がほとんどない薬、アラーム療法など、その子に合った方法で治療可能。「おねしょ卒業!プロジェクト」(https://onesho.com)のサイトから家の近くの病院を探してみても。また、便秘だと膀胱におしっこをたくさん溜められなくなり、おねしょをしやすくなるので気をつけて。

 

優しい文体とイラストでおねしょの罪悪感が軽減される絵本。
『ノンタンおねしょでしょん』
キヨノサチコ作・絵¥660(偕成社)

 

便秘の悩み。

Q1: 赤ちゃんの頃から便秘がち。赤ちゃんの時は綿棒で刺激するとよいと言われても怖くてなかなかできず、お薬を出してもらっていました。今も常に便秘気味。ヨーグルトなど飲ませたりしているのですが、根本的な解決になっていないような気がしています…。(3歳男の子ママ)

A: 綿棒刺激やグリセリン浣腸はやってあげてください。くせになるのでは?と心配するママがいますが、くせにはなりません。それよりも便秘がくせになってしまう方が心配です。便秘を軽くみないこと。子どもの頃の便秘がくせになり、大人になっても便秘になる人も多いんです。今は、便にボリュームを出して腸の運動を促し出しやすくし、副作用の少ない薬などもあるので、心配しすぎずぜひ一度小児科で相談してみて。食事は偏ることのないよう、色々なものを食べましょう。

 

Q2: 学校でうんちをガマンしているようです。学校ではゆっくりできなかったり、はずかしかったりするようで…。また、この前は特大のものが出てトイレが詰まってしまいました。(8歳男の子ママ)

A: 子どもは「もっと遊んでいたい」「家のトイレ以外ではしたくない」などの理由でうんちをガマンしてしまうことが多く、便秘の原因になることも。特大の硬い便が出るのもそれだけ溜まっているから。便が腸に長時間あると硬くなり、出る時に痛かったり出血をすることも。そうすると子どもは余計にトイレに行きたがらなくなり、ガマンをする悪循環に。薬を飲むと効いてくるタイミングが大体決まってくるので、薬を飲む時間を調整してトイレに行くタイミングが朝や夕方など家にいる時間帯になるように習慣づけるのもおすすめ。

 

Q3: 先日、保育園から「腹痛でつらそうだ」と呼び出しがあり迎えにいくと、何と原因は便秘。浣腸をして解決しました。日頃から便秘がちで、送迎を分担している夫と「出た、出ない」の確認は口頭でしていたのですが、把握できていなかったのかもしれません。(5歳男の子ママ)

A: 「出ているか」だけでは子どもの便秘には気づいてあげられないかもしれません。子どもが「出た」と言っても少ししか出ていないことも。おすすめなのは記録をつけること。出た時間、回数、便の状態(硬さ、色、量)、気づいたことなどを記録することで排便の変化にも気づけるようになり、家族や保育園とも情報シェアしやすく小児科を受診する時にも説明しやすい。子どもの便秘の改善にも役立ちます。日本小児栄養消化器肝臓学会の「こどもの便秘」のHPから「排便日誌」をダウンロードできるので、ぜひ利用してみてください。

 

子どもは便秘に気づきにくい
少しでも気になったら
すぐアクションを

便秘をあまり気にしない親御さんも多いですが、便秘でいいことはありません。便が腸に溜まると腸が太くなってしまい、さらにそこに便が溜まりやすくなり、体が溜まった状態に慣れると便意を感じなくなるという悪循環に。規則正しい生活はもちろん、決まった時間にトイレに行くこと、3食バランス良く食べること、運動をすることを心がけましょう。便秘になってしまった時に家庭でできることは、お腹のマッサージや浣腸、赤ちゃんなら綿棒で刺激してあげることも有効。小児科では座薬や飲み薬など副作用のほとんどない薬を出すので早めに受診を。いきんでもなかなか出ないなど、まだ自分の言葉で伝えられない小さい子どもの便秘のサインを見逃さないで。また、足が床につかないといきみづらいので、足置きをおいてあげるのもおすすめ。朝出すことにこだわる人もいますが時間はいつでもOKです。

これが当てはまるようなら
「便秘のサイン」かも!

□ 週に3回より少ない
□ 5日以上出ていない日が続く
□ 出す時に痛がって泣く
□ 出す時に血が出る
□ 小さいコロコロ便ややわらかい便が1日に何回も出る
※日本小児栄養消化器肝臓学会「こどもの便秘」より

 

食べることと同様に、排泄にも興味を持ち、ちょっぴり自分の「うんこ」が好きになれる絵本。
『うんぴ・うんにょ・うんち・うんご うんこのえほん』
村上八千世文、せべまさゆき絵¥1,320(ほるぷ出版)

 

教えてくださったのは…
森戸やすみ先生

小児科専門医。一般小児科、NICUなどを経て2020年東京都台東区にどうかん山こどもクリニックを開院。『新装版小児科ママの「育児の不安」解決BOOK』をはじめ著書多数。

 

【Column】

公立小中学校は43%(注)が和式!
今の子どものトイレ事情とは?

話をうかがったのは…
NPO法人日本トイレ研究所
加藤篤さん

子どもの便秘に悩む人に役立つ情報や、全国の病院を探せる日本トイレ研究所のサイトをぜひチェックしてみて。http://www.toilet.or.jp

 

「2020年の私たちの調査では、子どもの4人に1人が便秘の疑いがあるという結果が出ています。便秘の子どもの親のうち4割が子どもの便秘に気づいていないというデータもあり、子どもの便秘を改善するには、便秘に関する大人のリテラシーの向上が重要です。また、全国の公立小中学校のトイレの43%は和式という現状もあり、洋式便器を増やす努力がされていますが、和式など使い慣れていない便器を使えるようにしてあげることも、子どもが便意をガマンして便秘にさせないためにも大切。子どもの便秘は特に母乳からミルクや離乳食へと移行する時期、トイレトレーニングの時期、通園や通学を開始する時期など、環境が大きく変化する時期に起こりやすいと言われています。便秘は放置していると慢性化、悪化してしまうこともあるので早めのケア、治療が大切です。子どもの様子をよく観察してあげましょう」

注:令和2年9月1日現在、文部科学省発表

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撮影/相澤琢磨 取材・文/加藤みれい 編集/羽城麻子 
*VERY2021年5月号「小児科医がお答え おねしょの悩み。便秘の悩み。」より。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。商品は販売終了している場合があります。