近年問題の『生理の貧困』とは一体?【世界の生理用品や環境を比較】
アメリカの調査によると、女性が一生のうちに費やす生理関連の出費総額は$4,752(約52万円)~$6,360(約70万円)といわれています。2021年1月から、イギリスでは生理用品に課される付加価値税が廃止に。日本では生理用品を軽減税率対象にするよう求める抗議や、東京都豊島区で生理用品が無料配布される試みなど…世界各国で女性にとって切っても切れない存在『生理』に関連する様々な運動が起こっています。そこで今回は、世界の生理用品から垣間見る文化や意識の違い、『生理の貧困』について調査していきます。
世界の生理用品|1. アメリカ、中国、日本の生理用品比較
▽アメリカ
写真は、筆者が以前アメリカで購入したタンポンとナプキンです。全てオーガニックの商品ですが、特に意識して探さなくても普通の薬局でオーガニックの製品が手に入ることに驚きました。また、パッケージもカラフルでオシャレなものが多かったように感じます。
▽中国
中国で生理用品を購入した際、驚いたのは日本メーカーの製品の多さです。中国では日本メーカーが現地で製造する生理用品や輸入した日本製の生理用品が人気を集めているようです。写真左が現地メーカー『ABC』の人気商品で、写真右が日本メーカー『ユニ・チャーム』の現地製造商品です。中国の現地製品は、パッケージがかなりシンプルで、薄くて軽い印象。日本メーカーの現地製造商品は、パッケージがカラフルで機能性重視だと感じました。
▽日本
他国の生理用品と日本の生理用品を比較して感じたのが、機能性の高さ。羽つきナプキンであればゴミが散らからないように工夫がされ、吸水性やつけ心地に関しても日本の製品はレベルが高く、中国で人気を集めるのも納得です。一昔前までは、コスメキッチンなど専門店でしか取り扱いのなかったオーガニックアイテム。近年では薬局で購入可能になり徐々に種類も増えつつありますが、アメリカと比較するとオーガニックの選択肢はまだまだ少ない印象です。
世界の生理用品|2.各国で主流の生理用品は?
▽アメリカ
大手量販店オンラインショップの生理用品コーナーを見ると、まず一番上にタンポンが表示されます。実際にアメリカの薬局で生理用品を購入した際も、ナプキンと比べるとタンポンの方が種類豊富でした。普通の日、多い日だけでなく、スポーツ用やオーガニックという選択肢があるのもアメリカならではです。
▽中国
現地に住む中国人の友人に聞いたところ、中国ではナプキンが主流で、タンポンを使う人は少ないそう。中国の大手ネット通販での月間累計販売数を見ると、ナプキンで1位の商品の購入数は14万個なのに対し、タンポンで1位の商品はわずか9,600個の販売数でした。
▽日本
日本は中国と同様ナプキンが主流。大手ネット通販のランキングを見てみると、上位3位をナプキンが占め、4位がタンポンとなっています。ランキングトップ3には入らないまでも、5位以内にランクインしたタンポン。中国と比べると、タンポンの普及率は高いように感じます。
世界の生理用品|3.値段や税率は?
▽アメリカ
タンポンは$3.99(約435円)16個入り〜$9.99(約1,100円)32個入り。ナプキンは$3.99(約435円)28枚入り〜$8.99(約980円)32枚入り。一番高額だったタンポンとナプキンは、どちらもオーガニックの製品でした。また、1箱に入っている個数は最低でも10個入り。日本と比べるとミニマムの個数が多いのは、生活様式や文化の違いからくる差なのかもしれません。
アメリカの税率は州によって異なりますが、現在ニューヨーク州、マサチューセッツ州など15州で生理用品は生活必需品扱いとなり免税、カリフォルニア州、ハワイ州など30州では課税対象となっています(オレゴン州など、5つの州にはもともと売上税がありません)。
▽中国
中国の薬局で売られている生理用品の価格は、現地製造のものでは、10枚入りで13元(約215円)〜10枚入りで15元(約260円)で、一番高かった39元(約650円)のものは、日本から輸入された日本製の生理用品でした。また、大手ネット通販サイトでは、100枚入りで21.99元(約370円)の超格安ナプキンも登場。格安な分、箱などの包装を省略し、計り売りのような製品なので、衛生面の問題などが懸念されています。
現在、中国では生理用品に軽減税率などは適用されず、付加価値税13%が課税されます。ちなみに農産物や書籍など生活必需品には、9%の軽減税率が適用されます。
▽日本
日本の大手通販サイトを見てみると、ナプキンは233円(30枚入り)〜680円(44枚入り)、タンポンは260円(8個入り)〜328円(5個入り)と、日本の場合はタンポンよりもナプキンの方が種類豊富なこともあり、値段にも差が出ました。オーガニックのものの方が比較的高い傾向。アメリカでは最低16個入りのタンポンも、日本では10個以下の少量から購入可能です。
日本で生理用品にかかる消費税は、軽減税率対象外で10%。中国と同様に生活必需品扱いにはなっていません。
世界の『生理の貧困』|アメリカ、中国、日本の現状を比較
生理の貧困とは?
最近ニュースで耳にするようになった社会問題の一つ『生理の貧困』。生理用品を買う余裕がない、または生理用品を利用できない環境のことを表します。経済的に困窮し、毎月必要な生理用品が購入できなかったり、仕方なく代用品を使用せざるを得ない状況に陥っている女性が増加していることは、世界中で問題になっています。
▽アメリカ
アメリカでは大学生の10人に1人が、『生理の貧困』を経験したことがあるという調査結果があり、それに付随して『Tampon Tax(タンポン税)※』廃止に関する議論も白熱しているようです。生理用品の価格と税率でもご紹介した通り、アメリカ50州のうち15州では生理用品は生活必需品扱いとなり免税の対象になりますが、いまだに半分以上の30州では課税対象となっています。女性が毎月購入しなくてはいけない生理用品が、生活必需品として認められないことに対する抗議の声は、アメリカ国内でも広がっています。
▽中国
最近、中国大手通販サイトで売られている、パッケージを省いた激安ナプキン『散装卫生巾』が話題になっています。100枚入りで21.99元(約370円)という格安ナプキンが、中国国内で売れているのです。「なぜこんなに安い品質合格証のないナプキンを買いたいのか?」「ちゃんとしたブランドのナプキンを購入した方がいい」という商品ページに書き込まれた意見に対して、購入者の女性数人が「生活が厳しい」「私は問題を抱えています」といった返信をしました。このやりとりのスクリーンショットが中国国内のSNSで拡散され、「月经贫困(生理の貧困)」というワードとともに物議を醸しています。
▽日本
コロナの影響もあり、日本でも『生理の貧困』というワードを耳にする機会が増えました。生理に関する啓発活動をしている『#みんなの生理』の調査によると、日本の若者の5人に1人は金銭的理由で生理用品の購入に苦労した経験があるそう。日本でも、都内の学生が中心となり生理用品を軽減税率の対象にするよう署名サイト『Change.org』を通して抗議し話題になっています。
また、東京都豊島区では約2万個の防災備蓄用ナプキンを無料配布、多摩市では市立の小・中学校で生理用品の配布が始まりました。この流れを受けて、生理用品の無料配布や割引を始める一般企業も増えてきているようです。
『Tampon Tax(タンポン税)※』とは?
アメリカの調査によると、女性が一生のうちに生理用品にかける金額は$4,752(約52万円)~$6,360(約70万円)といわれ、生理がある人だけが支払う生理用品にかかる税金は、世界各国で『Tampon Tax(タンポン税)』と呼ばれています。2004年ケニアで生理用品に対する課税が廃止に、その後オーストラリアやカナダ、アイルランド、インド、アメリカの一部の州など、世界各国で生理用品にかかる税金の廃止が進んでいます。
話題にしにくい風潮がある『生理』というトピック
世界の生理用品比較から、近年各国で話題になっている『生理の貧困』問題まで。日本をはじめとする先進国には関係ないことと思われがちですが、『生理』という話題にしにくいトピックという理由から、声をあげる人が少ないのが現状です。この記事をきっかけに、現在、日本でも問題になっている『生理の貧困』について知る人が、少しでも増えることを願っています。
文・写真/山水 由里絵(やまみず ゆりえ)
大学卒業後は広告代理店に勤務し、結婚を機に海外へ引っ越し。現在は旅行・美容関連の記事をメインに、CLASSY.読者と同世代のフリーランスライターとして活動中。2019年9月よりCLASSY.ONLINEで随筆をスタート。
Instagram:@yuuurie_1211
Blog:Travel in Style~海外在住トラベルライターの旅Blog~
※記事内の商品価格は、2021年5月現在のものです。
編集/ガヤ美(CLASSY.ONLINE編集室)