〝子育てロス〟が、もしも私に訪れたら……STORYライター体験談

子どもが大学に入学したり、社会人デビューする季節。ようやく子育ても終わり、肩の荷が下りたと思いきや、ぽっかりと心に穴が空いて、塞ぎ込んでしまう――〝空の巣症候群〟とも呼ばれる子育て後の喪失感について、STORYライター4名にそれぞれの場合を聞きました。


〔Case 1〕 STORYライター 見学裕己子

交換留学に出た高校生の時と大学生の時、私は「2回」も経験しました

    海外から帰国したての4歳の頃。ずっと親子べったりで過ごしていました。
    義理の妹の結婚式で京都へ。娘は小3。私はすでにライターの仕事をしており、お稽古の送迎など育児と家事とペースを摑むのに大変でした。
    • 1回目は高2で娘がアメリカへ交換留学に行った時。毎朝お弁当を作り、起こしご飯を食べさせ送り出す――という毎日のルーティンが突如なくなり、がらんとした部屋を見て今まで感じたことのない寂しさが湧き上がってきたんです。

      2回目は大学生の頃。ヨット部の娘は合宿生活で家にいる時間が減少。娘のために取り組んでいたことが急になくなり、胸にぽっかり穴が。食欲もなく昔の写真ばかり眺めてました。

      乗り越えられたのは、仕事やテニス、ゴルフといった自分時間の充実と、先輩ママの「これから結婚や出産など、次のステージの楽しみも生まれてくる、今は好きなことをしなさい」という言葉。今はそんな切り替えをしながら、娘との時間を大切に過ごしています。

〔Case 2〕 STORYライター 秋元恵美

思春期はつれなくて少し寂しかったけどその後、子育てロスは感じていません

    長男の中学生時代。この時、名前を呼んだら「友達の前で大声で呼ぶな、勘弁してよー」と怒られました。
    次男は高3、長男は大学生。実家の大掃除を手伝ってくれた時、写真嫌いの次男も一緒に写ってくれました。
    • 息子が思春期につれなくなって少し寂しいことはありました。一緒に歩くのを嫌がったり、ディズニーランドにも一緒に行ってくれなくなったり。「寂しいね」とママ友とも話していましたが、いつまでも親にべったりも困るもの。成長だな、と思い、嬉しくもありました。だから、子育てロスは感じませんでした。

      世話も責任も減って、ほっぽっておけるのでラク。次男の高校卒業式も写真を一緒に撮っただけ、長男の大学入学式も、会場までタクシーに乗せていったのに、降りたら「じゃあ」って一人で行っちゃって……。

      長男は今、親の反対を押し切り役者に。応援しています。次男は就職後も自宅住まいで完全リモート。ずっと家にいます。ロスは感じていないほうですね。

〔Case 3〕 STORYライター 杉崎有宇子 51歳

訳もなく涙が出た1年間でしたが緊急事態宣言で区切りをつけました

    次男の高校の卒業式にて。この後からロスに突入……。
    長男が高2、次男が中2。毎年夏に行っていたハワイ旅行にて。親睦を深める会と称して、次男が高校を卒業するまで続けていました。
    • 次男が高校を卒業した時がいちばん辛かったです。幼稚園の頃から手伝っていた、学校行事がなくなり、自分の居場所がない、母としての存在意義もわからなくなる。独りで家にいると訳もなく涙が……。そんな状態が1年は続いたかと。以前までは「表参道にいるんだけど。いいカフェある?」って、私にすぐ電話をかけてくるような関係だったので、寂しさは計り知れなかった(笑)。

      長男はすでに一人暮らし、次男は大学生になってからほとんど家におらず。仕事に没頭しても、この先の不安が広がるばかり。でも、去年の緊急事態宣言によって、家にいなかった息子が一日中家に!〈これが息子とべったりできる最後の時間〉と思い、置き去りになっていた気持ちをリリースしました。

〔Case 4〕 STORYライター 北野法子 48歳

子どもの成長とともに感じた不安を父の言葉が解決してくれました

    この春、次男の高校卒業式前に家の前で。「ハワイの写真から6年も経つのか と思うと、あっという間でした。感慨深いものがあります」
    長男は高2、次男は中1。次男の中学入学前に3人でハワイ旅行へ。
    • 長男が中3、次男が小5の頃。お正月に父親の喜寿のお祝いで家族で集まった時に、母が「一人ずつ今年の抱負について一言語ろう」と言い出しました。端に座っていた私に最後の番が回ってきました。そこで号泣しました。「何かをやりたいけど、何をしていいのかわからない。やると言っても、まだ子育ても家事も続くし、実際好きに時間が使えるわけじゃない。制限がある中で何をしたらいいのか、何をしたいのかわからない」。息子たちが大きくなった後の自分の人生も不安でした。

      後日、父から手紙が。「もっと苦しんで、もっともがきなさい」と。2日後、書店でSTORYのライター募集の記事を見ました。子育てと仕事の両立――あえてそこに向かっていくことで乗り越えました。

取材/東 理恵 ※情報は2021年6月号掲載時のものです。

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