子どもの「口の悪さ」が気になる!専門家に聞く対処法3選

巷に流れるあの歌やあのアニメの大流行…つられてなのか否か、子どもたちの「口の悪さ」が気になるというママが増えています。ただマネしているだけだからOK? でもやっぱり直してほしい…。どんなふうに向き合うべきか、ご自身も子育て経験者である発達心理学の専門家に、具体的な対処法を聞きました。

 

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\教えてくれたのは…//

渡辺弥生先生

法政大学文学部心理学科教授。教育学博士。NHK『すくすく子育て』でも発達心理学や学校心理学の専門家として親に寄り添ったアドバイスを発信。『絵で見てわかる「しぐさ」で子どもの心がわかる本』(PHP出版)など著書多数。

実例①

私の影響!?「まじであいつバカだから」

もともと口が悪い私。最近娘が「まじでむかつく」「まじであいつバカだから」などと言うようになり、娘の前で私もイライラしてそんなこと言っていたのかも…と二重でダメージです。(5歳女の子ママ)

【渡辺先生からの回答】
母さんのイライラ、わかります。「今日は早く寝かせて仕事したい」と思う日に限って、全然寝ない(笑)。でも疲れて余裕がなくなって子どもに当たるのを繰り返していると、思春期になって「クソババア!」が遅れた雨のように降ってくるケースもあると発達心理学を学んで知っていたので、なんとか回避できました。でもいくら言葉遣いをきれいにしても、言葉以外の、表情や態度の方がメッセージとして強いんです。イライラしていたら隠しようがない。だから家事や仕事はそこそこに、子どもとの時間では笑って座っていてほしい。とはいえ疲れてどうしようもないときはあると思いますし、おろそかにできない事情もあるでしょう。そういうときは、ただ「ゆっくりしゃべってみる」テクニックを試して!

実例②

4歳の姉が妹に「この、クソ!」

上の子が保育園で年上の子と接する機会が増え、言葉遣いの悪さが気になるように。親や2つ下の妹に向かって「この、クソ!」と言うので注意をしたところ「クソじゃなくてクスって言ったの!」と言い訳。あまり目くじら立てるものではないかなと思いつつ、妹への影響が心配です。(4歳と2歳の女の子ママ)

【渡辺先生からの回答】
子どもはあまのじゃくなところがありますから、「お母さんクソって聞こえたからびっくりした、クソなんて言うわけないもんね」と言ってもいいし、しつけ絵本を利用して「クソって言われたらどう思う?」と話してみるのも手。あとは「あなたがそんな言い方したらママは悲しい」という私主語の伝え方にしても。でも子どもが怒りたい気持ちならば、正しい表現の仕方も教えてあげたいもの。日本人は怒るのが下手なので、後で爆発したり、怒っているのに言えず冷たくしたりしがち。大人もイラッとしたときにため込まず、冷静に伝えていく努力をしていれば、子どもも必ず見ています。すごく気の長い話ですが…。

実例③

友だちと遊んでいて「とどめだ、死ね~!!」

友だちと公園を遊んでいたときのこと。戦いごっこをしているなと思ったら、「とどめだ、死ね~!」を公園中に響き渡るくらいの音量で絶叫! 「やめなさい!」と叱りましたが、本人は悪いと思っていなさそう。(6歳男の子ママ)

【渡辺先生からの回答】
時代劇でもみたのかな(笑)? でもここは冷静に言いましょう、「その言葉はダメだ、みんなびっくりしちゃうよ」。6歳なので、テレビではなく現実の世界だから違う言い方をしようと言えば理解できます。とはいえ、暴力的な映画などを見てしまうと、子どもが真似するということについてはエビデンスもあります。現実と区別するから大丈夫というのは大人の都合のいい理論で、善悪の判断や思いやりの力が発達するまでは、そのリスクにさらしているという意識は持っていてもいいかもしれません。あとは、できるだけその場で注意すること。6歳ぐらいだと午前中のことを夜お風呂で注意されても覚えていなかったりします。

 

渡辺弥生先生からのアドバイス

「うっせぇわ」も成長の証し!?
伝えるときは、顔と声総動員で!

子どもは真似をする生き物。良い言葉もきっとたくさん言っているはずなのに、悪い言葉だけつい親は反応してしまうものですが、新しい言葉を使っているのは発達して成長している証しです。まず喜びましょう! とはいえ社会では人に言っていいことと悪いことがありますし、共存するために互いを思いやることが必要です。まずこの善悪の認識は放っておいて身につくものではなく、教え伝えていく必要があるんです。

その教育効果が現れてくるのは、相手の気持ちが理解できるようになる4歳頃から。もちろん4歳まで放っておいていいわけではなく、面倒くさいけれど丁寧に何度も何度も伝えて、4歳頃からやっと飲み込めてくるという感じ。子どもが理解できる言い方もエビデンスがあって、頭ごなしにダメと言われても、怖いからやらなくなるだけ。どんな年齢でもやってはダメな理由を添えて、声色や表情を総動員して「ダメ」としっかり伝えましょう。いいことをしたときは「大好き」と褒めて、悪いことをしたら「そういう子は嫌い」と言うのは効果はあるのですが、お母さんの顔色を見て言葉を選ぶようになるので思いやりを育てる点においては向きません。

絵本を使って「こう言われて悲しそうだね」と客観的に考えさせることを、機嫌よく集中力があるときに教えておくのもいいと思います。癇癪を起こしていたり興奮しているときに怒っても聞いてくれないので、場所を変えたり気を逸らしてまず落ち着けましょう。そして、ダメな言葉をダメというだけでなく、思いやりのあるポジティブな言葉を伝えていこうというマインドで接してみてください。

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取材・文/有馬美穂 取材協力/越智さやか 編集/羽城麻子
*VERY2021年7月号「子どもの「うっせぇわ」にザワつく」より。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。