【オンライン留学のメリット&デメリット】“本当のところ”を体験者に聞いてみた

2020年、2021年とコロナ禍で感染拡大を防ぐために海外からの留学生の受け入れを一時停止する国が相次いだこともあり、オンライン留学への注目度が高まっています。予算面もさることながら、自宅にいながら現地のプログラムで学習ができることが最大のメリット。オンライン留学の今について取材しました。

※掲載中の情報はVERY NAVY2021年10月号取材時のものです。

オンライン留学体験者に聞いた「本当のところ」


01
Yさんの場合

お子さんの年齢 中学1年生女子と小学3年生男子
オンライン留学期間 1日
オンライン留学先
アメリカ・サンディエゴの家族
費用 およそ1万円

 

家族でコミュニケーションがとれ
事前準備も楽しい!

我が家が参加したのは、ホームステイ型プログラムです。娘は小学3年で韓国のパジュ英語村(自治体が運営するアジア最大級の体験型英語学習施設)に1週間程度の短期留学経験があり、その時お世話になったSKYUSさんに今回もお願いしました。本来なら息子にも現地留学をさせたかったのですが、コロナ禍で叶わずオンライン留学を選びました。ホームステイ型にしたのは、自分たちで準備ができるオリジナルの経験をさせたかったからです。当日は、現地のホームステイ経験のあるご家族とZOOMで繋がり、互いの食文化を紹介しあいました。相手の家族構成は、両親、13歳の姉、3歳の弟。私たちは関西在住のため、たこ焼きを作る様子をライブ配信し、相手もサンディエゴ名物のワカモレをその場で作ってくれ、あっという間の1時間でした。現地の日本人スタッフが間に入って聞きづらい英語などのサポートをしてくれましたし、子どもたちも積極的に会話ができました。今回のホームステイ体験では、事前に自己紹介動画をアプリFlipgridで作成しておく必要があります。娘はけん玉、息子はコマと、得意な日本の遊びを紹介しました。その準備も親子ともに楽しんでできましたし、事前に顔がわかっているので安心できました。現地留学と異なりオンラインだと子どもたちのスケジュールに合わせてプログラムが組め、短期留学よりも気軽。また、長女はこの経験を経てさらに英語に興味を持ち、英検の勉強も熱心に。いずれは長期間の留学をと思っているので、いいきっかけになりました。


02
Sさんの場合

お子さんの年齢 高校1年生男子
オンライン留学期間 2カ月
オンライン留学先
アメリカ・アーバインの
「AOI College of Languages」
費用 およそ10万円

 

 

現地の語学学校ならではの
やりとりが本留学の足掛かりに

息子が参加したのはアーバインにある語学学校が実施するオンラインプログラムです。英語力に全く自信がなかったため、一番下のクラスに参加しました。本来は中学卒業と同時にカナダへ渡り4月から現地高校に通う予定でしたが、コロナ禍で渡航が延期になったため急遽、エージェントのISS留学ライフさんにご紹介いただいた中から選びました。朝から勉強するという生活リズムを崩したくなかったため、その希望を叶えられる限られた選択肢の中から本人に合うものを選びました。具体的には、ずっとサッカーをしていたこともあり、オンラインではありますが、ヨガなど体を動かすクラスがあるプログラムが気に入ったようです。留学自体もサッカーチームの遠征で英国に2週間滞在したことがきっかけです。オンライン留学の生活は平日朝8時から始まり、午前中に毎日2クラス行われます。カリキュラムは自由に組み合わせることができ、各クラス5〜6人の少人数でほとんどが日本人。息子は社交的な性格なので、授業中も積極的に質問したり意見を言ったりしていました。現地では日本以上に積極的に参加できるかを重視するので、その雰囲気を事前に体感させることができたのは大きかったですね。本人としては、朝起きてすぐに参加できる気軽さが気に入ったようです(笑)。国内の英会話スクールにも通っていましたが、同程度の費用負担で家にいながらレッスンを受けられるのは魅力ですし、出国前に日本語がまったく話せない人と触れ合えたのも良かったですね。気軽に短期留学できるようになるにはまだ先になりそうですし、短期を考えている人にとってもメリットがあると思います。

専門家に聞いた「留学」事情

まずは短期留学感覚で
トライするのがオススメです

お話を聞いたのは…

◉若松千枝加さん

ウィッシュ・ウッド代表取締役。留学ニュースサイト「留学プレス」と留学ウェブマガジン「女子Ryu」の編集長。一般社団法人「日本認定留学カウンセラー協会」で幹事としても活動。

 オーストラリアとニュージーランド以外の、アメリカ・イギリスなど主要な留学先国は現地留学の受け入れを開始しています(2021年7月現在)。留学生受け入れを再開した現地校は、語学学校以外はほぼオンライン留学を実施していませんので、昨年に比べてオンライン留学を現地留学の代替として選択される方はあまり多くはありません。ただし、14日間の隔離期間があることで短期留学を諦めざるを得ない人の受け皿としては機能しています。※

 さらに、まだ海外で子供を生活させることに不安はあるけれど、ゆくゆくは現地留学をさせたいと考えるご家庭がその前哨戦としてオンライン留学を活用されたり、留学までは考えていないけれども海外への興味は持たせたいという方が利用されたりしています。1日のみの単発プログラムも多く、気軽に興味のあるものを選んで参加できるのがメリットですね。もちろん、費用も現地の中学に比べて格段に抑えられます。渡航費や滞在費、生活費などが不要ですし、授業料も安いため、トータルコストは現地留学の1割程度で済みます。現地プログラムの認知度を上げるために、特に長期休暇期間に無料でオンラインプログラムを提供しているケースもあります。

 今後、ワクチン接種が進み感染状況が落ち着いて海外旅行が盛り上がりを見せれば留学も活発になることが予想されます。それを見据えて、オンライン留学は多様性を見せ始めています。今回ご紹介した語学学習を目的としたもの以外に、海外で活躍する各分野の日本人に話が聞けたり、小学生から参加できるインターンシップ型のプログラムがあったりします。これからのオンライン留学は単なる代替手段ではなく、内容の面白いものが新たな教育ツールとして求められていくでしょう。

※ 外務省は’21年7月現在、米国・カナダ・欧州各国などCOVID-19感染危険情報レベル3に該当する159カ国・地域への渡航中止勧告を発令中。ただし、文部科学省は同年夏以降、留学期間1年間の海外留学の場合は、レベル3であっても独立行政法人・日本学生支援機構の奨学金支援を再開しています。(取材時)

オンライン留学の種類には何がある?

小中高生向けは「ホームステイ型」「ホームステイティーチャー型」「語学学校のクラス参加型」の3タイプが主流

Type1. 
ホームステイ型

日本人留学生を受け入れたことのあるホストファミリーとオンラインで交流ができるもの。日本人スタッフもファシリテーターとして参加するため、無言で気まずい思いをすることもありません。

たとえば……
海外の教育プログラムメーカーのSKYUS(http://www.skyus.global/ja/)が実施しているホームステイは小学4年生以上から参加可能で、4〜6年生は保護者の同伴が必要です。通年開講されており、料金は95ドルからです。

Type2. 
ホームステイティーチャー型

留学生をホストとして受け入れ、自宅で語学や文化、歴史などを留学生に教えるホームステイティーチャーとオンラインで繋がるプログラム。世界各国にいてジャンルも豊富なため、興味のある地域やジャンルを選んでカスタマイズできるのが魅力です。

たとえば……
Once in a Lifetime(http://www.once-in-a-life-time.com/)が実施しているプログラムでは小学生から参加可能で年齢も相談に応じてくれます。通年開講で費用は10レッスン9万円からになります。

Type3. 
語学学校のクラス参加型

他の留学生とともに現地にある語学学校のオンライン授業に参加します。他国からの参加者との交流や、授業進行の速度や先生の雰囲気が体感できるため、現地留学の擬似体験としてもオススメです。ただし、自分からどんどん質問や発言をしないと置いていかれますし、マンツーマンでないためサボりやすく、途中脱落者が多いのも事実。子供自身の積極性が問われます。個人的には語学学習の初心者は、ホームステイ型やホームステイティーチャー型、もしくは語学学校のマンツーマンレッスンから始めて、自信がついたらクラスに参加するという方法がいいと思います。

たとえば……
ウィッシュインターナショナル(http://www.wish.co.jp/)のアメリカ本土プログラムは、7〜9歳を対象に週3回夜8〜9時(日本時間)に開講し、費用は1週間で2万9000円から。ウインテック留学センター(http://www.wintechjapan.com/)ではレッスン時間が30〜60分で選べるハワイプログラムや、毎週日曜に開講する高校生以上向け韓国プログラムもあります。通常の学業と並行して学習できる時間帯なのもポイントです。

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イラスト/Uca 取材・文/馨音 編集/羽城麻子

VERY NAVY10月号『気になるオンライン留学 本当のところ』より。詳しくは2021年9/7発売VERY NAVY10月号に掲載しています。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。