SHELLYさん「パートナー公表の理由と選択的夫婦別姓への想い」
※コラムはVERY2021年9月号(8月5日発売)掲載時のものです。
先日、また「夫婦同姓は〝憲法に違反しない〟」という決定が出ましたね。今回の裁判は民法について合憲か違憲かという判決なのでそこは理解しつつも、新聞などでの選択的夫婦別姓自体についての調査では賛成派が過半数に上ることが多かったこともあり、個人的には残念な決定だなと思いました。夫婦別姓反対派の意見として「家族が同一の姓でないと一体感が失われる」とよく言いますが、私の父母も姓は違うはず。はず、というのは、アメリカ人の父と結婚した日本人の母が今、戸籍上何という名前なのか、私がよく知らないからです(笑)。どんな名前であろうと、母は母であり、私は母の娘。名前が違うからといって家族感が薄いなんて、一回も思ったことはありません。結婚していた時は、私が外国籍だったこともあり娘たちと姓が違っていました(実は日本においても、外国籍の人と結婚すれば別姓を選択できるのです)。でももちろん、お互いに親子感が減るなんて感じたことはありません。
そもそも、今議論されている「選択的夫婦別姓」については、全員が別姓にするということではありません。選択的夫婦別姓が認められているアメリカでも、実際別姓を選択する人は2、3割程度。多くの夫婦は同姓にしているし、-(ハイフン)で姓を併記したりしています。でも、別姓が認められているのといないのとでは、大きな違いがあると思うんです。彼の姓になりたいというならもちろんそれもOK。でもアイデンティティがなくなると感じたり、仕事に支障をきたすという人は別姓を選択できたほうがいいんじゃないかな。
それに、今の日本で「男性の姓にする」ことは、事実上の家父長制を認めているように思えてしまう部分もあります。女性は夫の姓を名乗り、夫の実家に気を遣って正月には優先して帰省して……。本来結婚して新しい戸籍で家族を作るはずなのに、夫の家族に組み込まれてしまうような感覚、味わったことのある人もいるんじゃないでしょうか。でも、もしこれが別姓だったら?と想像せずにはいられません。
「日本の選択的夫婦別姓に関する法律が変わるには、まだ時間がかかりそうだ」と専門家が語っていましたが、個人的には少しでも早く変わってほしい。そのために、まずは違和感を声として上げていったほうがいいと思うんです。たとえば、SNS上での「#なんでないの」のムーブメントが後押しとなって緊急避妊薬について本格的に議論されたケースもそう。デモに参加しなくたって、アクティビストになれる時代。私たちのために、娘の将来のために、これからも声を上げて、娘たちのときには夫婦別姓も選べるようになっていたらいいな。
ちなみに私はというと、離婚を経験して「結婚」という形には魅力を感じなくなってしまって。実は今、お付き合いしているパートナーがいます。離婚後に出会い、話し合うなかでこの人とならと思えたから、時間をかけて慎重に、子どもたちとの関係も作ってきました。でも彼は子どもたちの「新しい父親」ではなくて、あくまで父親は元夫。子どもは彼をあだ名で呼ぶし、元夫の家には変わらず行きます。子どもたちには、「愛は増える」と伝えています。私の子どもたちへの愛が新しいパートナーに分けられるのではなくて、新しく愛が増えたんだよ、と。彼も新しい父としてではなく、新しい家族として子どもたちを愛していく。できればその愛してくれる人は入れ替わらないほうがいいだろうから、2人で努力したいなと思っています。シングルマザーの恋愛については、いろんな意見があることも知っていますし、隠すこともできたかもしれないけど、私は子どもたちの前で嘘をついているところを見せたくなくて。夫婦別姓だけでなく、事実婚、同性婚などいろんな家族の形が認められるようになってほしいし、私もそのために発信を続けていけたらなと思っています。
次のページでは、パートナーの存在を公表したSHELLYさんに公表に至った気持ちや、現在の心境を改めて伺いました。
――SHELLYさん、新しいパートナーができたと伺いました。公表しないという選択もあったと思うのですが、公表しようと思った経緯を教えてください。
SHELLY(以下S):何かの話になった時、嘘をつかなければいけないのが心苦しかったんです。それにまず子どもたちに、「(パートナーがいることを)周囲に話しちゃダメだよ」と言うのは教育的に良くないかなと思って。公表して自然に生活できたほうがみんないいのかなと思って、タイミングが合えば公表しようと思っていました。
――お子さんたちはどんな反応を?
S:最初、関係が安定するまでは、会わせるつもりはありませんでした。子どもたちは離婚後ずっと週1、2回、元夫のところに泊まりに行っていて、それは今後も続くのですが、その間にデートをしていました。この人ならと思えてから、何度も子どもたちと話し合い、最初は短時間から一緒に遊ぶようにして、ちょっとずつ時間を増やしていきました。子どもたちは最初から楽しく遊べはしたのですが、いきなり彼を生活圏に入れてしまうと「ママが取られると思ってしまう」と本で読んで。そうした危機感を持たせないためにも、徐々に慎重に慣らしていきました。そして、彼のことをお友達ではなく、特別なお友達で他の人とは違うんだよ、と紹介しました。
――お子さんへのケアで心掛けたことはありますか?
S:「お母さんにとって彼は大事な人だけど、今後一生あなたたち以上に大事な人は出てこないよ」という会話は意識的にするようにしていました。順位をつけるのは良くないかもしれないけど、子どもたちが絶対的に1位でいいと思っているので。
――「再婚」についてはどうお考えですか?
S:そうですね。結婚という形をとるつもりはありませんし、今後そうした発表をする機会もないと思います。もちろん、前回も離婚しようと思っていないのに離婚したから絶対とは言えないんですが…でも、今後一緒にいたいと思ったから今回公表しました。
――お子さんのパパには報告しましたか?
S:付き合う段階で報告しました。パートナーができたからといって、子どもたちのパパが変わるわけではないので、これからもそこの関係は変わりません。
――日本だと、シングルマザーの恋愛には世間の目が厳しいように感じることもあります。だから今回の公表には勇気がいったのではないでしょうか。
S:はい、シングルマザーには厳しいように感じます。デンマーク人の友達が、「うちの国では子連れでもナンパされるよ。だってパートナーと一緒じゃなければいるとは限らないじゃん」と話していて、それはすごいなと思いましたが(笑)。日本では、女手ひとつで、みたいなある意味母性神話があるように感じますね。
――シングルマザーだと恋愛を失敗できない…というプレッシャーもありますよね。
S:そう、だから慎重にはなるしプレッシャーもあります。今回こうして公表したけれど、失敗することもまた、あるかもしれないですし。
――それはどんな人も同じですよね。また新しい家族の形になりますね。
S:「お父さんお母さんがいて、血のつながった子どもがいる」、という形がいわゆる家族とされているけど、世の中にはいろんな家族がいると思います。お母さんが2人いるところも、お父さんが違うきょうだいもいる。子どもたちには、お父さんが変わったわけではなくて、お父さんはお父さんで、愛というのは増えるんだよと教えたいと思います。うちの場合、あなたのことを愛してくれる大人が周りにたくさんいるんだよと、新しい家族の形で子どもたちに伝えたいですね。そのためには、大人たちがしっかり関係性を作っていくことが今の務めだなと思っています。
――また本誌でも話を聞かせてください!
S:こんな話に興味を持ってくれてありがとうございました!
◉SHELLY|シェリー
1984年生まれ、神奈川県出身。14歳でモデルとしてデビュー以後、タレント、MCとして幅広く活躍。5歳と3歳の娘の母。
撮影:須藤敬一 取材・文:有馬美穂 編集:羽城麻子
*VERY2021年9月号「シェリーの「これってママギャップ?」」と語り下ろしインタビューで構成。*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。