【アイドルとはもっとも愛される人のこと】職業・佐藤アツヒロを語る【撮影裏話付き】

これまでのアツヒロ論を振り返って、いちばん伝えたいもの。それを探る回となりました。 インタビュー、撮影の流れである程度形は決めていたものの、ひとこと、ひとことに込められた思いを書き出していくと見えてきた、また新しいアツヒロ論の形。何度も選び、練り直し今回の形になりました。皆様への深い感謝と共に、アツヒロ論の集大成をお届けします。

職業・佐藤アツヒロ

最近、変わってきたのかな。ほめられることが怖かったけれどそれで頑張れる自分ができてきた

佐藤 「今の自分を好きになる生き方をしたい」。それはずっと考えてる。昔の自分も好きだけれど、今日の俺、これからの俺は、今の俺からつくられると思っているから……。そこはずっとぶれないできているけれど、周りからの評価の受け取り方が、少し変わった気がする。昔はほめられると、すぐ自分が油断している気がして怖かった。でも、ここ数年で自分の発想を生かす仕事が増えて、その意識が少し変わってきた。皆の反応を知りたいからこそ、ほめられることによって、それが次にいく力になる。例えば、ほめ殺しをされたとしても、今の自分には、それさえも力になる。俺は、いつだってほめられたい、今は(笑)。

(撮影裏話)アツヒロ論を象徴するものとして、沢山の小道具を準備していました。こちらはその一部。ときを刻むもの、アツヒロさんの世界観を体現するものなど、いろいろ揃えました。

編集部 Martで連載をさせていただいて2年5カ月。ご自身の中で、ほかに変わったと感じることはありますか?

佐藤 「俺、やっぱりものづくりが好きなんだ」「いつもなにかをつくっていたいんだ」ということが、改めてわかったことかな。思えば、昔、ソロコンサートでは、構成はもちろん、グッズに関しても制作からアイデアを出していた。それは、今も変わらず続けているし、イベントにも反映されている。日々更新しているジャニーズwebなどに関しても、同じ。舞台の演出では、作品ができあがる工程を実感できるから、ものづくりの極みだと思っている。そういう、俺のなかのクリエイターとしての部分を再認識したり、そこにつながる仕事をしていきたい、とより強く思うようになったよ。

アイドルに年齢は関係ない。この人いいなあ、と愛される人が「アイドル」と呼ばれるのだと思う

佐藤 今回のタイトルにもなっている、「職業・佐藤アツヒロ」というのは、確かにそう思っているんだけど、自分では、アイドルという言葉のイメージに、まったくこだわっていない。
気づいたらジャニーズ事務所に居た俺。当時感じていたのは、ジャニーズは、男として、自分の好きなもの、かっこいいものを追求している人たちの集団だということ。少年隊のダンスはすごかったし、男闘呼組の色気も半端じゃなかった。それなのに、デビューした自分にかけられる言葉は「アイドル」ばかり。外から見たらそうなのかもしれないけれど、俺の意識とはだいぶ違う。そんなときに出合ったのが、辞書に書いてあった言葉。

編集部 辞書にはなんと?

佐藤 「アイドルとは、もっとも愛される人」と書いてあって、自分で決めることじゃないんだとわかって、ほっとした。今では、周りから「アツヒロさんはアイドルだよね」と言われても、自分の頭のなかでは「もっとも愛されている人です」と変換できるようになった。だから、“若いからアイドル”とか、そういう定義でもない。応援してくれている方たちに対しても、感謝の気持ちを伝えたい。例えばイベントひとつとっても、外から見たらアイドルのように見えるかもしれないけれど、俺の中では“ファンの皆さんへの感謝を伝える大切な場」なんだよね。

(撮影裏話)その先のアツヒロさんを表そうと、実は眼鏡も用意させていただいておりました。誌面掲載には至りませんでしたが、左側のふちに特徴のあるものをかけていただき、撮影しました。

ぶれたくないから、迷ったら「信念」に従う

編集部 アツヒロさんの考える「自分軸」とはなんでしょうか?

佐藤 うーん、正確にいうと、俺の場合は信念かな。自分のものさし=信念のこと。ぶれたくないから、前にも言ったけれど、自分なりの辞書をつくって、迷ったときに、それを言葉や行動で表す。でも、その辞書も成長するんだよね。いろんな経験で、ページが増えてきた。それに、他人と一緒のときは、辞書の使い方もちょっと変わる。こうあるべきだ、こうありたいという思いはあるけれど、例えば、誰かと一緒にものづくりをするときは、自分の考えを一度消して、新しくつくりだすようにしている。内海君(光GENJIのリーダー)と一緒に仕事をするときは、お互いの考え方が違うので、なぜそれを言ったのか背景を探り、その中から目的に合うものをピックアップして「これはありだね」と、アイデアをつくりあげたりする。お互いに考えてその場にのぞんで発言しているわけだから、一度自分の中に受け止めて探るようにしているよ。ちなみに、ジャニーズwebの「直感Q&A」(アツヒロさんがファンの皆さんにお返事するシステム)でも、今思う気持ちを伝えたい、感謝を伝えたい、嘘はつきたくないという信念でのぞんでいるかな。よく「好きの中の好き」「優しさの中の優しさ」という言葉を使うけれど、それは、俺の信念そのものの表現かもしれない。

自分の悩んだ気持ちを言葉にする。俺にとって価値のある作業だからずっと発信していきたい

佐藤 「直感」という言葉をよく使うんだけど、それって思いを自分の言葉にするときに、ひらめくもの。突然やってきて、なんとなくふわってしていたものにピントが合って、ぴたっと気持ちが言葉にはまる。でもこれって、日々、自分でいろいろ感じるからこそできること。だからこそ、つくらない、心に鎧を着せない自分でいられる時間が大切。

編集部 Martの連載も、アツヒロさんの直感からひらめく「言葉」を大切にしてきました。振り返ってどう思われますか。

佐藤 「俺の気持ちをのせた言葉は、ささるんだな」って、ふと思ったんだよね。それと同時に、悩んで気持ちを言葉にする作業は間違いじゃなかったんだ、そこで生まれた言葉には価値があるんだと思えた。Martの連載は、俺にとって、なくてはならなかった時間でした。普通は3時間もインタビューしないし、声が枯れるまで喋らないからね(笑)。

編集部 Mart読者の皆さんへ、メッセージをいただけますでしょうか

佐藤 場所が変わっても、俺の考え方や言葉はみんなの記憶には残っているから、これからも俺が生きている中での教訓や考え方は、発信していきたいなと思っています。また、僕を見つけてください。

〈Profile〉
◆佐藤アツヒロさん
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1973年神奈川県生まれ。1987年、光GENJIとしてデビュー。2000年『ララバイまたは百年の子守唄』で初舞台を踏み、以降、数々の作品に出演し舞台俳優として高い評価を得る。12月7日(火)~21日(火)、帝国劇場で初の上演となる『ABC座ジャニーズ伝説2021 at IMPERIAL THEATRE』に特別出演。クリスマスイベント『KOHJI×aTsuHiRo 2021 CHRISTMAS EVENT 時をこえたフェスティバル♪~過去と未来の真ん中で~』開催決定。2022年3月12日(土)~21日(月・祝)、主演舞台『行先不明』の上演(名古屋・御園座、東京・ サンシャイン劇場)も決定。詳細は Johnny’s netを参照ください。

Mart2021年12月号 佐藤アツヒロのひとり座談会 vol.29(最終回) より

編集アシスタント/加藤文惠 編集/菊池由希子 WEB構成/長南真理恵