中村蒼さんのマイルール「悩んだ時こそ“基本に立ち返る”を大切にしています」【ドラマ出演記念インタビュー】

NHK総合で12月18日・25日の午後9時から放送されるドラマ『風の向こうへ駆け抜けろ』。新人女性騎手が仲間と共に桜花賞に挑んでいく物語で、廃業寸前の厩舎(きゅうしゃ)を営む調教師でストーリーのキーパーソンとなる緑川光司を演じた中村蒼さん。作品に込めた思いや、伝えたいメッセージ、そして撮影の裏話まで、ドラマについてたっぷりお話を伺いました。

「“嫌な人”に見えないように」役作りに込めた想い

今回のドラマ『風の向こうへ駆け

今回のドラマ『風の向こうへ駆け抜けろ』で緑川光司役を演じられてみていかがでしたか?

僕が演じた緑川は、平手友梨奈さん演じる主人公の瑞穂によって、徐々に競馬への思いを再生していく役。序盤と終盤でかなり心境が変化するのですが、このドラマは前編・後編の2話なので…急に人が変わったみたいにならないよう、緑川の心境の変化が少しずつ表現できるように演じました。緑川自身は、もともとやる気がなかったわけではなくて、昔は希望に満ち溢れていて、心根は優しい人。厩舎のメンバーには世間から厳しい目を向けられるような過去をもっている人たちもいるのですが、そういうメンバーが集まっているのも、緑川自身が偏見を持たない人物であることの現れかなと思っています。とても真っ直ぐな人なので、“嫌な人”に見えないように演じることも心掛けていました。役作りのひとつで髭を作ったのも新鮮でしたね。髭を生やして作品に出ること、今まであまりなかったんです。

中村さん自身が、緑川に共感できるところはありましたか?

緑川は、現役時代は騎手としての才能に溢れていて、若くして成功したけれど、競馬界の妬みもあり、足を引っ張られて挫折した過去を持っている男。結局は全部自分の蒔いた種なのですが、そういうのってどの世界でもあるような気がします。人の成功を素直に喜べなかったり、応援できなかったり。全部自分のせいなのに受け入れられない部分は共感というか、日常でもあることだなと思いました。でも僕から見たら、緑川は騎手としての実力も、周りの信頼を集める人間力もあって、結果再生して厩舎自体を蘇らせる熱い人。もっと自信を持って生きてもいいのになって思っていました。頼り甲斐があって、人から愛されて、リーダーシップや人を押し上げられる力を持っているのは、演じていて羨ましかったです。

年齢を重ねて見えてきた“求められること”の変化

主演の平手友梨奈さんとは初共演

主演の平手友梨奈さんとは初共演でしたね。

すごく楽しかったです。瑞穂にある逞しさをご本人からも感じられて、リンクしている部分があるな、と。どうすればより良くなるか、ひとつひとつのシーンについて監督と話している姿も目にして、芝居に誠実な方だなと思いました。

若い世代、年上世代とさまざまな年代の俳優さんが出演する作品ですが、撮影現場で意識したことはありますか?

僕自身、少し前までは周りに翻弄される役が多かったのですが、今作は緑川厩舎を営み、瑞穂からは先生と呼ばれる役。この役柄を演じながら「そういう年齢になったんだな〜」としみじみ感じました。これまでみたいに現場であまり人と話さずにいるわけにはいかないな、と(笑)。無理して盛り上げたりすることはなかったですが、いつも以上にコミュニケーションを取るように意識していました。

自分が年齢を重ねるにつれて、周りからの視線が変わってきたなと思っています。若いときは最悪自分がダメでも、周りに助けてもらいながらみんなで作っていけたらいいと思っていたけど、今は毎日試されているというか…。「どういうものを見せてくれるんだろう」という期待を込めて見られていると感じるんです。例えば、スタートの時点で求められる基準がすごく高くなっている気がしていて。そういうのはかなりプレッシャーになるし、正直嫌ですけど(笑)。でも、年齢によってやるべきことや求められることが変わってくるのは、きっとみなさんそうですよね。

悩む時こそ「基本に立ち返る」のがマイルール

プレッシャーを感じたり、悩んだ

プレッシャーを感じたり、悩んだりしたときは、どう対応していますか?

僕なりの対処法は、基本に立ち返ること。悩んでいる時って、何か変わったことをするのが打開策になるんじゃないかって考えて、突拍子のないことをしたり、奇を衒いがちですが、基本を押さえていないと悪目立ちするだけだと思うんです。最近は、基本を大切にしながら+αで相手の想像がつかないことをやってみようかなっていう振り幅が生まれてきました。あとは、周りに頼りますね。悩んだときは自問自答して自己解決する派ですが、芝居は周りあってのことなので。周囲の力を借りながら、まずはそのときの自分にできるベストを狙っていくようにすると、余裕を持って芝居に臨めるんです。

今回のドラマ撮影で特に大変だったシーンは?

後半で自ら瑞穂に指導するシーンがあり乗馬にも挑戦したのですが、馬に乗るのは難しかったです。馬が歩く程度のスピードなら乗りこなせるのですが、騎手としての乗り方は独特で、競馬場の長いコースを走るのに悪戦苦闘しました。

“好きなことに夢中になる強さ”を感じてほしい

CLASSY.の読者であるアラ

CLASSY.の読者であるアラサー世代の働く女性に向けて、このドラマでどんなメッセージが伝わったらいいなと思いますか?

主人公の瑞穂は、怪我や成績不振に悩みながらも、純粋に競馬が好きという気持ちが強い人物。愛と熱意を持って挑戦し続ける彼女の姿に、周りも影響を受けて変わっていきます。そんな作品に携わって改めて、自分の好きなことに夢中になる強さを感じました。すべてはそこに集約されると思うから、それぞれの仕事に夢中になって、楽しく向き合うことの大切さを感じてもらえたらうれしいです。

土曜ドラマ『風の向こうへ駆け抜けろ』
NHK総合 2021年12月18日(土)、25日(土)21:00~22:13(前・後編)

古内一絵さんの同名小説(小学館)が原作。平手友梨奈さん演じる新人女性騎手・芦原瑞穂の成長再起と中村蒼さん演じる緑川光司を含む廃業寸前の緑川厩舎で働く人たちの再生を描く物語。ひたむきな情熱が、人生を諦めていた人々の心に火をつけ、廃業寸前の厩舎が桜花賞に挑んでいく—。

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PROFILE

中村 蒼●1991年3月4日生まれ。福岡県出身。A型。2006年、主演舞台「田園に死す」で俳優デビュー後、数々のドラマ、映画、舞台に出演。近年は、NHK連続テレビ小説『エール』、テレビ東京『神様のカルテ』、日本テレビ『ネメシス』など数多くの作品で活躍。2022年5月6日(金)より、主演舞台『ロビー・ヒーロー』が新国立劇場にて開幕する。

<衣装詳細>
ジャケット¥71,500パンツ¥37,400(ウィーウィル tel.03-6264-4445)ニット¥35,200(ジョン スメドレー/リーミルズ エージェンシー tel.03-5784-1238)

撮影/吉澤健太 ヘアメーク/Kazuya Matsumoto(W) スタイリング/秋山貴紀 取材・文/坂本結香 構成/宮島彰子(CLASSY.ONLINE編集室)