メールやSNSなどを使ってプレゼントを贈れるソーシャルサービスが増え始めています。 1人ではもちろん、複数人の共同でも贈れるほか、少額のプレゼントも充実しています。 なぜ今、広がってきているのでしょうか? 経済アナリストの森永卓郎さんに解説していただきました。
ソーシャルギフトとは?
相手のSNS のIDやメールアドレスがわかれば、オンラインで気軽にプレゼントを贈れるサービス。贈り主は「ソーシャルギフトサービス」を利用して贈りたいギフトを購入し、決済すると受け取り用URLが発行されるので、それをメールやSNSで相手に送信。受け取る側は送られたURLを開き、店頭受け取りを選ぶか、住所などの必要事項を記入して宅配でプレゼントを受け取れます。
森永卓郎さんが考える!ソーシャルギフトが広がる理由
- 送付先の住所を知らなくても贈れる
- カジュアルなものもあり身近な人に贈りやすい
- スマホでワンクリックで贈れる
- ものだけでなくサービスなど贈れる商品が多様
→贈りものが社交辞令の「建前」から 身近な人に気持ちを伝える「本音」に
日本の贈り物の文化が新しい形に変化
SNSを通じて気軽に贈りものを届けられるソーシャルギフトが、静かなブームになっています。このブームはなぜ起きたのでしょうか。
もともと日本には、世界に冠たる贈りもの文化がありました。お世話になっている方々に、お中元やお歳暮を贈るというのがその典型です。
ところが、その贈りもの文化に変化が表れてきました。まず1つ目の変化は、現物を送ることが難しくなってきたことです。その理由は、送付先の住所や電話番号がわからないからです。昔は学校や会社に、全員の住所や電話番号が掲載された名簿があり、全員に配られていました。そのため、贈りものの送付先の住所を知ることは簡単だったのです。ところが、今は個人情報保護が重視され、名簿自体が作成されなくなりました。それに対して、ソーシャルギフトは、相手のSNSのIDさえわかっていれば簡単に贈ることができます。
身近な人にワンクリックで手軽に贈れる便利さも
2つ目の変化は、贈る相手です。昔は、上司や取引先、恩師などに礼儀的な贈りものをすることが圧倒的に多かったので品物にも、それなりの格式が求められました。だから、少なくとも数千円の商品が、一流百貨店の包装紙に包まれていなくてはなりませんでした、しかし、ソーシャルギフトの世界では、100円のコンビニコーヒーからと手軽で、身近な人に贈りやすくなっています。
3つ目の変化は、手続きが簡便になったことです。これまでお中元やお歳暮は、百貨店に出向いて、送り状を書く必要がありました。しかし、ソーシャルギフトは、ワンクリックで手続きが済んでしまうのです。
4つ目の変化は、商品の多様性です。これまでの贈りものは「もの」が中心でしたが、ソーシャルギフトは、飲食や宿泊なども選べます。
こうした変化を踏まえると、ソーシャルギフトの普及によって贈りものの世界が多様化し、よりカジュアルな方向に変わっているのだと思います。別の言葉で言うと、これまでの贈りものが社交辞令の「建前」だったのに比べ、これからは、身近な人に気持ちを伝える「本音」に変わっていくのだと思います。
解説いただいたのは
森永卓郎さん
最近気になる NEWSな言葉 経済アナリスト。日本専売公社(現日本たばこ産業)ほか数々の企業に勤務後、現在は獨協大学教授。専門分野はマクロ経済、計量経済、労働経済、 経済政策。『がっちりマンデー!!』(TBS)、『情報ライブミヤネ屋』(YTV)などにレギュラー出演中。むずかしい経済を明快に解説するわかりやすい語り口に定評がある。
※掲載中の情報はMart誌面掲載時のものです。
イラスト/熊野友紀子 編集/倉澤真由美 WEB構成/長南真理恵
2022年1月号
最近気になるNEWSな言葉「ソーシャルギフト」より