井之脇海さん「役者としての今の自分は、登山で言えば“5,6合目”」【ドラマ『失恋めし』出演記念インタビュー】

ドラマ『義母と娘のブルース』や『俺の家の話』をはじめ、多くの作品で独特の存在感を放つ俳優の井之脇海さん。1月14日(金)よりAmazon Prime Videoで配信されているドラマ『失恋めし』では、広瀬アリスさん演じる主人公がほんのり恋心を抱く花屋の青年役を、持ち前の空気感で好演しています。今年、26歳を迎えた井之脇さんが見つめる未来とは? ドラマの見どころとあわせて、たっぷりお話を伺いました。

PROFILE

井之脇海(いのわき かい)●1995年11月24日 生まれ、神奈川県出身。 2007年、映画『夕凪の街 桜の国』でデビュー。 翌年公開した映画『トウキョウソナタ』で、『第82回キネマ旬報ベスト・テン』新人男優賞を受賞。 以降、映画『告白』や、『帝一の國』、NHK連続テレビ小説『ひよっこ』、TBSドラマ『義母と娘のブルース』などに出演。2021年には映画『ミュジコフィリア』で初主演を果たし、若手演技派俳優として今後ますますの活躍が期待される存在。2022年1月14日(金)よりAmazon Prime Videoで配信中の『失恋めし』では、“主人公がほんのり恋心を抱く花屋の青年”を演じる。

『失恋めし』の魅力は登場人物たちの“不器用な恋”

–『失恋めし』井之脇さんが演じたのは、花屋で働く好青年。とても自然な演技で、見ていて心が癒されるような気持ちになりましたが、役を演じるにあたって特に意識した点はありますか?

この役、台本を読んだ時に僕が演じている姿が割とすっとイメージできたんですよね。なんか…自分のキャラクターと近いような感覚で。僕もちょっと不器用な人なので、そこをうまく反映できたらと思って現場に臨みました。台本を読んで素敵だなと思ったのは、出てくるのが不器用な人たちで、恋に気づいてるのか気づいていないのかというところで相手を思いやるやりとりで。それが器用な感じにならないように、上手な恋にならないように、僕なりの不器用さで一つ一つのシーンに臨みました。

–全10話の『失恋めし』の中で、特に気に入っている回はありますか?

実は、まだ僕は編集まで仕上がった状態では全話を見れていなくて(注:取材時)。でも大九明子監督の作品は昔から見てきていて、その世界観がとても好きだったんです。大九ワールドと言いますか、登場人物たちがとても愛くるしい世界で演じてみたかったので、お話いただいた時はすごく嬉しかったです。大九さんの手のひらの上で好きに遊ばせてもらおうと思って、現場に臨みました。

ロールキャベツが熱々すぎて…撮影中のプチ事件簿

–撮影はアットホームに進みましたか?

そうですね、監督も広瀬さんもたくさんコミュニケーションとってくださる方々だったので、現場はとても円滑に進みました。和気藹々と、現場で起こる小さな事件とかを大切に丁寧に拾いながら、作り上げていった感じですね。

–撮影していたのは昨年の夏だと聞きました。撮影現場で思い出に残っているエピソードは?

一番最初にパッと思いつくのは、ドラマの終盤で、広瀬さんと僕がロールキャベツを食べるシーンですね。熱々のロールキャベツを食べるのですが、マグマのように本当に熱くて、二人ともセリフが喋れないくらい。それで現場のみんながずっと笑っていたというエピソードですね(笑)。正直、「こんな熱いの食べさせる?」と思うくらい熱くて、大九さん意地悪だなと思いました。大九さんはそれを見ながらケタケタ笑っていましたけどね(笑)。

–このドラマでは失恋した皆さんがそれぞれの失恋を癒すべく“失恋めし”を食べるわけですが、井之脇くん自身が“失恋めし”を食べるなら、何を選びますか?

僕、特に節制しているわけではないんですが、普段って質素な食べ物ばかり食べているんですよ。オートミールとか鶏肉とかささみとか納豆とか豆腐とか。甘いものも、登山の時以外ほとんど食べなくて。普段お菓子を食べるとしてもしょっぱいものの方が好きで、ポテチとかばっかりで。なので、失恋したら、普段食べないような…エクレアとか食べたいです。鍋いっぱいのカスタードとか!(笑)

ちょっとコミカルで可愛らしい--花屋の青年役に込めた想い

–作品全体にどこかほっこりというか、優しい雰囲気が流れているように感じたのですが、井之脇くんがこの作品で一番注目してほしいポイントはどこでしょう?

んー、僕視点でいくと、花屋の青年が不器用ながらに一生懸命お仕事をしていく中で、広瀬さん演じるキミマル先生と出会って惹かれていくんですけど、堂々と恋をしているわけじゃなくて、どこかおどおどしているところがちょっとコミカルで可愛らしいのかなと思っているんです。不器用な感じを僕なりの表現で演じているので、ぜひ見ていただけたらなと思います。

–井之脇くん自身のパーソナリテイを反映して演じていたとのことですが、今回の役は演じやすかったですか?

そうですね。自分と似てるなと思う部分もあったりしたので。自分で言うのは恥ずかしいですけど、誰かを支えるような役だったりサポートする役が自分には合ってるんじゃないかなって思っています。人間観察するのが好きだったり、学生時代も学級委員やってたりしてたんで、誰かの変化に気づいてサポートするみたいな役割は性に合ってるのかなと。なので、そういう立ち位置の役柄のお芝居は、やりやすいかもしれないですね。

今の自分は、登山で言えば“5,6合目”くらい

–今年で26歳。今の役者としての自分を登山に例えると?

感覚としてはそれぞれの作品が、一つ一つの小さな山なんですよね。なので、役者人生を全体で見て考えるとちょっと難しいですけど…今、なんとか5,6合目くらいまでは来てるんじゃないですかね。ここからが多分きついんだと思います。山も6合目7合目くらいから急勾配が出てきたりするじゃないですか。5,6合目くらいまでは車で行ける山もありますし。今の僕は、車とかを使わずに自分の足でコツコツとゆるい斜面を登りながら体を温めて、一歩一歩登ってきたところ。ようやく半分近く来て、ここからがさあハードだぞ、って印象です。

–今までよりもこれからの方が俳優人生で大変なことがありそうですか?

年齢的にも20代後半から30代前半って、一番演じられる役の幅が広い気がしていて。若者の役も出来るし、もう少し年齢を重ねた役もできると思うんです。そうすると、自分にはどれくらいできるだろうというのに挑戦する感じになるんじゃないかなって。でもさっき言った通り、役者としての経験をあんまり全体で見てないというか、一個一個の山だと思うので。美ヶ原くらいのハイキングのように気楽に取り組める役もあれば、劔岳のような難しくて険しい役もあると思いますし。

–どちらかと言えば、毎回違う山に登っている感覚なんですね。

そうです。一個一個マニュアルが違うというか、毎回一から始める感じです。どんなマニュアルで取り組むかを見つけて、組み立てるところからスタートするんです。常に新しい取り組みっていう感じでなんですよね。でも、取り組む前には「これは僕にはないものばかりで、どう取り組めばいいんだ」と思っても、取り組んでみたら意外とすっと入れたりすることもあるんですよね。だから本当に作業化はできなくて、ひとつひとつの仕事と向き合って考えて、っていう感じです。

©木丸みさき・KADOKAWA/ytv

ドラマ「失恋めし」1月14日(金)よりAmazon Prime Videoにて独占配信!

広瀬アリスが主演し、木丸みさき氏のコミックエッセイを原案としたドラマ「失恋めし」は、全10話で紡がれる“おいしい失恋ドラマ”。広瀬演じる主人公・キミマルミキは、地元紙に“失恋めし”というマンガ連載を持ち、日々連載のネタとなる失恋エピソードを探しているイラストレーター。各話ごとに登場する失恋した人には、忘れられない思い出の味があるという設定で、その味をミキとともに味わいながら“失恋エピソード”を語り始める—。撮影は実在の飲食店で敢行し、各話ごとに、その店の人気メニューが登場。井之脇海さんは、“ミキがほんのり恋心を抱く花屋の青年”を好演している。

撮影/永峰拓也 ヘアメーク/AMANO スタイリング/清水奈緒美 構成/宮島彰子(JJ編集室)