38歳で第4子出産後、体が疲れやすく頭がうまく回りません【高尾美穂先生のお悩み処方箋】

産婦人科医の高尾美穂先生が、30~40代の人にはなかなか言いづらいお悩みに、優しくアドバイス!第5回は、38歳で出産後、産後の疲れが取れないYさんのお悩みです。


教えてくれたのは
高尾美穂先生
産婦人科専門医・婦人科スポーツドクター・ ヨガ講師。産婦人科専門医として、女性の健 康をサポートしつつ、それぞれのライフステージ・ライフスタイルに合った治療を提案す る一方、スポーツドクターとして、女性のプロアスリートへのサポートも行っている。

【相談テーマ】産後の疲れが取れず、頭がうまく回りません


相談者:Yさん(39歳)
神奈川県在住
16歳、14歳、6歳、1歳の子育て中の母
会社員(育休中)

産後の不調が続いたまま更年期に突入するのは危険!

Yさん:一昨年第4子を出産しました。コロナ禍で里帰りができず、産後すぐから動いていたせいなのか、38歳での高齢出産のせいなのか、体も疲れやすく、頭もうまく回りません。

高尾先生:産後の一番人の手が必要な時期に、Yさん一人で家事、そして4人の子どもの育児を抱えているというのは、大変な状況ですよね。コロナ禍で里帰りできなかったということですが、パパは育休を取りましたか?

Yさん:夫は育休を取るどころかむしろ仕事が忙しく、ほぼワンオペ状態なんです。

高尾先生:えっ……、それはきつい。

Yさん:第4子はすでに卒乳し、もう生理も戻っていますが、生理が前よりも重くなってしまいました。PMSによるイライラもあったり、生理が少量で10日くらいダラダラと続くこともあったりします。病院も受診しましたが、特に異常はないと言われました。生理前に「疲れているのに眠れない」ということもあって、そういう日はつらいです。

高尾先生:これだけ過酷なのに頑張らないといけない状況なので、産後の不調が続いてしまっているのでしょう。このまま更年期に入っていくと、更年期の不調につながりかねないので、その前に何とか立て直したいところですね。特にPMSが重い人は、更年期症状もまた重くなる傾向があります。Yさんが更年期で寝込むようなことがあったら家庭が回らないと思うので、今のうちにしっかりと体調をリセットしてください。

Yさん:どうすればリセットできますか?

高尾先生:必要なのは、人の手を借りてYさんが休むことです。身内を頼れないのであれば、ファミリーサポートセンターやシルバー人材センター、民間の家事代行サービスなどの活用を考えてみてください。お金はかかりますが、産後からしばらくの時期はお金を使ってでも体を休めて体調を取り戻すべき時期ですよ。日中の家事を全部やってもらって、自分と1歳児のケアだけすればいいという時間を定期的につくって、体を休めるようにしてください。

家事の勤務時間を決めて、あとは家族に任せましょう!

Yさん:日中の家事をやってもらえるのはもちろんありがたいのですが、私の場合早朝から夜遅くまで漫然と家事育児があって……。

高尾先生:例えばどんな感じですか?

Yさん:朝は5時起きで中高生の第1子、第2子のお弁当をつくっています。2人が学校に行くのを見送った後は、第3子の朝の支度や保育園の送りがあります。夕方も家事が2サイクルあって、1サイクル目は第3子、第4子のお風呂、夕食、寝かしつけ。これが終わったと思ったら、次は塾や習い事、部活動から帰宅した第1子、第2子の夕食やその片づけなど夜の家事があって、寝るのは1時から2時に。もうクタクタです。

高尾先生:朝晩ともに2サイクルは大変ですね……。でも家族みんなに対応していたらそうなってしまうので、なるべくYさんが動かなくていい工夫が必要です。まず必要なのはお子さん達に対する雰囲気づくりですね。

Yさん:雰囲気づくり?

高尾先生:大家族には大家族なりの暮らし方が必要です。子どもたちが遅い時間まで塾や部活動、習い事に没頭し、母親が一人でそれをサポートするというのではとても回りません。「うちは4人きょうだいの大家族なんだ」ということを理解してもらい、子どもたちにも家族の一員として家事などを担ってもらう。また、上の2人には、極力下の子たちと一緒に夕食を食べる時間に帰宅する努力をしてもらうといいと思います。

Yさん:朝晩のどこかが1サイクルになるだけでもだいぶ楽です。

高尾先生:そうですよね。だから「家族で一緒に食べる」が基本です。Yさんが動かなくていい工夫の2つ目は、主婦・ママとしての勤務時間=コアタイムを決めてしまうということ。

Yさん:勤務時間!いいですね(笑)。

高尾先生:「私は朝8時から夜20時までが勤務時間だから」と決めてしまい、そこからはみ出る家事は夫や子どもそれぞれにやってもらえばいいんです。帰宅が遅くなる場合は、ママがつくっておいた食事を自分で温めて食べ、食後も自分で片付けて皿洗いなどもする。お弁当も前日のおかずなどを自分で詰めてもらう。彩りやかわいらしさが欲しければ、自分でやればいいんです(笑)。

Yさん:少しでも自分でやってもらえると、かなり助かります。

高尾先生:20時以降はママとしても「時間外」なわけだから、下の子と一緒に寝るのもパパに任せていいと思いますよ。まずは子どもたちの協力的な雰囲気をつくり、それにパパもどんどん巻き込んでいってください。

アラフォーの復職は全力疾走せず慎重に!

高尾先生:今は育休中ということですが、復職のご予定はいつですか?

Yさん:今年の春には復職予定です。

高尾先生: アラフォーは更年期が始まる世代です。更年期は体にとっては曲がり角なので、無理して「バリバリ」戻るのは危険ですよ。自分の体調と相談しながら、無理のないキャリアプランを考えてくださいね。大家族が笑顔で過ごせるのも、Yさんの健康あってこそですよ。

【高尾先生の処方箋】産後の不調をリセットするためにできること

1:身内の手を借りたり民間の家事代行サービスの活用で体を休めて
2:子どもたちに家事負担をしてもらったり、生活時間をそろえる努力をしてもらう
3:主婦・ママとしての勤務時間を決め、時間外の家事・育児は子どもたちや夫に託す
4:復職は自分の体調と相談して無理のない働き方を

【相談を終えて】一人で頑張るのではなく、家族みんなで効率よく回したいです

どうしても自分のことは後回しになってしまい、疲れのサインも見過ごしてきましたが、この先の事を考えると今しっかりと体調をリセットしなければならないと痛感しました。

仕事復帰も時短勤務制度などを利用して家庭との両立をしていこうと思います。

自分一人で頑張るのではなく、家族にも体調管理の大切さ、「ママの勤務時間」をしっかり伝えて家族みんなで効率のいい時間をつくっていきたいと思います。これは、子ども達の自立にも大切ですよね。高尾先生、ありがとうございました!

長年使っていたコーヒーメーカーが壊れてしまったので先日ミルとタイマーつきのものを新調しました。前の晩にセットしておけば翌朝、自動的に淹れたてのコーヒーができるので、慌ただしい朝に少しですがゆとりができました。

長女と毎朝美味しいコーヒーを味わって一緒にホッと一息つきつつ、やる気スイッチを入れています。

撮影/中林 香 取材・文/須賀華子 編集/倉澤真由美