【LIFE STYLE】パリ近郊 花とともに暮らす(64)萌える季節

ピピピ、ツピッツピッ。窓際のいつもの席に座っていると楽しそうな鳥の鳴き声が聞こえて来た。

昼すぎ。

小さな鳥が私を見ている。

窓の外に目を向けると、壁際のイチジクの木に吊り下がっている餌箱にオレンジ色のお腹を持つズアオアトリがとまっていた。目が合ったのは一瞬で鳥はくるりと体をひるがえし、忙しそうに餌箱をつつきだし、パラパラと種をまき散らしたかと思うと、さっと飛び立っていった、しばらくすると今度は青と黄の鮮やかな色を持つシジュウカラがやって来て、同じ仕草を繰り返す。

1週間ほど前、裏庭の古い林檎の木の柱になる3本の太い枝のうち2本がやむを得ない事情で切り落とされたのだが、木そのものは何とか生き残った。裏庭の主のようなその木はどこか不格好な姿になったものの新しい枝が勢いよく空に伸び、そこにいつものように鳥が飛び移ってきているのが見える。丸々と太った鳥、お腹をすかせたような痩せっぽっちの鳥、体は大きいけれど不器用で餌箱には止まれない鳥。ぐんぐん伸びる春の球根の葉っぱの間をくぐり抜け地面にある何かをしきりにつついている。様々な鳥がこの木の回りを飛び交う時間。喜々とした鳥のさえずりが気持ちにすっと入り和む。

カタカタ、と音が聞こえる。窓の上方に目をやると、しなやかに伸びたバラの枝が風に吹かれガラスにあたり小気味よく音楽を奏でていた。つい最近まで緑の細い枝だけが見えていたのに、ぱっと手を広げたように緑の葉がついている。ゆらゆら揺れる葉に陽の光が透けて美しい。

春になる一歩手前、この時期の庭はいつも特別に思える。随分春っぽくなった陽に連れられて盛んにさえずるのは野鳥だけではない。冬の間ずっと共に過ごしたビオラの横には約束されたように球根ムスカリの葉が見え出し、眠っていた植物の新芽が庭のあちらこちらで萌え出す季節。次々と溢れ出た植物の声を聴くと、ほらね、もうすぐ、とただただ心が躍り嬉しくなる。

秋の落ち葉で冬の間ずっと茶色だったマロニエの木の下がとうとう緑色になったことに気が付いた。その中にちらほらと白いスミレが見え隠れしている。

可憐な小さな花からかもし出される甘い香り。

草萌ゆるこの場所がもうすぐ花々で埋め尽くされる。

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【PROFILE】
西田啓子:ファーマーズフローリストInstagram@keikonishidafleuriste
フランス・パリ近郊花農園シェライユ在住。パリの花のアトリエに勤務後、自然を身近に感じる生活を求め移住。以来、ロ-カルの季節に咲く花を使いウエデイングの装飾や、農園内で花を切る事から始める花のレッスンを開催。花・自然・人との出会いを大切にする。
https://keikonishida-fleuriste.jimdo.com/

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