【広末涼子さん連載vol.7】思春期の中学受験。 母として何ができる?

STORY[ストーリィ]

1月号からスタートした広末涼子さんの連載「毎日が3兄弟ママで、女優」。
ここで取り上げた読者ママの悩みに対して、広末さんも一緒に考え、思うことを語っていただく、Junior STORY本誌連動企画です。

前回の連載記事はこちら

子どもを全力で支え 一緒に戦っている 受験生の母を応援します!

4月号読者ママたちの声

ママの声①
子ども9歳男子 K・Iさん 42歳 主婦
中学受験をすることにしたものの、遊び盛りの時期に、土日が潰れてしまうほど勉強しなければならず、子ども自身のやりたいこともできない時期を過ごさなくてはならないことに親として葛藤もあります。子どももストレスが溜まっているのか元気がなく見えるのが少し可哀想。とは言え、やはり、中学受験をしない選択も不安。受験期はどう過ごすのが良いのでしょうか。

ママの声②
子ども10歳女子 R・Yさん 45歳 派遣会社勤務
中学受験に対して、娘は前向きに取り組んでおります。でも本人のやる気と反比例して成績が伸び悩んでいるのです。親である自分たちもモチベーションをキープできるか不安です。反抗期でもあるので、親のアドバイスを聞いてくれなくなってきていることもあり、子どもの成績が伸び悩んでいる時、親としてどのような対応をすれば良いのか悩みます。

「ママが魔法を使えたらいいのに……」
寒空の下、もうお月様も綺麗に見えている塾からの帰り道、私の母はそう言って涙を流し、私のことを抱きしめた。もう30年近く前だとは思えないくらい、あの日のことは鮮明に覚えている。

当時、小6だった私は受験勉強の追込み真っ只中で平日の放課後はもちろん、土日は昼夜のお弁当ふたつ持って塾へ行き暗くなるまで授業を受けていた。
 
田舎の夜道は真っ暗で、塾帰りはいつも母が迎えに来てくれていたのだった。いつものように母と帰るつもりで空っぽのお弁当箱をお土産に、やっと終わった〜今日も疲れた〜とニコニコで合流した私を見て、思わず泣きだした母の気持ちをまだ12歳だった私はすぐには理解できなかった。
 
どうした!? ママ、どうしたんだ? 何があった? と、頭をフル回転させながらいつもと違うところをしてみたら、母が来た方向がいつもと違ったことや、母の様子からなんとなく理由が見えてきた。「塾長と話したの? 何か怒られた? 」
 
そう聞いた私の質問に、母はこう答えた。涼子はこんなに頑張っているのに。ママだって知ってるのに。ママが魔法使いだったらよかったのにね」と。
 
泣いている母の頭をなでなでして、私は笑った。少しの間だけ、私が小さなお母さんになったみたいだった。
 
想像するに、志望校の偏差値の高さに追いついていない私の成績を塾長から指摘された母は、悔しかったり、連日勉強漬けの私のことが可哀想になったりしたのだと理解した。子どもながらにママを泣かせてしまって申し訳ないと思ったのと同時に、それにしても、だからって〝魔法使い〞って(笑)。ママの発想、おもしろっ!!と思ったことも覚えている。

STORY[ストーリィ]

中学受験は、子どもだけの戦いではない。特に最近の受験生親子の姿や講師の先生のやり方を見ていると、間違いなく私が小学生だった頃よりも、本人だけでなく、親のフォローや協力が必須になっているように感じる(ちなみに私自身も、長男の中学受験対策を経験してそれを痛感したのでした)。だからと言ってはなんなのですが、本当に〝受験生の母〞を私は尊敬します!そして、応援します!
 
普段の家事に加え、学校選びに過去問収集、お弁当作りに子どもの体調管理、それに何より受験生としてのモチベーションを上げるためのバックアップと精神的な部分での支えになってあげること。大変な毎日のみならず、受験生のいる家族には夏休みどころか正月もないですもんね。

今となっては、母のあの日の気持ちと言葉もわかる気がします。私たち母親は、頑張る子どもに代わってあげることも、魔法をかけてあげることもできません。ただただ応援し、支えてあげることくらいしかできません。でも、きっと、この経験は、この戦いは、結果にかかわらず間違いなく子どもの〝力〞になります。知識や学歴だけでなく、大切な〝財産〞になります

泣いても笑っても受験当日はやってくる。 その日までの一日一日が、子どもにとって、そしてママにとっても、悔いのない、かけがえない日々になりますように。

〈次回へつづく〉

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広末涼子

1980年高知県生まれ。14歳でデビュー後、CM、ドラマ、映画と数々のヒット作に出演。日本アカデミー賞をはじめ受賞歴も多数。プライベートでは、高校生、小学生、幼稚園児と各世代3人の子ども達のママ。土曜ドラマ「エンディングカット」(NHK総合)が3/19(土)にオンエア。

文/広末涼子 撮影/HAL KUZUYA ヘア・メーク/山下景子(KOHL) スタイリスト/竹村はま子 取材/小仲志帆
【衣装クレジット】ジャケット¥75,900(アンスクリア/アマン)ビスチェ¥14,960パンツ¥18,920(ともにアンクレイヴ ホワイト/アンクレイヴ)ピアス¥16,500(シンパシー オブ ソウル スタイル/フラッパーズ)ブレスレット¥298,000(クロクション/ロードス)

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