【LIFESTYLE】パリ近郊 花とともに暮らす (69) 青と白の肖像

イースターの朝、朝寝坊をした。

 

寝室は窓から入る朝陽ですっかり明るくなっている。今日は日曜日。昨日のウエデイングの仕事を無事終えたことをぼんやりと思い出す。森の中にある様なお城でのレセプション。階段に八重桜を沢山飾った。先週、ゆっくり時間をかけ準備を進め当日は友人のフロリストにも手伝ってもらう。大きな庭には満開の八重桜。一体何本あっただろうか。1月の寒い時期に打ち合わせた時、その庭には葉のない大きな桜の木々が堂々と立っていた。春の木の花を飾ろう。八重桜が咲いていれば最高だろうな。そこに現れる春の風景を想像し話しを進めた。眩しい太陽に照らされているその豊かな花がその日を待ってくれていた。

のろのろと寝床から起き上がり1階へ降りた。家族はもうそれぞれ勝手になにかしら行動している。コーヒーを片手に窓から裏庭を眺める。濃いピンク色のチューリップ。その横の林檎の木にはいつものように愛らしい花が咲いていた。この冬厳しく選定されたこの木。今年は花がつくのだろうかと少し心配していたが、何もなかったかのようにたわわに花をつけている。案ずるより産むが易し。植物の生命力にはいつも驚かされる。

鳥の声が遠くに聞こえる。

今日も晴天。漂う日曜の朝。自分たちも植物もみんなが思い思いに浮遊しているような感じがした。

 

陽気に誘われて犬を連れ出し散歩に出る。草の背が随分高くなってぼさぼさした感じがする。それでも黄色いタンポポの花やヒナギクがその中に気持ちよさそうに咲いている。タンポポの白い綿毛が群生している中を犬が無造作に歩き進む。ハレの日をお供する仕事を終えると、覚めない興奮と疲れで自分がどこに立っているのか分からなくなっているような感じによくなる。その特別な時間に寄り添えるような花を活けれただろうか、と頭の中にいろいろな思いが巡る。

 

そんなときは犬と当てもなく歩き回るのが一番だと思う。野草の花が人知れず庭を埋め尽くしているのを見て歩くと、自分の足がしっかり土のについて行くような気がするのだ。自分の日々の根っこを支えてくれているのはそんな何気ない野草たちなのかもしれない。

庭のはずれまで歩いて行くと八重桜が風に吹かれ花びらを散らしていた。そこから真っ青な空を見上げながら歩いて行くと白い花が咲く木々が何処までも続く。

その下に咲く青い花、シラ。きりっとした青が美しい。日陰に優しく咲く水色の勿忘草。桜色に埋もれていた昨日までの自分の気持ちに新しい風がさっと吹き抜けた。

 

 

何かを浄化するかのような2つの色。

青は白の為に、白は青の為に。

 

季節がサイコロをまたころんと振った。

 

 

 

 

 

 

 

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【PROFILE】
西田啓子:ファーマーズフローリストInstagram@keikonishidafleuriste
フランス・パリ近郊花農園シェライユ在住。パリの花のアトリエに勤務後、自然を身近に感じる生活を求め移住。以来、ロ-カルの季節に咲く花を使いウエデイングの装飾や、農園内で花を切る事から始める花のレッスンを開催。花・自然・人との出会いを大切にする。
https://keikonishida-fleuriste.jimdo.com/

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