モデル春香さん・小説家平野啓一郎さんインタビュー(後編)―― 互いをリスペクトするからこそ子育てや家事の負担は夫婦で【夫婦のカタチ】
50代も見えてきて、人生に対して不安や葛藤を抱える40代こそ、パートナーとの『夫婦としての在り方』に注目、今も未来も幸せでいるためのヒントを紐解きます。前回に引き続き、モデルの春香さん・小説家の平野啓一郎さんご夫婦にインタビュー。今回は、夫の平野啓一郎さんに「夫から見た妻」、また子育てや家庭についても伺います。
春香さん
モデル。1975年愛知県生まれ。大学在学中よりモデル活動を始め、雑誌『CLASSY.』(光文社)、『Domani』(小学館)、『GRACE 』(世界文化社)などで長年表紙を飾るほか、料理研究家としてお菓子のレシピ考案や、シューフィッターの資格を生かしアンバサダーとして美と健康を発信、モデルの枠を超えて活躍。
Instagram: 春香(@haruka__official)
平野啓一郎さん
小説家。1975年愛知県生まれ。京都大学在学中に『日蝕』により芥川賞受賞。ベストセラー『マチネの終わりに』は2019年に映画化。2022年6月より『空白を満たしなさい』を原作とするドラマ(NHK)放映、今秋には『ある男』を原作とする映画が公開予定のほか、幅広いジャンルでの批評を執筆。近著は『本心』。
Instagram: KEIICHIRO HIRANO(@hiranok)
互いにリスペクトし合い、妻の得意分野に入り込まない。その分、子育てや家事の負担が半々になるように動きます
恋愛や人間関係の機微について迫る作品や、現代社会における様々なテーマの批評を執筆し、精力的に活動する平野啓一郎さん。著作の中で、人間は相手や場所に応じて変化する多様な自分「分人(ぶんじん)」の集合体、という考え方を唱えています。妻・春香さんといる時の自分をどう生きているのでしょう。
「いろいろやってくれているので、感謝しています」。そんな平野さんから妻へのホンネに、春香さんも「ありがとうございます」と自然な雰囲気で応対する様子に、夫婦がこの十数年で紡いできた心地よい関係性がまさに現れていました。
「子どもが生まれてからは、それまで夜型だったのをいわゆる普通の生活、朝起きて夜寝る、という生活に合わせたら、やはり健康的にもなりました。妻は料理が上手なので、食事面でも健康に気づかってもらっていると思います。お菓子作りやレシピ考案などは、彼女の仕事にもなっていますし、子供たちと一緒によく台所に立ってますね。僕は朝食や昼食は作りますが、夕食は彼女が作ることがほとんどなので、夫婦の負担が半々になるように、掃除やゴミの整理だとか、洗い物とか、子どもの送り迎えなどをしてます。厳密に役割分担しているわけではないですが。妻は『夫が家事に協力的』という、家事は飽くまで妻が主で夫はサポートというワードを好みません。まあ、当然ですが、男女の性差なく、どちらがやってもいいことですからね。ただ、得意不得意はありますが。普段は夫婦それぞれの仕事や自分の時間を持っていますが、こと子どもと家庭に関する事柄には、協力が不可欠。お互いをリスペクトし合うことで、それを間近で見ている子どもたちにも伝わればいいなとは思います」(平野さん)。
夫婦間・家族間の空気が澱んできたら個の時間を工夫して風通しよく円滑に
そんな平野さん、コロナ禍のステイホームの時期に、家庭がうまくいくためには何が大切か向き合った結果、分かったことがある。家族間のいざこざや、よくないところを直すという強制が生じる前に、自分ひとりの時間、個の時間を持つことが重要だという結論にたどりついたそう。
「我が家は物理的に仕事部屋や子ども部屋など個になるスペースがありますが、物理的に無理ならば、例えば近所の図書館に行くとか、ベランダにチェアを置くとか、工夫できると思います。コロナ禍以降、ベランダで植物を育てたり、デッキチェアで食事をとったり、我が家も活用するようになりました。リビングなどに家族が集中すると人口密度が高くてストレスになることもありますが、一人になると気分も落ち着き、解決してしまうことも多い。夫婦円満、家族円満、のためには、人格的に矯正し合うというより、部屋の間取りを考えたりと、物理的に工夫して、風通しをよくすることが大事だと思います。僕自身、毎日、8000歩くらいは散歩するようにしていて、運動不足の解消だけでなく、気晴らしにも、創作のインスピレーションにもなっています、一人の時間は大事です」(平野さん)。
「僕の最もクリエイティブな時間は、仕事部屋のソファでぼんやりしている時なのですが、次の小説の構想を考えていると、子どもたちが楽しそうに一緒になってソファに乗ってくる(笑)。でも日々仕事をする自分は、家庭とは違う自分を生きるから、あんまり煮詰まったりしないですね。僕の感情の表し方がテンション低めなので、そのままだと子どもたちには物足りないらしく、褒めたり、喜んだりする時は、多少大げさに表現するようにしています。基本的に、我が家はそれぞれみんな違うという前提なので、社会を生きていく上でどうかというようなことは子どもにも注意しますが、それ以外は、穏やかで平和にこれからも過ごしていきたいですね。コロナ疲れも経験しました。子育てやコロナが落ち着いた頃には、また海外にも行きたいです」(平野さん)。
(春香さん)ニット¥14,300 パンツ¥18,700(ともにアルページュストーリー/アルページュストーリー プレスルーム)フラットシューズ¥28,600(ツル バイ マリコ オイカワ)ピアス¥34,650<ジョアンナ ローラ コンスタンティン> パール付きネックレス¥28,600<インツーデザイン> チェーンネックレス¥31,900<エムシースタジオ> ブレスレット¥26,290<ベンアムン> 人差し指リング¥4,620薬指リング¥4,510<ともにフルオブグレイス>(すべてZUTTOHOLIC)
撮影/吉澤健太 ヘア・メーク/後藤若菜(ROI) スタイリスト/MaiKo yoshida 取材/羽生田由香
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