親子で起業も!夏休みに子どもと始めたい『NFTアート』って?【基礎知識&体験談】
昨年、小学生の描いたNFTアートが240万円もの高値で売買されたというニュースを見た人もいるのではないでしょうか。アーティストの名前は〝Zombie Zoo Keeper〟、日本に住む9歳の男の子です。そんな話題のワードNFTですが、「そもそもNFTって何?」という方が大半のはず。そこで、〝Zombie Zoo Keeper〟のママである草野絵美さんと、専門家の先生にお話を聞きました。
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岡嶋裕史さん
1972年生まれ。中央大学国際情報学部教授。専門は情報セキュリティ、ネットワーク。『メタバースとは何か』(光文社新書)など著書多数。ブロックチェーン関連のメディア出演も多い。
Q. NFTをわかりやすく教えてください!
A. NFTはNon-Fungible Token(非代替性トークン)の略ですが、NFTを知るためにはまずブロックチェーンを理解する必要があります。ルパン三世で例えると、いくらお宝を隠してもルパンに盗まれてしまうので、銭形警部がお宝を金庫に隠すのではなく風船に入れて空に浮かべるんです。すると、みんなが見ているからルパンが手を出しにくいというエピソードがあって、ブロックチェーンはそれに近いもの。仮想通貨で言えばお金の取引を銀行という中央集権組織が握るのではなく、関係者全員が相互監視し、取引内容を検証、改ざん不能な形で保存する仕組み。NFTではお金の取引ではなくデータの権利関係を記録します。
Q. NFTアートってどういうもの?
A. デジタルの絵や音源や映像などはもちろん、リアルの美術品の権利関係をNFT化している人もいます。絵などはデータが大きいため直接ブロックチェーンに書き込むのではなく、絵へのリンク(URL)をNFTに埋め込んで記録します。絵の実体はURLをクリックした先にあるという仕組みです。
Q. NFTアートは何が画期的なの?
A. デジタルデータはコピーし放題なので、オリジナルの価値が希薄になります。その点、NFTを使うと特定の条件下で唯一性を主張できるので、デジタルアートに希少性が生まれ、値段がつくことがあります。また、通常の美術品の売買は画廊を通すなどハードルが高いですが、NFTアートなら理念の上では誰でも取引できるのも魅力です。ただし、実際の取引は難しく取引所に依存しています。
Q. 詐欺に遭う可能性もあるってほんと?
A. NFTアートは唯一無二と言われますが、特定の条件下での話です。アート自体はブロックチェーン外にあるので悪意ある第三者や時には出品者が改ざんする可能性もありますし、複数のブロックチェーンで同じアートをNFT化する人もいるかもしれません。ブロックチェーンではすべてが自己責任なので売買は覚悟を持って慎重に行ってください。
Q. マーケットの規模はどのくらい?
A. NFTマーケットには世界中あらゆる場所から参加できますが、今は欧米が中心。取引額は一月あたり数十億ドル、世界最大の取引所であるOpenSeaのアクティブユーザーは数十万人規模。更なる市場の拡大も予測されています。
Q. 初心者におすすめのプラットフォームは?
A. 世界最大の取引所であるOpenSeaが比較的使いやすいでしょう。NFTの売買は仮想通貨のイーサリアムが主流で手数料(ガス代)が高いのがネックですが、ポリゴンという仮想通貨を使用すればこれをゼロに近くできます。
Q. アートの売買には何が必要?
A. 販売するアートとメールアドレスが必要で、パスワードも考えます。ポリゴンなら出品にお金はかかりませんが、買う場合は仮想通貨を持つ必要があるので、取引所に口座を開設、仮想通貨を購入するためにクレジットカードが必要です。
Q. 転売されると制作者にもお金が入る?
A. 通常のアート作品は転売されても制作者にお金は入りませんが、NFTアートは二次流通された際のロイヤリティを制作者が自由に決められることがあります。取引所によっては上限を設けている場合もありますが、だいたい10%が相場です。
Q. 売買する上で気をつけることは?
A. 失ってもいい金額で始める、これに尽きます。売るだけならリスクは比較的小さいですが、購入する場合は今の市場で真贋を判定することは困難です。たとえば、Aさんの作品だと思ったらBさんの作品だった、1つしかないと思っていたのに実は別の場所でも売っていたということはありえます。投機や投資ではなく、作家を知っていて応援するために買うなど、小額で始めるといいと思います。
Q. NFTの今後の可能性は?
A. 可能性があるのは事実です。画廊での売買はハードルが高かったり、自分の好きな作家の作品を気軽に買うことができなかったのが、NFTを介することで道がついてきたのは素晴らしいこと。知識があればアーティストも気軽に出品できるし、それこそお子さんが自分の作品に値がついて売れればモチベーションになると思います。法整備を含めて、今後どう運営していくかが鍵だと思います。
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世界的企業のFacebookが社名を「メタ(Meta)」に変更したことで一般的に知られるようになったメタバース。メタバースは私たちの生活をどう変える? ビジネスチャンスとは? GAFAM各社の動向や日本企業の取り組みを紹介しながらその可能性を探る一冊。
NFTアート親子体験談〜草野絵美さん
【NFTの可能性】
Zombie Zoo Keeperのママ・草野絵美さんに聞く
NFTアート親子体験談
草野絵美さん
1990年東京生まれ。Fictionera代表取締役。慶應義塾大学環境情報学部卒業。アーティスト、Satellite Youngボーカル、東京藝術大学非常勤講師など多彩に活動する。9歳と1歳の兄弟ママで、長男はZombie Zoo Keeperの名前でNFTアーティストとして有名に。自身がディレクションを手がけるプロジェクト『新星ギャルバース』を立ち上げ、OpenSeaの取引量世界一を記録。Twitter:@neokosodate
──はじめは夏休みの自由研究がきっかけだったそうですね。
息子は何かを作って売ることにずっと興味を持っていて、それまでも自分で作ったアイロンビーズをメルカリで出品したりしていましたが全然売れなくて。ちょうど海外のニュースで12歳の男の子がNFTで数千万円の利益を出したのを見て、僕もやってみたいと。NFTなら在庫を持たなくていいし、売れなくてもいいからやってみようかって。テーマは、ずっとマインクラフトをやっていたのでゾンビが好きで、あらゆるものをゾンビ化すればネタが尽きないし息子も飽きないかなと。あと、NFTアートの購入者の大半は欧米人なのでゾンビならわかるかなって。そういうマーケティングのプロセスから一緒にやるのが楽しかったですね。
──作品はすぐに売れましたか?
1週間ほどアクションがなかったのですが、日本人のアーティストが買ってくれたことで、外国人数名が一気に買って完売して。後から聞いたら、NFTのコミュニティの中で「すごくいいアートがあるけど、本当に日本の小学生が作ったのかな?」と話題になってたみたいで。その後にDJのスティーヴ・アオキさんに見つけていただいて。1,000円で売り出した作品が二次流通で一点40~80万になって、最終的には180万の値がつきました。ただ、息子にあれだけ注目が集まったのは、まだ小学生のNFTアーティストが世界にほとんど存在しなかったのが大きくて、先行者利益があるのかなと。
NFTアートを通して
家庭内の金融教育が進んだ
──自分のアートが世界中に広まって、息子さんの反応はどうですか?
一番最初に売れた時は「1,000円になった!」ってすごく喜んで、すぐに現金に替えてあげてポケモンカードを買いに行ったんです。でも、高額になってくるとそんなにカード要らないしとなって、今は学費を貯めています。息子の中でもお金に対しての考え方が変わって、前は100万円なんて人生が変わっちゃうと思ってたらしくて、お金がありすぎてパパとママが不幸になったらどうしようって。いや、人生が変わるほど貯まってないよと話したら、「じゃあ、パパとママはどのくらいお金持ってるの?」って。それまで親の収入や生活費の話をしてこなかったのですが、全部話すことにして。日本の平均給与や光熱費はこのくらいで、学費はこれくらいだよって。税金の話もしたらすごく興味を持って、最近は何を経費で落とせるか気にしています。金融教育が進んだのも良い経験だったなって。
──これだけ有名になって息子さんのモチベーションは?
本人がブレない性格なので自分が描きたいものに集中しています。ただ、子どもなので、褒めたことや親からのフィードバックが反映される恐れもあるので、その辺りはかなり注意しています。前に一度、「これ、売れそうだね」と言ってしまって夫に叱られたりして。息子の創作意欲を削がないことに気をつけながら、気が乗ったら描くし乗らない日は描かない感じで、生活は何も変わりません。遊びの中に作品づくりがある感じです。
親子の共同プロジェクトで
子どもと対等な関係に
──ママはマーケティングやPRに徹している形ですね。
リサーチしてわかったのが、アートを売買するOpenSeaというプラットフォームはかなり回遊性が低くて、買いたい人はTwitterのハッシュタグで作品を探していて。だからTwitterはマストなのと、購入者の多くは外国人なので海外向けの宣伝をするべきだと思って英語アカウントを作りました。息子が伝えたいことやPRを私が英語で投稿しています。SNSにこういうことを書いたら危ないとか顔出しはしたくないとか、本人なりに考えていますね。ポジティブなコメントがあったら教えてねって。一緒にZZKというブランドを運営する形ですね。
──親子で起業みたいな感じですね。
そうですね。我が家のケースは本当にいろんな奇跡があったので再現性があるかというと自信がないですが、NFTにかかわらず、親子で楽しめるプロジェクトは各家庭に眠っていると思います。別のことで専門性のある親が子どもを巻き込んでその様子をブログで発信したり、何か作ってアプリで売ったり、そういうことでいいのかなって。SNSとのつきあい方やお金のこと、アーティストのキャリアなど色々話せたし、息子との衝突も減って対等な関係になれたかなと。親子の共同プロジェクト、おすすめです。
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撮影/杉本大希(草野さん) 取材・文/宇野安紀子 編集/フォレスト・ガンプJr.
*VERY2022年6月号「最近よく聞くNFTって何ですか?」より。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。商品は販売終了している場合があります。